半導体IPコアの大手Armが、長年のパートナーであるQualcommとの提携関係を解消する可能性が浮上しました。9to5Googleが伝えています。
Bloombergの報道によると、ArmはQualcommに対してチップ設計に必要な知的財産と命令セットのライセンスを取り消すと通告したとのことです。
この通告には60日間の猶予期間が設けられており、この期間内に両社が合意に至らない場合、Qualcommは製品の販売停止を迫られるか、多額の損害賠償請求に直面する可能性があるとされています。
ライセンス取り消しが実行された場合、Qualcommは独自のチップ設計にArmの命令セットを使用できなくなります。別途製品契約でArmの設計図を利用することは可能ですが、これまでの開発作業が無駄になり、大幅な遅延が発生する可能性も出てきます。
両社の対立は2022年から続いており、その発端はQualcommによるNuvia社の買収でした。Qualcommは買収したNuvia社の技術を基に独自CPUコア「Oryon」を開発し、Windows搭載ノートPCに続いてモバイルSoCや自動車向け製品への展開を予定しています。
ArmはNuvia社がArmライセンシーとして開発した技術について、Qualcommへの譲渡には許可や契約の再交渉が必要だと主張。
一方、Qualcommは既存の契約で買収した企業の活動もカバーされていると反論しています。
Armはソフトバンクが株主となっている英国の半導体設計企業。様々な機器の中核部品として知られているQualcommのSnapdragonは、Armの設計したチップを用いています。
Snapdragon X EliteやSnapdragon 8 Eliteなど、Oryon CPUを搭載したSoCが影響を受ける可能性があります。
なお2023年10月には、QualcommとGoogleがRISC-V搭載のWear OS向けチップの開発を発表、AndroidチームもRISC-Vのサポートに向けた準備を進めるなどの動きも。
60日以内に和解するのか、オープンソースのRISC-Vへの移行が急速に進むのか、今後の展開から目が離せません。