国会提出に向けて進んでいる文化庁の著作権法改正案。中身は違法ダウンロード拡大とリーチサイト規制です。
現在、世間で注目されているのが違法ダウンロード拡大についての部分です。現行法では音楽と動画に限られていたものを、静止画含むあらゆるものに拡大するという内容です。親告罪ではあるものの、本来あるべき「利益目的」「有償著作物」「原作のまま」「損害発生」といった要件の絞り込みが足りず、創作研究の萎縮や国民生活への悪影響が懸念されています。
違法DLについては、弁護士や研究者からなる共同声明のほか、日本漫画家協会、日本マンガ学会、全国同人誌即売会連絡会、日本建築学会からも懸念表明が出されるなど、強い反対にあっています。その一方で、一部には海賊版サイトにリンクを貼る「リーチサイト」についての規制は、評価するとの声もありました。
ところが、セキュリティ研究家の高木浩光氏は、リーチサイト規制についても欠陥があると指摘。「著作権侵害コンテンツ」の対象になり得るものとして、海賊版だけでなく、無断転載やライセンス違反での配信も対象に。この広い定義により以下のようなサイトも違法になってしまうといいます。
- アニメアイコンのTwitterアカウントの一覧リンク集
- いらすとやのイラストを20点を超えて使用している商用利用のスライド一覧のリンク集
- 剽窃論文の一覧リンク集
- GPL違反ソフトウェアの一覧リンク集
さらに社会的法益の非親告罪となっているため、警察がノルマ目当てで容易に濫用する可能性も否定できません。
海賊版対策の主旨を考えれば、そんな変な運用はまさか無いだろうと考えるのが普通ですが、しかしWebの新しい在り方を模索しようとCPU使用率も最小限に抑制した上でCoinhiveを設置したWebデザイナーや、昔流行ったイタズラの(しかも現在のブラウザで無害の)ジョークスクリプトへのリンクを貼った女子中学生を、附帯決議も考慮せず不当に摘発する地方サイバー警察が現実に存在する以上、やはり法の条文から厳格に制限することが妥当と考えられます。
高木浩光氏は対象を「原作のまま」且つ「著作権者の利益が不当に害される」場合に限定することが必須と提言しています。