「高性能なラップトップやeGPUの処理支援によって、事務所と外出先での作業環境を1つの環境に集約する」という発想。人類の夢ですよね。
MacBook Proシリーズを10年ほど使ってきましたが、度重なるハードウェアトラブルでApple製品とMacBookシリーズが信頼できなくなり、環境を見直して夢を諦めることになってしまった顛末です。
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MacBook Proシリーズを選んでいた理由
MacBook Proシリーズを選んでいた理由として、以下の点が強みであると感じていたからです。
- 高い処理性能(15/16インチモデルはdGPU標準搭載)
- DCI-P3をほぼ100%描画するディスプレイ品質
- TimeMachineで気軽にバックアップが取れる・有事に環境復元できる
- リセールバリューが高く新製品への乗り換えが容易
職業/趣味でデザインワークや写真/映像制作をこなす筆者のニーズに、こういったMacBook Proシリーズの強みが綺麗に一致していました。客先へ制作物を持ち込んで仕事したり、しばしば長期間外出して仕事する筆者にとって、ある程度パワフルな環境をひとまとめにして持ち運べる魅力に勝るものはありませんでした。
遭遇したトラブル
夏になるとスペックが低下する
Macbook Proを4Kディスプレイに接続し、デュアルディスプレイ化してIllustratorやLightoomを使った制作作業しながら作業用BGMやYoutubeやNetflixを再生したり、Twitterを表示するような使い方をしていました。
ところが今年の夏にいつものようにディスプレイに繋ぐと、途端に処理落ちし画面がカクカクになり、操作をほぼ受け付けなくなるような状態になりました。ブラウザとLightroomを操作するくらいでも画面がカクつく程に悪化。ディスプレイを外せばやや改善するといった具合です。
Activity Monitor(Windowsでいうタスクマネージャー)を確認すると、kernel_taskというプロセスが処理能力を占有している。「kernel」という名称から、はじめはディスプレイとの相性やソフトウェアの不具合を疑いましたが、よく調べると「kernel_taskはCPUの温度が上がったときに、プロセス使用率を専有してCPU負荷を下げる動きをする」ようです。(kernel_taskには様々な役割がありこれはその一つだそうです)
原因はおそらく、Intelの第10世代coreプロセッサーが爆熱すぎて、MacBook Proのファンとユニボディー筐体による冷却処理が全く間に合っていないことです。でも、自分はMacBookのファンが最大稼働して絶えず温風を排出しても、ある程度涼しくなるように、室温管理していたので、納得いきません。実際、氷や硬貨を使って冷却することで緩和するようですね。
ビデオ会議でMacBookが熱くなったら、こうして10円を置いて冷却しています。
数分置くだけで熱がとれます。銅の冷却効果すごい✨ pic.twitter.com/NpJ7011h8x— 東洋経済ブランドスタジオ (@toyokeizai_bs) October 27, 2020
持ち運ぶとディスプレイが黄色に変色する
2018年8月に買い換えたばかりのMacbook Pro 15インチモデルの画面の変色を、翌月の9月に見つけました。
こんな状態ではデザイン作業はできない、ということで即修理。オンラインによるサポートで10月に無償修理を終えるのですが、同年12月にもこの症状が再発。修理するも翌2019年2月にまた再発。その後も修理を繰り返しますが、1〜3ヶ月使うと画面が写真のような状態に。
「Genius Bar(Appleリテールストアの修理窓口)」スタッフに原因を確認したところ「熱あるいは加圧が原因なのではないか」という曖昧な説明を受けました。ネットを調べると同様の症例が多数あり、「ボディとディスプレイ間の接着材が溶け出す」というような説明を受けた方も居られるよう。
しかし、Macbook Proの上に重いものを置いたことはなく、炎天下に放置したこともありません。心当たりがあるとすれば、せいぜいカメラバック(リュックサックで積載量は凡そ〜7kgまで)に入れて持ち運ぶことが多いというくらい。AppleのMacbook Proのキャッチコピー「スタジオをまるごと持ち歩こう」「あらゆることを、あらゆる場所で」の通りに利用しているつもりですし、使っているカバンもAppleストアで販売されているTHULEのカメラ向けバックパックです。ライトユーザーに比べればヘビーな使い方かもしれませんが、製品特性の範囲内で普通に使っているだけなので、不思議に思います。
カスタムして40万円ほどのものを買っているので、すぐ買い換えるのは難しく、修理の間は仕事になりません。また、スタッフ曰く「修理サービスプログラム(所謂リコール)が出ていないので返品・交換も難しい」とのこと。
そういって我慢して使っていた2019年末に、新型16インチモデルが登場。「フルモデルチェンジなので、もしかしたら症状も対策されているかもしれません」という案内もあり、すぐ買い換えて使ってみました。ところが、結局半年ほど使った今年6月にも現象が再現してしまいました。
eGPUを利用するとトラブルが頻発する
また、自宅ではモニターと接続してデスクトップ的に使う上で、eGPUはさらにグラフィック性能を強化できます。可能性を感じ導入してみましたが、以下のような症状が出るため使い物になりませんでした。
- とにかくフリーズ・カーネルパニックしまくる
- スリープからの復帰に失敗する
- “〇〇が予期しない理由で終了しました”ダイアログが頻発する
- eGPUを左側のUSB-C/Thunderboltポートに接続すると爆熱になりフリーズする
- FileVaultというデータ保護機能が使えなくなる
eGPUについては別のライターがまとめたこちらの記事をご覧下さい。他にも細々とあるのですが、主だったものはこのあたり。恐らくThunderboltの帯域不足に起因する不具合だと思います。新しい技術なので安定感を求めるのは酷ですが、eGPUを実現するThunderboltって、そもそもIntelとAppleの共同開発だったよな……と残念に感じてしまうところ。
もう少し品質を上げて欲しい
以上のトラブルは原因が明確ですから、トラブルシューティングさえできれば、これを避けて使うこともできます。年中涼しい部屋で、持ち運ばず使えばイケてるラップトップかもしれません。
画面の黄変など度重なるトラブルに嫌気がしつつ、Mac OSの使い心地や冒頭の強みにまだ惹かれて使い続けたのも事実ですが、さすがに心が疲弊してきました。特にディスプレイに関しては、修理保証は通常1年しかなく、切れたタイミングで変色することも考えられ、心情としてはリコールを出してもいいのではと思ってしまうぐらい。
仕方がないので、「外も家も高性能ラップトップで完結」という基本コンセプトを諦めました。家用にiMacを購入した上で、MacBook Proを売却して外用のMacBook Airを購入。
夢なんて見るもんじゃないよ、お外はノートPC、お家はデスクトップ、餅は餅屋だね。現実に帰ろう。そう思っていたところ、購入1ヶ月後にMacbook Airも原因不明の文鎮化。10年使ってきたMacBookですが、悲しいことにしばらく離れることになるかもしれません……。