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「サラ金」と組んで大儲けの中国ネット業界、「返済地獄」を政府も問題視

 決済アプリ、SNS、コンテンツ配信、ECと、中国には山のようにインターネットプラットフォーム事業者がありますが、「どうやって儲けているんだろう」「中国の若者の購買意欲は日本より高いのでは?」と、いろいろ不思議に感じるところ。

 そんな中、プラットフォーマーの後押しもあり、急速に広がっているのが「インターネットローン」。

 「ネットで借金してネットで消費」する若者が急増し、結果多額の負債を抱えた人たちを「負債者連盟」と呼ぶ隠語も登場しているそうです。「中国証券報」が詳しく伝えました。

中国インターネットに溢れる「サラ金」広告

 中国証券報の記者が調査したところ、金融商品の過度な広告を禁止する監督部門による規定にもかかわらず、ネットローンの拠点は各種のプラットフォームによる協力の下、インターネット上に広がっており、「誘惑」のないところはないと言います。

 インターネットプラットフォームが商業銀行、消費者金融、少額融資への導線になっている現象は既に新鮮なことではなく、中国証券報記者の調査によると、ウェブショップ、出前、配車、ホテルや航空券の予約、Weibo、動画配信、音楽配信、ニュースアプリ、さらには仕事に使うアプリ、運動まで、ダウンロード数の比較的多いアプリは、基本的にいずれもネットローンの入り口になっているとか。

 宣伝の文案も各社心を砕いており、「身分認証だけ、審査迅速」「低いハードル、22歳でも申請可」「3分で着金」「最高20万元まで可」「1千元借りても1日の費用は0.2元以下」などなど、借りるの簡単、返すの簡単、みんな簡単!と推しまくっているそうです。

「ネットで借りては返す」で泥沼にハマる人

 さて、ここで皆さんもお気づきかと思いますが、ここで記者が気になったのは、こういったローン広告で表示される情報は日歩であり、年率ではありません。

 かつて「負債者連盟」の一人だったという、社会人歴数年の湖南省の女性、周遊氏は、「インターネットローンには日歩を宣伝するという不文律があり、年率はもし出てくるとしても、往々にしてとても小さな字でしか表示されない。自分も当時、日歩に目をくらまされ、数万元と比べると数元の利息はなんでもないと思っていた」と話しています。

 周遊氏はネットローンについて、「初めはクレジットカードからで、それを使って半年の家賃、約1万5000元を払った。そのあとクレジットカードが返せなくなり、今度はAlipayの『借呗』で借りた。日常の出費は全部Alipayとクレジットから支払い、返せなくなると借呗から借りて返した」「最初の方は仮多額が多くもなく、返せるとまた借りた。そのうち限度額が足りなくなり、別のプラットフォームから借りて、借金して返すのを繰り返し、一番多いときは元金が11万元になった」と、深みにハマっていった過程について語っています。

「濡れ手に粟」のプラットフォーマーたち

 インターネット上には大小無数の銀行、消費者金融などが様々なプラットフォームで客を引いていますが、消費者金融会社に勤務していたという人が言うに、「インターネットプラットフォームは、誘導の過程(つまり広告費か)で実際に入ってくる利息の20~30%を受け取っている」とか。実際にリスクをとってお金を貸すよりもお得であり、これこそがプラットフォームがローン会社のため必死に営業をかけているキーポイントなのだとか。

 厦門国際銀行投資分析員任涛によると、インターネットプラットフォームにとって、スポンサーのためにユーザーを流し利用シーンを提供することは、アクセス数を現金化する重要な方式の1つであり、インターネットプラットフォーム事業者と金融機関を結びつけるポイントだと指摘します。また、一部のプラットフォーマーは少額ローン会社も運営しており、これも大きな経営の柱になるのだと言います。

ネットローン事業に群がる中小銀行

 また、中小銀行は地域、規模、ブランド力などの面で劣勢なことから、インターネットからの顧客誘導によって業務を拡大し、「ショートカット」でライバルを出し抜きたいとの意欲が強く、ある匿名を条件として取材に応じたIT企業経営者によると、「何も考えず個人消費金融ローンに飛びついている、目先のカネを稼ぐことに必死で、潜在的リスクを無視している」そうです。

 ここで注目に値するのは最近、銀行保険監督委員会弁公庁は、地方銀行による管轄地域外でのインターネットローン業務を禁じる通達を出しているとのこと。

「低年齢、低収入、低線都市」多重債務者激増を中央も問題視

 マクロ的な観点でも、2020年第4四半期中国貨幣政策執行報告によると、「中国の消費貸借が急速に拡大する中で、一部金融機関は消費金融の背後に潜むリスクを無視しており、利用者の質の低下は明らかであり、多重債務者への過度な与信付与問題が突出しつつあり、2020年以降、一部銀行のクレジットカードは、不良債権率が明らかに上昇している」としているそうです。

 中国銀聯が発表したレポートによると、モバイル決済ユーザーの中でインターネットローンで初めて借り入れをするユーザー群は注目に値し、人数比は明らかに上昇しており、主に「低年齢、低収入、低線(地方)都市」が占めているといいます。

 ちなみに「低線」という言い方は、中国では国際的大都市の北京上海広州深圳を「一線都市」、地方経済中心都市を「二線都市」……と呼び、五線都市まであることからきており、「低線」とは要は「田舎の都市」という意味です。

 中国郵政貯蓄銀行研究員娄飞鹏は、プラットフォームを通して流れてくるユーザーは、本来の基準に合致していない可能性があり、金融機関は資産損失のリスクを負わなければならない上に、金融商品販売規制にひっかかるリスクにも直面する可能性があると言い、最近開催された中央財経委員会の会議でも、「今のところ金融機関による金融商品販売活動は厳格に規制されているが、今後はこういった『貸すのを助ける』行為も監督し、とくにああいった条件にあわないプラットフォーム、規定に合わないやり方は、法規によって取締り、制止しなければならない」と指摘。

 ただ実際のところ、インターネットプラットフォームからの誘導を管理するとなれば、金融監督部門にとって少なからず「挑戦」になるようです。

 任涛が指摘するに、「まず、誘導プラットフォーマーの多くは金融機関ではなく、業界から言って、金融監督機関の監督範囲外であるし、プラットフォーマーと提携している金融機関の種類も多く、統一した監督規範文書を出す必要があり、必要な仕事が多い。次に、この行為は多くの管理部門に及び、その『貸すのを助ける』行為への見方も一致しているわけでなく、足並みをそろえるのには一定の難度がある。さらに、監督権限範囲が曖昧で概念の定義も明らかでなく、統一された基準がないため、投資家の権利利益を保護するのも難しい」と、課題は山積していると言います。

 前出匿名IT企業経営者によると、「今のところ金融監督部門は誘導プラットフォームへの監督権限がないかもしれないが、貸金業者は監督できる。たとえば、消費者ローンに総量、或いは結合的な制限をかけるであるとか。これがローン仲介への管理として機能するだろう。今年、金融監督部門は関連規定を出すかもしれない」とのこと。

 「金融市場の違反摘発は『飲酒運転取締り』のようなもので、違反はなくならない。気長に取締りを続けるしかない」というアナリストも。

総評

 インターネットビジネスは、広告を出しているところからおカネをとらないとならない、とは当たり前の話ですが、広告主の貸金事業者がプラットフォーマーに得た利息をキックバックしているというビジネスモデルは、プラットフォーマーからすれば「ユーザーに使ってもらうおカネを、ユーザーが借りやすくすればもっと儲かる」、貸し倒れリスクも金融機関が負うわけですから、濡れ手に粟の凄いビジネスモデルですね。「そりゃ中国のプラットフォーマーはカネがあるわ……」と感心しました。

 日本の法的に可能かは知りませんが、できるのであれば「是非やりたい」という金融機関はいくらでもあるのでは。

 ただ、「サブプライム」どころか「低年齢定収入」と返済能力の低い利用者に「ここがブルーオーシャンだ」とばかりにドンドンおカネを貸し付けている地方銀行という構図、なんだか東海地方の某銀行に近いものを感じます。

 中国の金融監督機関も問題視しており、どうやら今年中にも規制に乗り出しそうな雰囲気なようですが、「金融市場の違反摘発は飲酒運転取締りに似たり」とは箴言ですね。

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