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米36州がGoogle相手に集団訴訟。Google Playの決済システム巡って

 アメリカの36州が、Googleに対して独占禁止法に関する訴訟を起こしたことがわかりました。

訴訟の概要

 この訴訟は、GoogleがAndroid搭載端末向けに提供している、Google Playストアの決済システム「Google Play Billing」をめぐる独占禁止法訴訟で、アメリカのカリフォルニア州連邦裁判所に、ワシントン州・ニューヨーク州などアメリカの主要州を含む36州によって、現地時間7月7日付けで提起されました。

 この訴訟の要点は、Googleが、Google Playストアを通じてアプリを配信し、アプリ内課金にGoogleの支払いサービス「Google Play Billing」を利用する開発者に課していた30%の手数料にあります。米36州は、この手数料によって「開発者に対する権力を乱用した」として、今回の訴訟を起こしています。

「Play Billing」の問題点

 この訴訟では、先述のGoogleの決済サービス「Google Play Billing」を使用している開発者に、決済サービスを利用して得た利益のうち30%を徴収していたことが問題視されています。

 「じゃあ、Googleの決済サービスを使わなければいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、Googleは「Google Play Billing」の使用をほぼ強制しているため、できないのが現状です。

 Google Playストアを利用してアプリの配布を行う開発者は、有料アプリを配信したり、アプリに課金などの要素を追加する場合、Google Playの規約上「Google Play Billing」を使用しなければなりません。そのため、独自の決済サービスを利用することはできません。(物の購入や配達などの物理的なサービスに対する課金や、公共料金の支払い等一部のサービスは除く)

Google Play Console デベロッパーヘルプ内の文章

 しかし、この「Google Play Billing」を使用すると、売り上げから30%が手数料として中抜きされます。例えば、アプリ内課金によって1000円の収益を上げたとしても、開発者の手元に入るのは700円、残りの300円はGoogleに持ってかれてしまうということです。

「中抜き」の現状

 こういった販売プラットフォームによる手数料中抜きは、近年非常に問題となっており、昨年には、ゲーム大手のEpic Gamesが、同社の提供するゲーム「Fortnite」アプリ内に独自の決済システムを追加したところ、AppleのiOS向けアプリストアのAppStoreとGoogle Playストア両方から削除され、Epic GamesがAppleとGoogleを独占禁止法違反の疑いで提訴し、現在も裁判は続いています。

 現在は、売り上げが一定の額を超えていない開発者には販売手数料を15%に引き下げていますが、AppleもAppStoreでの売り上げから30%を手数料として徴収していました。

 Android端末では、Google Playを使用せずにアプリを配布することが可能で、Google Playを経由しなければ独自の決済方法を導入することも許可されているため、開発者には「Google Playを使わない」という選択肢が与えられています。しかし、iOS端末では、アプリを一般向けに配布するには、基本AppStore以外の選択肢が与えられていません。そのため、iOSアプリの開発者には逃げ道がほぼない状態となっており、これが更なる反感を買っています。

Androidには、サードパーティー製アプリストアやAPKもあるが、iPhoneにはない。

 身近な販売手数料、というと、メルカリやラクマなどフリマアプリの販売手数料が思い浮かびます。メルカリやラクマの手数料はそれぞれ10%・6%となっており、比較対象としてはあまり良くないかもしれませんが、それでも「30%」は手数料にしては多すぎることがよくわかります。

新法案「プラットフォーム独占終了法」

 Googleは、すでに多数の訴訟に直面しており、昨年10月には米司法省と14の州が検索システムに対して、12月には38の州による検索システムを巡る訴訟と、15の州による広告システムに関する訴訟を抱えています。

 そんな中で、さらに追い討ちをかけるように、独占禁止法に関する新たな法案も提出されています。米国議会に新たに提出された「プラットフォーム独占終了法」は、その名の通り、企業によるプラットフォームの独占を禁止する法案です。この法案が可決すると、プラットフォームを提供する企業は、自社ブランドの商品を自社サービスで販売できなくなったり、アプリのプリインストールが禁止される可能性があります。

 アメリカは、こういった米国内での大企業の活動制限には前向きな一方で、他国による米企業を矛先にした法案には、やや消極的な考えを持っています。

 英国などが制定した、IT企業の提供するサービスに対する税金「デジタル税」に関して、前大統領のドナルド・トランプ氏はTwitter上で、「米国のIT企業に課税できるのは会社の所在地である米国であるべき」、と発言しており、デジタル税を導入したイギリスなどの国に制裁関税をかけるなど、デジタル税には否定的でした。現在でもこの制裁関税は継続して課されており、現大統領ジョー・バイデン氏の政権下でもその姿勢は変わっていないようです。

まとめ

 デジタル税に対する動き、そして今回の訴訟からも、他国での市場独占は構わないが、自国内では独占を許さず、税金もきっちりとっていくという、アメリカの「いいとこ取り」姿勢がよくわかります。

 現在のデジタル市場は、ほぼGAFA4強状態と言っても過言ではありません。今後さらに独占状態が加速すると、それに伴い規制が強化され、大企業に対する風当たりはさらに強くなることも予想されます。

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