スマホアプリ「TikTok」で有名な字節跳動(バイトダンス)が、中国のVR機器大手picoを90億元で買収したと、8月29日にわかりました。
ショート動画アプリの会社がVR機器メーカーを買収する狙いと、今後の展望について、中国国内報道をもとにお伝えします。
世界大手が競って参入する「メタバース」
「21世纪经济报道 」によると、今回の買収劇では「元宇宙(Metaverse)」がキーワードになっているようです。Meta(超)とUniverse(宇宙)を組み合わせた造語。多人数が参加して自由に行動できる仮想空間を指します。
Facebook、バイトダンズ、テンセントなどの大手が「元宇宙」に取り組んでいる中で、VR産業は次世代インターネットに入るための「入場券」と業界内では見られており、投資家からは新たな「富のパスワード」と考えられているといいます。
8月29日、VRベンチャー企業Picoが全職員へのメッセージで、自社がバイトダンスに90億元で買収されたと明らかにしました。
Picoは2015年設立、中国国内VR業界出荷量最大のソフト・ハードウェア開発製造メーカー。中国の一体型VRシェアで第1位の企業です。
今後PicoはバイトダンスのVR関連業務に組み込まれ、バイトダンスのコンテンツ資源と技術を合わせ、製品開発と開発者エコシステムに投入されると言われています。
買収の効果に好感
引受額世界第2位の投資銀行、中国国際金融の見立ててでは、以前FacebookがOculusを買収した成功体験をコピーすることができ、VRライブなどのリモート・インタラクティブアプリアプリにつなげ、中国国内及び全世界のVR出荷量を急速に成長させることができるとのこと。
今回の買収について、AR企業「亮風台聯合」創業者の唐栄興も、「バイトダンスは優秀なソフトウェア会社であり、Picoの買収により、ハードウェアとソフトウェアの結合を実現できるだろう。また、自分が知るところによると、彼らはAR光学領域で既に準備を進めている。今後、2Dコンテンツを3Dコンテンツにアップデートするために、よりよいエコ・クローズドループを構築しようというものだ」と、高く評価しています。
米国大手に対抗する勢力に?
今回の買収により、VR業界にどのような影響があるのでしょうか。「网络一线牵 」が伝えています。
これについて、中国電子信息産業発展研究院の趙燕氏は、「バイトダンスのインターネット遺伝子と社交属性は、『元宇宙』と非常によく合う。Picoのハードウェアでの強みと結合し、ソフトウェアの応用によってハードウェアの発展を推進し、ハードウェアのバージョンアップはより多くのアプリシステム、機能を生み出す可能性があり、バーチャル空間のハード・ソフトの相互発展を促進させ、競争力のあるハード・ソフトが一体となったVRエコシステムを作り出すことができるだろう」としています。
VR業界のマクロな展望として、同氏は「バイトダンスの参入は、国内主要大手の最先端企業になると期待でき、Facebook、Google、Microsoft、AppleといったIT大手とのVR領域での差を縮小することができるだろう。とくにハード、ソフト、コンテンツ、アプリとサービスのVR全産業チェーンの配置能力において。これまで中国国内にはVRのハード、ソフト、プラットフォームの全エコシステムを包括した企業はなく、いずれもハードかソフト、一部分をやる企業ばかりだった」と指摘。
また、IDC中国終端系統研究部アナリスト趙思泉氏は、「今、VRハードウェアメーカーが重点を置いているのは、やはりまずハイクオリティな内容とより訴求力のある価格により、コンシューマー向け設備の出荷を推し進め、『元宇宙』概念の継続的な発展の道筋を建てることだろう。技術の成熟とコンテンツ生態が整うのを待って、『元宇宙』の壮大な構想を実現させることとなる」といいます。
総論
今回の動画SNS大手・バイトダンスによるVR機器大手・pico買収については、「ソフトウェア」と「コンテンツ」をもったバイトダンスと、VRハードウェアの技術と供給力をもつpicoにより、フルパッケージのVR製品、ひいては「元宇宙」概念の発展をもたらすものと、高く評価、期待されているようです。
PicoはSnapdragonを搭載した一体型VRヘッドセットを展開、日本国内でも法人向けを中心に販売しています。