こんな解決方法アリ?
米制裁による禁輸でスマホ事業に甚大なる打撃を受け、危機にある中国メーカー華為(Huawei)。
11月、華為が一部のスマホ設計を他社へライセンスするとの情報が流れていました。これについて華為は無回答でした。
中国「AI財経社」の取材によると、ある華為のエリア・フランチャイザーは、他社へのライセンス提供を事実と認めるとともに、華為は新たなモデルによってスマホ事業を復活させようとしており、一部のブランドとの提携については交渉中と明かしました。また、華為には5Gスマホ業務を復活させる、別の策もあるとのこと。
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スマホを他社ブランド名で発売する「智選」シリーズ
なお4次にわたる制裁で、華為のスマホ業務は「底」にまで落ちています。2021年Q1、華為のスマホ出荷台数は中国国内第3位に、グローバル出荷台数は上位5位圏内から脱落。
前出フランチャイザーによれば、華為の新たなビジネスモデルは「智選」(あえて横文字にすると、見ればわかると思いますが『スマートセレクション』って感じですかね、見ればわかるので以降「智選」のままでいきます)と呼ばれており、これは華為とビジネスパートナーが共同で開発する機種であり、華為のID設計と品質管理基準を採用したものだといいます。
現時点で、華為は続々と「智選」モデルをリリースしており、華為スマホの京東(EC大手)直営旗艦店にも商品欄で「智選スマホ」を選択すると、「U-MAGIC」「麦芒」「雷鸟」「NZONE」等のスマホが販売されており、それぞれ中国3大通信キャリアと家電大手TCLのブランドコラボ商品。
チップ供給はコラボ先名義で
これらの「華為智選」スマホ製品の特徴は、以前、中国市場で流行した「貼牌機(外注生産したものにブランドロゴを貼り付けただけのモデル)」とは反対に、形は華為のスマホながら、「Huawei」ロゴが入っていないことです。
「『智選』コラボ先はスマホチップをよそから調達できる」と前出フランチャイザーは明かします。「これにより、華為のエンジニアは既に海思(華為傘下のチップメーカー)に合わせて設計したスマホの回路を、クアルコムやメディアテックにあわせて設計しなおしている」とか。
前出スマホのスペック上、華為麒麟5Gチップは搭載されていないものの、メディアテックとクアルコムの5Gチップが搭載されており、5G機能を実現しています。
現時点で、華為は大量の実体店で「智選」スマホの陳列コーナーを設置しており、販売主力商品になっているといいます。「しかし海思のチップがないと、華為のブランド力の低下は否めず、『智選』スマホの販売台数は捗々しくない」と、前出フランチャイザーは肩を落とします。例えば、華為のスマホを買いに来た客に、店員が華為智選機種を薦めて販売したところ、客が「華為ブランド」ではないことに気づいて返品した例もあるとか。
シーメンスと華為の合資企業「鼎橋」
「智選」以外で、華為の5Gチップを搭載したスマホに「鼎橋N8 Pro」があるといいます。これは初のコラボ先スマホでの麒麟搭載例で、麒麟985 5G SoCを採用。
「鼎橋って誰だ?」というところですが、通信ネットワークの他には防犯カメラなどの端末を製造している情報通信メーカーで、華為とは深い関係があるとのこと。同社は2005年に独・シーメンスと華為が3G時代のTD-SCDMA技術と関連製品開発を目的として設立した、中外合資企業。資本金1億ドル、持ち株比率はシーメンス51%、華為49%。
「防犯設備」業界とスマホ、確かに結びつきそうな感じがしますね。AI財経社が防犯設備展示会を取材した折にも、モバイル端末の更新必要性についての話があったそうです
曰く、従来型のモバイル端末は体積が大きく重量が重い上に、機能や性能も低く、急速に発展するスマートモバイル産業のプラットフォーム構築のニーズに応えられていない問題がある。さらに、カスタマイズ能力にも欠けている。 対応するデータ検索、データ採取、リアルタイム操作など、多くの業務シーンでのニーズに追いついておらず、独立システムという制限によって、作業人員は個人用のスマホと業務用スマホなど、同時に複数の端末を携帯する必要があるなど、多くの不便があるといいます。
こういった問題点を見て、鼎橋は特定業界にカスタマイズした端末に触手を伸ばし、華為スマホとTDOSシステム(鼎橋のモバイル業務OS)、自社開発アプリを採用し、ダブルOS、安全・カスタマイズ化をアピールポイントとして、毎年10万台以上のスマホ出荷台数を狙っていくことになりました。
novaシリーズ・ライセンスを中国郵政系メーカーに販売か?
中国の政府調達部門担当者によると、華為はnovaの設計を中国郵政電信電器有限公司(PTAC)へライセンスすることを検討しているといいます。PTACは以前華為の代理店をしていた中郵普泰と同じ、中国郵政系列。
前出フランチャイザーは、「中郵普泰の販売モデルだと、小都市など、より多くのユーザーをカバーすることができる」「しかし、製品力があることが前提だ」といいます。
novaというブランド自体、OPPOやvivoの発展期に採用した女性市場ターゲット路線を真似たもので、ブランドのポジショニングは明確。華為ではOPPO、vivoの成功を「デザイン」「営業」「実体店販売チャネル」での工夫にあると分析しており、これを踏襲してきました。novaが最終的に誰のものになるかは、華為の戦略調整にかかっているといいます。
まとめ
米国政府の制裁により、急速に市場から姿を消していった華為ブランドのスマホですが、「通信キャリアのラベルで売ればクアルコムやメディアテックのスマホチップを使える」という、簡単すぎる解決方法。確かに、クアルコムやメディアテックからすれば是非売りたいわけですから、米国政府が文句を言わない限り言い訳はなんだっていい筋合いですね。
華為とシーメンスの合資企業からは麒麟チップ搭載モデルも投入。novaはライセンスごと売ってしまうことも検討されているようです。
ただ、せっかくハイエンドモデルのブランド力を確立したのに、「華為」「Huawei」ロゴが付けられないのは、なんとも冴えないところ。開発・製造技術の継承、発展を主目的とした、苦肉の策でしょうか。