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OPPO独自チップ「MariSilicon X」発表、RAW「自動現像」を実現

 12月14日、OPPOは初の自社開発となる映像専用NPUチップ「MariSilicon X」を発表。映像処理に使用できるとのこと。OPPOは2019年、チップの自社研究開発チームを結成し、3年で500億元(約8000億円)を投入すると宣言、これを「マリアナ計画」と称していました。

 AI財経社によると、OPPOは今回発表したNPUの他にもISO(画像信号処理器)、ベースバンドチップ、SoCの開発を進めているそうですが、ベースバンドチップについては「難度が高く、開発チームの規模も大きくない。社内での期待は高くない」のだとか。

 また、AI財経社によると、OPPOのチップ開発チームは数千人規模で、平均年収は100万元以上、これらの人材は華為海思(HiSilicon)と紫光展鋭(Unisoc)から引き抜いてきているとのこと。

 今回発表された「MariSilicon X」とは、一体何者なのでしょうか。AI財経社の記事を元にお伝えします。

スマホ撮影機能の進化から生まれた「新たなニーズ」

 20代30代以上の人なら、夜間屋外でスマホ撮影すると、暗くてボンヤリ、ザラザラした写真しか撮れなかった経験をしたことがあると思います。これはスマホの故障でも、撮影技量の問題でもなく、7、8年前のスマホ撮影能力の限界でした。

 レンズも撮影センサーも、物理的なサイズの問題で、スマホの光学描写能力はかなり「有限」であり、スマホがカメラに勝てないという論は常識でもあったと指摘します。

 しかし近年、「計算写真(コンピューティショナルフォトグラフィー)」の登場によって、スマホの撮影能力に新たな向上の道筋が拓けました。光学採集情報を基礎として計算能力を加え、HDR、人物モード、夜景モード、星空モードなどの新たな撮影モードが登場。これらの新機能は次々と現れ、高速発展していくと同時に、計算能力とハードウェアにも新たなニーズが生まれたといいます。

「5ルクス」でも動画撮影可能

 ここ数年発売されているフラッグシップ級スマホは、いずれもHDR、夜景モードなどの機能がついているものの、4K解像度などのハイレート画質を選択すると、計算撮影機能が使えませんでした。この原因は、現有のスマホSoCプラットフォームのスペック不足によるそうです。

 14日に開幕されたOPPO INNO DAY 2021未来科技大会において、OPPOは4K極暗条件(5ルクス)下での動画撮影効果比較を公開。

 「マリアナMariSilicon X原型機」の撮影効果は明らかにiPhone 13 Pro MaxとOPPO Find X3 Proに勝っており、映像専用NPUチップMariSilicon Xの計算写真能力を示しました。

驚きの演算能力

 世界最深の海溝から名前をとった(間違っても「絶対国防圏」ではないでしょう)「マリアナ」ですが、これにはスマホの最も深い部分である、チップから攻勢に出ようという意図が込められており、今回発表されたMariSilicon Xは、多くの人の想像を超える出来栄えのようです。

 世界最初の映像専用NPUチップとして登場した「マリアナMariSilicon X」では、チップ業界の中でも相当先進的なTSMC6nm製造技術を採用。マイクロアーキテクチャ部分は「MariNeuro」自社開発のAI計算ユニット、「MariLumi」映像計算ユニットなどにより構成。

 「マリアナMariSilicon X」の実力は、演算能力からも見て取れるそうです。SoCから独立してTOPS@int8以上の計算力は、AI演算能力上、AppleA15 SoCプロセッサーを凌駕するものだといいます。

 OPPOによると、「マリアナMariSilicon X」上でAIノイズキャンセリングを走らせた場合、速度はFind X3 Pro(Snapdragon888)の20倍の速さであり、スマホでは初めて「4K+20bit RAW+AI+Ultra HDR」の撮影計算処理レベルを実現、 電力消費も、全体の効率はFind X3 Proの40倍であり、スマホ計算写真の新境地に達していることは疑いないとしています。

RAW画像リアルタイム計算を実現

 マリアナMariSilicon Xの中で、最も価値があり、深い意味を持つのは、計算写真の回路革新だといいます。

 SnapdragonであろうがMediaTekであろうが、従来の処理機はYUVで画像を処理していますが、これにはセンサーが感知していた大量の原始データを切り捨てるという欠点があります。スマホメーカーができることは、損傷したデータを後から補正することですが、カメラセンサーの本来の性能には遠く及んでいません。

 今回、OPPOはRAWでのリアルタイム計算を実現。目的は、画面を限りなく「素材の味」に近づけることにあり、これは今後の計算写真の重要な方向性であるといいます。

TSMCの「お墨付き」を獲得?

 AI財経社は、今回のOPPOのチップ開発は、他のスマホメーカーによる開発とは異なる「特長」が3つあると指摘しています。

 まず、「マリアナMariSilicon X」はSoCから独立した、計算、保存、I/Oといったモジュールを完備した独立したチップであり、「簡易版SoC」とも言えること。次に、TSMCの6nm先進製造技術を採用しているということは、OPPOがTSMCから「重要顧客」という位置づけをされているという点。3つ目は、OPPOはこのチップを、次の世代のFind Xシリーズで実際に運用するという点だといいます。

 「マリアナMariSilicon X」は、本質上SoCと同等の独立したチップであり、機能上、カメラセンサーと直接繋げることができることから、SoCでの運行より有利だそうです。

 次に、非常に重要になるのが製造技術。スマホチップの製造技術「戦争」が激烈なのは有名で、毎年、Qualcomm、MediaTek、AppleがTSMCの最先端生産技術を争っているところ。「マリアナMariSilicon X」が6nmを採用したということは、まずOPPOがちゃんとおカネをかけるつもりがあるということ。サプライチェーンでの伝聞によると、OPPOの今回の「マリアナMariSilicon X」試作は非常に順調にいったものの、1億元近くを費やしたといわれているとか。

 TSMCは、実はずっと中国大陸の新プレイヤーを探していたものの、相当強力なチップ設計能力、企画能力、資金力を必要とするところ、中国でこれに該当するメーカーは、華為海思、MediaTek、OPPO、aliくらいしか見当たらないといいます。

 結果から言って、OPPOの製品と発展思考はTSMCのお眼鏡にかなったと指摘。今回の提携を基礎として、両者の関係はより一層緊密になると見られます。

まとめ

 2019年にOPPOが自社チップを作ると言い出したときは、正直なところ「中国で流行ってるからと、思いつきでやってるんじゃないの」と少し思っていましたが、なかなかどうして、こうやって2年後にちゃんとTSMCからチップ製造技術を提供を提供されるレベルで製品を作り出してきたのは、けっこう驚きました。

 「RAW」、カメラ好きな人はこれで撮影して自分で加工(これを「現像」といいますね)というのが「通の楽しみ方」で、自動的JPGに加工されるのは元のデータ自体が粗いため「撮って出し」、インスタント写真のような扱いをするところもありますが、今回の「RAW」をもとに「撮って出し」をする新チップを開発したOPPO、わりと本気で凄いと思います。

 記事中、7,8年前のスマホカメラ性能がカメラ専用機に遠く及ばなかったという話で、そういえばあの頃はソニーRX100が1インチセンサーコンデジのブームを作ったなあと懐かしくなったり。「スマホの米粒のようなセンサーではまともな写真撮れない」と言われていたのも、昔話ですね。そもそも1インチセンサーを積んだスマホも登場していますし。

 OPPOの次のフラッグシップが楽しみです。

次期Find Xに搭載予定

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