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北京EV事情、まるで「テレホーダイ」。深夜限定「安充電」に行列の車、明日の日本か?

 たぶん日本もこうなるよね。

 「燃料車から電動車(EV)へ」は自動車業界の大きな潮流となっています。中国では政府の後押しもあって、とくに商業車両での電動化が進められているところ。日本のバス会社が中国製の電動バスを導入したことも、話題になりましたね。

 昨年末、「EV充電スタンドは奪い合い」が微博のトレンドになりました。夜間の電気代が安いことから、午前4時に起きて充電スタンドへ走る人などによる「充電スタンド争奪戦」が中国中央電視台の経済ニュース番組でとりあげられたのがきっかけ。

 「網易」のニュースアカウント「毎日人物」が、北京の冬の夜にEV充電スタンドへ群がる人々に直撃。

 今回登場する北京郊外北東部の順義区は、運送業者の北京物流拠点が多く置かれている場所。首都空港からほど近く、2019年には400以上の物流企業が集まり、南部の李橋は「物流小鎮」、東京で言えば大田区や埼玉県新座市だと思って読めば、なんとなく生活感がわかりやすいと思います。「日本でもこうなりそう」と感じるものでしたので、ご紹介します。

トラックやタクシーの運転手が中心

 「新エネルギー」という言葉はホワイトカラー、中産階級との結び付きが強い言葉と思いきや、やって来てみると、未明の順義で車の充電に並んでいる多くは物流貨物運送業界の人だそう。北京都心部での運送で生計を立てており、毎日200km以上走行します。

 北京の関連補助金政策が始まってから、多くの企業がガソリン車をEVに置き換えたほか、ガソリン代節約のためにEVに買い替えたという人も。

 一般のユーザーなら充電は週一回、公共交通機関で出かけることもできますが、これらEVに頼って生活している人たちは、毎日充電しなければいけません。電気代、充電スタンドの位置と数量が、直接仕事と生活に影響します。

 深夜の北京順義区楊鎮にあるホテル、泊悦酒店の駐車場。8つの充電スタンドは、長さ4メートル、高さ2メートルの箱型電動トラックでいっぱい。宅配業者「順豊」やEC大手「京東」、はたまた引越し業者のロゴが並びます。充電スタンドはウォンウォン音を立て、充電中を示す赤と緑のランプが一つずつ灯っています。

 トラックの運転席を覗いてみると、運転席から助手席へ足を伸ばして寝転がり寝ていたり、スマホで動画を見ていたり。

深夜に1時間半かけて充電し翌朝も仕事

 気温は零下4度。電動トラック、ネットタクシー(日本では「白タク」とされている、一般ドライバーがアプリでお客を乗せるライドシェア)やタクシーの運転手たちは、みな夜のうちに充電しますが、少なくとも1時間半はかかる充電が完了してから帰宅して、次の日もまた仕事。

 順義区は北京でも外来人口が最も多い地域。運送会社の職員の多くは、河北、河南、内蒙古、東北から来ています。家賃も比較的安いことから、彼らも運転手たちと同じように近くに住み、退勤後は家の近くの充電スタンドで充電してから帰宅するのが習慣。後から来る同僚のためにスタンドを確保している人も。

 午前1時、タクシーから降りてきた運転手が充電スタンドに線をつなぎますが、ランプは片方しか点きません。少し苛立たしげ煙草に火をつけ、抜き差ししてみますが、どうやら充電できない様子。この運転手さん、ここへ来る前に6km先へ充電に行ったそうですが、そこには39個も充電スタンドがあるのに、営業時間は午前9時から午後5時まで。そういったところは少なくないそうです。

 となりではネットタクシーの運転手が充電中。充電率は84%ですが、待っているタクシーの運転手に譲りました。「寒い中、みんな大変だから」と、だいたいのところで充電を切り上げて帰るそうです。

燃費はガソリン車の6割程度

 午前2時、トラックの運転席から黒いダウンジャケットの程野氏が飛び降りてきました。手に持ったスマホには充電スタンドを探すアプリを2つインストールしてあり、WeChatにも似たような機能がついているのだといいます。

 アプリに表示されている価格を指差しながら、「時間によって電気代がちがう」と説明。10:00-15:00が最高値で1kW-h1.26元、これが23:00-7:00だと0.85元まで安くなるのだとか。まるでテレホーダイですね。

定額制のない時代、23時~翌日8時の時間帯に安く回線接続できるNTT「テレホーダイ」をモチーフにした匿名掲示板アスキーアート「テレホマン」

 程野氏がガソリン車から電動車に買い替えたのは、2021年7月。17万元の電動トラックです。2016年に上京した頃は往復80kmの運送で400元の報酬になり、前に乗っていたガソリン車の元も一年で回収できましたが、今は運送アプリでの競争が激しく、今では同じような案件の単価が200元、「半分になった」といいます。

 トラック運転手たちは、順豊が開発したアプリで配送を受注することができるのだとか。案件は公開で、荷受地、荷受時間、発送先、貨物種類、価格などが表示されており、誰が最初に荷物を受け取るかの早いものがち。案件をタップすると、左上に「2」と表示されれば2人が競争しているということ。酷いときは「10+」と表示され、何人が争っているのかわからないのだとか。

 儲けが少なくなってきたことから、コストダウンのために電動へ買い替え。ガソリン車だと、一日のガソリン代は200元ほど。電動は冬場電力を食うので、一日3回運送をして充電は2回、1回あたりの充電は80kW-h程度なので、安い時間に充電したとして120元だといいます。6割程度になりますね。

 ただ、充電してからだと家に帰るのは午前3時。明日も8時か9時には起きなければなりません。「ガソリン車だったら、誰が夜に来る必要がある?直接帰れば1時間半多く寝れる」と嘆きます。

まとめ

 真っ先に電動自動車へ買い換えた人たちは、といえば、個人タクシーや一人親方のトラック運転手。アプリで手軽に仕事が降ってくるようになったのはいいものの、壮絶な奪い合いで単価は下がるばかり。

 少しでも儲けを出すために、電気代の安い深夜時間帯に充電しようと、寒空の下、自分の充電を犠牲にして行列する運転手たち……。

 東京でも、5年後に同じ風景になるかもしれませんね。

情報元每日人物
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