AMDは、ラスベガスにて行われている家電見本市「CES 2022」に合わせてノートPC用のCPUであるRyzen 6000シリーズを発表しました。
「+」にとどまらない進化、Ryzen初の5GHz達成。
世代は現行のRyzen 5000シリーズのZen3からZen3+へ進化し、製造プロセスは7nmから6nmと微細化を果たしています。製造はTSMC。あくまで自社生産にこだわりたいIntelとは対照的に、微細化を進めることでRyzen 5000シリーズに比べ電力効率が改善しているようです。
また、最上位モデルのRyzen 9 6980HX/HSのブーストクロックは5GHz。デスクトップ向けも含めて、最大クロック5GHzを達成したのはこれが初めて。マルチスレッド性能もRyzen 5000シリーズに比べ1.3倍、ゲームやレンダリングなどは2倍以上の性能を実現しているとのこと。
Ryzen 6000シリーズは最上位モデルのRyzen 9 6980HX/HSをはじめ10製品が用意されており、ミドルクラスのHシリーズと低消費電力のUシリーズ、ハイエンドのHXシリーズがそれぞれ2種、高い性能とやや低い消費電力を両立するHSシリーズが4種で構成されています。幅広い性能を提供する12世代Coreシリーズとは対照的に、ゲーミング向けに偏っています。世界的な半導体不足のあおりを受けた形となるのでしょうか。今後のモデル追加を期待したいところです。
グラフィック、ようやくテコ入れ。
RyzenシリーズのCPUの世代は毎年刷新されていましたが、内蔵GPUは古いVegaを用いていました。一方Intelは2019年からGPUに注力をはじめ、現在では強力な内蔵グラフィック性能がウリだったRyzenシリーズを凌駕しています。
これが今回のRyzen 6000シリーズでアーキテクチャが刷新、AMDが販売する最新世代のグラフィックボードである「Radeon RX 6000」シリーズやPS5/XBOX Series X/Sと同世代のRDNA 2が採用されています。これによりグラフィック性能はRyzen 5000シリーズと比べて2倍になっていると謳っており、第11世代Coreシリーズで最も高いグラフィック性能を持っていたIntel Core i7-1165G7を超える性能を確保しているといいます。
内蔵グラフィックはRyzen 9/7が「AMD Radeon 680M」、Ryzen 5が「Radeon 660M」を搭載。バッテリー駆動時の性能が気になるところ。
廉価グレードにZen3+の用意はなし。
ただし、発表時点ではRyzen 6000シリーズにRyzen 3の設定はなく、同時発表されたRyzen 5000シリーズのリフレッシュ版である「Ryzen 7 5825U」「Ryzen 5 5625U」「Ryzen 3 5425U」はZen 3を採用。
AMDがCES 2021の際に発表したRyzen 5000シリーズではシリーズ内にさらに1世代前のZen 2が混じっていましたが、今回は5000シリーズとしての発表、また下二桁の数字など見てわかりやすい名前になっていて好感が持てます。
フラッグシップThinkPadにも搭載、年内に200種以上のノートが出荷
Ryzen 6000シリーズは2022年中に200種類以上のノートパソコンに搭載され出荷されるようです。
また、Lenovoが15年ぶりに復活させたフラッグシップの「ThinkPad Z」シリーズにも搭載が決まっており、管理機能を強化したRyzen PRO 6000シリーズもしくはThinkPad Z独占モデルの「Ryzen 7 6860Z」を搭載します。
総評
筆者としては高いグラフィック性能と優秀なバッテリー持ちを両立するUシリーズこそ至高という考えでしたが、Intelがそのような方向性へと変化し、AMDはハイエンド方面に重きを置いた感じがします。搭載されたノートPCのコスパや処理性能、バッテリー持ちが非常に気になるところです。