AIは絵師に取って代わるのか?中国でも論議 すまほん!!

 AIイラストの波は中国にも。

 人気絵師風の絵が出せるとか、勝手に学習データとして取り込むなといったお気持ちを表明する方も多く、盛り上がっている(?)「AI作画」ですが、こういった技術は中国企業が大好きといったイメージもあり、向こうではどのような話になっているのか気になるところ。

 作画AIは絵師に取って代わるのか、人と作画AIはどう付き合っていくのか、中国「成都商報」の考察記事をご紹介します。

 AI作画愛好者の王氏によると、普段よく使用しているのは「Midjourney」。操作モードから関連ワードを入力すると、AIが画像を生成するというもの。「いまのアルゴリズムからいって、生成される画像のレベルは比較的高い。以前は明らかな欠点、たとえば人物がダメだったものだが、最近の新たなアルゴリズムにより改善されてからは、全体的に明らかな欠点はなくなった、手を描くのが苦手なくらいだね」とのこと。

 なお今回の記事の挿絵は全てAIで生成しています。

中国勢では百度(Baidu)が主流

 今の主流作画AIは、百度(baidu)「文心大模型ERNIE-ViLG文生图」、同「文心一格」、Midjourney、Stable Diffusion、Novel AI等。紅星新聞の記者が「文心大模型ERNIE-ViLG 文生图」を試してみたところ、「青緑色の草地が連なる、山間起伏、星星が空に瞬く、青空白雲」といった関連ワードを入力、「油画」を選択、「生成」ボタンを押して30秒待つと、6枚の絵が生成されました。

 同じ関連ワードを入力すると、生成される画像に重複は発生するのか?記者が5回連続で試したところ、完全に同じ画像が生成されることはなく、同じような雰囲気で構図はやや似ていたとのこと。

 百度文心関係者によると、百度文心の素材はインターネット上で公開されているデータと、百度が内部で制作したデータ集。生成過程では、漸進式拡散モデルにより、空間の大きいものから小さなものまで、輪郭は太いものから細いものまで生成し、生成段階で自動的に最適な生成ネットワークを選択しているとのこと。

 四川大学計算機学院(ソフトウェア学院、スマートサイエンス・技術学院)データAI・アルゴリズム芸術実験室の李茂准教授は、「いまホットなAI作画は主に拡散モデル(Diffusion Model)にもとづいたもので、その特徴としてはより強く人類の視覚創造力を表現することが可能で、あっと驚く視覚効果があり、関連ワードなどから創作することが可能で、誰でも参加することができる」といいます。

補助的な役割に期待

 ある漫画家は、AI作画の最大の強みは「速さ」と「安定性」だといいます。人が1週間かかるかもしれない絵を、AIは1分もかからずにはじき出しますし、気に入らなければいくらでもリテイク可能、休憩いらず。

 色感の面でも、AIはディープラーニングをつうじて、人に好まれる配色を安定して出すことができると言います。「多くのAI絵は構図が完全にダメでも、画面はきれいに見える、これは配色がいいからだ」とのこと。

 AI作画の優位性は非常に明確であり、たとえばデザインの初期に多くの配色案を人に提示する「インスピレーション」の提供であったり、高層ビルやステンドガラス窓、水、火、氷、雷のようなエフェクトといった素材を描くであるとか、大量の反復性作業を人に替わってするなどがあるといいます。

 しかしAI作画も完全ではなく、王氏によると、AI作画を使用するには一定の経済的コストと試行錯誤コストが必要であり、「非常に熟練していないと、はじめたばかりは欲しい絵を得ることが難しいし、反復してワードを打ち込んで試行を重ねる必要がある」とのこと。また、前出漫画家も、AIでは正確に必要な絵を作り出すことが難しく、偶然性が高いとしています。

 また、あるゲーム制作者によると、AI作画は主に2Dゲームでの遠景であるとか、モンスターの造形生成に応用可能なものの、AI作画はまだまだ直接使用できる程度には達しておらず、生成された建築の透視に問題があり、他の素材との兼ね合いも難しく、AIがカバーできる範囲は非常に狭いとしています。モンスターの生成でも、AIは参考程度であり、人によって二次加工する必要があり、直接自分で描いたほうが早い場合もあるとか。

 前出漫画家は、多くの専門用語を入れなくとも、いい絵がだせるようワード識別はもっとスマートになるべきで、また、キャラクターや物体の三面図も安定して読み取り、同じ特徴の人物や物体を生成できるようにして欲しい、といいます。

AIは絵師を凌駕するか?

 王氏によると、AI作画は絵師にとって主に補助的な参考的な作用をもたらすもので、「AI作画はツールに過ぎず、画面の配置、結合はやはり人が処理したほうがより精緻だ」とのこと。

 ある漫画家は、「自分は漫画家なので、本質的な売り物は演出と内容であって、絵ではない。よって、AIによって自分の画風と完全に似た画像が生成されるとしても、それは仕事量を減らすための道具に過ぎない。たとえば、自動的に字をきれいに書いてくれる万年筆があったとして、小説家の仕事に取って代わることはできない」と指摘。

 科技日報によると、李茂助教授が考えるに、コンピューターはある程度まで人類の創作、想像能力、文化と環境の制限を超越し、その結果、見たこともない、想像もできないような画像を生産し、芸術創作に新たな可能性をもたらすかも知れない。AI作画はもしかすると一種の独立した芸術体型に発展する潜在力を秘めているかもしれないとしつつも、「人工知能絵画は伝統的な絵画にとってかわるためのものでなければ、完全に伝統的な絵画に取って代わることもありえない」といいます。

 四川大学計算機学院の呂建成教授によれば、AI芸術はいまのところコンピューターツールにより人のイノベーション、発想や感情の手助けをする段階にあり、真の意義でのAI芸術の最も本質的な特徴は、芸術の発意、発想、感情の一部または全部をAIが生み出すこと、つまりAIが「インスピレーション」をもつことだ、とのこと。

AI「作品」の商用使用は可能?

 中国語SNSでは、AI生成画像作品を1200元売ったという投稿や、自身のAI生成画像作品を著作権登録したというものも。記者が質問したものの回答はなし。前出王氏もMidjourneyで生成した画像作品を販売したことがあるというものの、具体的な数や価格については答えなかったそうです。

 AI作画により生成された作品の権利は誰に帰属するのか?商用は可能か?が、AI作画最大の論争点だといいます。

 百度文心関係者によると、利用規約のなかでは、ユーザーは入力した内容が他者の権利利益を侵害するものではないとの前提の下に、生成された画像は法令に違反しない範囲内で自由に使用できるものとし、「法令に違反しない範囲内で商用利用可能」としているとのこと。

「AI作品」の権利帰属をめぐる中国での議論

 四川一上律師事務所のパートナー、林小明弁護士によると、現行法ではAI作画について明文規定をおいておらず、中国著作権法の規定では「中国公民、法人又はその他組織の作品は、発表の有無を問わず、本法により著作権を享有する」となっており、AI作画によって構成された作品が著作権を有するとの前提の下では、その著作権はAIの権利主体に帰属すべきであり、独立した意思を有さないAIが実質的に道具、画筆のレベルアップ版のようなものであるならば、その形成された作品はAIの創造者又は使用者に帰属し、最終的には法律の規定するところの公民、法人又はその他組織に帰属する、といいます。

 北京市中聞(西安)律師法律事務所譚敏涛弁護士は、現在の人工知能領域は、多数の機構がいずれも機構の人工知能モデルを使用して創作したコンテンツの著作権は機構に帰属し、創作者も一定の著作権を有しているものの商用をしてはならないと主張している、とのこと。

 譚敏涛弁護士が考えるに、AIが作画した製品は、文学、芸術、科学、製造業などに利用できるものの、今のAI作画の著作権帰属問題に鑑みれば、AIが作画したものを直接商用に使うのは、一定の著作権リスクが存在するとか。

 また、前出林小明弁護士によると、AIにより作画された製品が盗作を構成するかについては、具体的な状況にもとづき具体的に分析されるべきであり、もしAI製品が独創性のある表現をし、かつ法律または業界の規定する盗作に関する基準に踏み込まなかった場合、盗作にならないだろうが、そうでないと盗作とみなされることになる、とも。

総評

 中国での「AI作画」事情をお伝えしましたが、ゲームや漫画制作の分野でも、「アシスタント」や参考材料の供給源としての活躍が期待されている様子。

 権利帰属についての部分も紹介しましたが、これは大事なことですが、日本の著作権法において著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法第二条第一項)と定められており、AIは思想又は感情を有さないため、単純にAIが生成した絵については著作物とみなされない、権利の対象と考えられていないため、人工知能モデルの作者が著作権者になる余地はないものと思われます。

 一方、なぜ中国で問題になっているかですが、おそらく「思想又は感情を創作的に表現したもの」に対応する条文が「独創性を有し一定の形式により表現された智力成果」(中華人民共和国著作権法第三条)であるためでしょう。

 こういった法律解釈が各国で食い違うのは実務上かなり差し支えがあるので、おそらく整理されていくものとは思われますが、AIが生成した「製品」に権利を認めると、無限に権利の客体を生成することも可能であって不合理なので、おそらく認めない方向でいくのではないでしょうか。

(編集協力: 會原, Midjourney, NovelAI)