本記事では、SNS上の話題を皮切りに、「メカニカルキーボードってそもそも何だっけ?」「分類どうすべき?」という話をしていきます。
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GPD Win 4は「メカニカルキーボード」?公式代理店の表記が話題に
PSPやPSVitaのような形状でスライド式キーボードを搭載したモバイルゲーミングPC、GPD Win 4が発表され、詳細な仕様が明らかになりました。
しかしX(Twitter)上で、その公式サイト内説明にある”スライド式メカニカルキーボード“という表現に疑問の声が上がっています。
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“スライド式メカニカルキーボード搭載”と記載がある
(続き)
マイクロソフトがSurface用キーボードで( #自作キーボード 派閥やキーボード好きにとっては紛らわしいことに)“メンブレンなのに、物理的スイッチがあるだけで『フルメカニカルキーセット』を自称した”例
(※ソフトウェアキーボードではない、という意味らしい)https://t.co/B61g5PNtWx pic.twitter.com/IwblPXBTBV— 橋本 新義 (@Shingi) March 19, 2024
そもそも「メカニカルキーボード」とは何か?
狭義のメカニカルキーボードとは、押し込むことで機械的な構造によって電気的な接点が導通する仕組みのスイッチを搭載するキーボードを表します。
日本国内では、独Cherry社のCherry MXスイッチを採用したFILCO Majestouchシリーズが有名です。
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Cherry MX スイッチを搭載した FILCO Majestouch 3
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Cherry MXスイッチ
ではGPD Win 4はどうでしょうか?
実際のパーツの写真が公開されていないので断定はできませんが、このサイズのキーボードでは基本的に表面実装型のタクティカルスイッチが採用されています。
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基板表面にはんだ付けする形で実装するスイッチ。画像はAlps Alpineより
このようなスイッチは小型のキーボードにおいてしばしば利用されていますが、押し心地は特段優れておらず、プチプチとしたオンオフのはっきりした感触であることが殆どです。
これをメカニカルキースイッチと呼べるかですが、あくまで押し込むことで機械的な構造(この場合は板バネが反る)によって電気的な接点が導通する仕組みであるため、分類上はメカニカルキーボードと読んでも差し支えないと言えます。ただしかなり直感に反しているのは確かです。
実は、壊れやすさで悪名高くモデルチェンジに伴い廃止されたAppleのバタフライキーボードもメカニカルキーボードに分類されます。しかしやはりこれも直感に反していると言えるでしょう。
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MacBookシリーズで採用されていたバタフライキーボード。これもメカニカルに分類されてしまう
「メカニカルっぽいのにメカニカルじゃない」キーボードたち
分類が直感に反している問題はGPD Win 4のキーボードに限りません。厳密なメカニカルキーボードという意味では以下のような「いかにもメカニカル」なキーボードは実はメカニカルキーボードと呼べないからです。
これらのキーボードは光学式スイッチや磁気ホールセンサ式スイッチを採用しています。つまり機械的構造によって電気的接点が導通していないのです。
これらは分類するのであればRealforceやHHKB (Studioを除く)、NiZのような無接点式となります。光学なら光学式無接点、磁気ホールセンサなら磁気ホールセンサ式無接点という感じでしょうか。
そろそろ無理のある分類をやめよう
「ややこしいが、実はこう」という分類は他にもあります。たとえば「パンタグラフキーボードはメンブレンキーボードの一種である」だとか、「メンブレンキーボードであっても金属バネを利用したものがある」など。まさに直感に反していて、びっくりですよね?そう、キーボードを機構を用いて分類することは、実はとても難しいのです。
以下は IBM Model Mの動画ですが、これでも分類上はメンブレンキーボードです。
筆者の考えとしては、そろそろ「メカニカル・メンブレン・パンタグラフのような表現をやめるべきなのではないか」と考えています。
たとえば、メカニカルキーボードと呼ばずともMXスイッチ搭載のキーボードだとか磁気ホールセンサースイッチ搭載のキーボードと呼べば間違いなく伝わります。これで問題なくないですか?
GPD Win 4やバタフライキーボードのように、使い心地の面でも、もはやメカニカルという分類は役に立ちません。
昔すまほん!!でもスマートフォンの内蔵ストレージのことをROMと呼ぶのをやめようという記事がありましたが、まさに同じようなことがキーボードの世界でも起きていると言えるのかもしれません。