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SwitchBot AIアートキャンバスレビュー。電子ペーパーでさりげなく家庭を彩る

 SwitchBotより、「SwitchBot AIアートキャンバス」を提供していただいたのでレビューします。

 この製品、SwitchBot製品としては珍しく、その機能は電子ペーパーを用いたイラストの表示であり、家電というにはさすがに厳しい製品です。ただ同社といえばスマートホーム製品ですが、当製品も「生活を豊かにすること」という視点で見ればその枠組みに入るものとなっています。

開封・セットアップ

 外箱はいつものSwitchBot製品、いや何かがおかしい。SwitchBot製品の外箱はもっとゴチャついていて、それでも分かりやすさがあった気がします。

 と思い比較してみたところ、レイアウトがかなり違うだけでなく、製品名のフォントすらも変わっていました。テキストの配置の変更はいいとして、SwitchBotさん、明朝体フォントで製品パッケージを作るのはお勧めしませんよ……。芸術性の演出を意図していたのかもしれませんが、大抵の日本人は明朝体と製品パッケージの組み合わせに怪しい中華メーカーのような雰囲気を感じるためです。

 メーカー向けな外箱の話は置いといて、さっそく開封していきます。箱の中から出てきた付属品は結構盛りだくさんで、凹凸のある壁紙に取り付けるためのピンや平らな壁に取り付けるためのマグネット付き粘着テープといった予想できるものだけではなく、水平器や予備のマット台紙など、そこまで気遣ってくれるのか、と驚嘆するラインナップです。

 この予備の台紙、何に使うんでしょうか?日射による色褪せ対策?もしくはお子さんにイラストをここに描かせ、変わらないものをそこに残すためかもしれません。

 さて、セットアップを始めます。とはいってもさすがはスマートホームメーカーのSwitchBot、いつものようにとっても簡単。SwitchBotアプリの右上にある「デバイスを追加」からAIアートキャンバスを選択し、本体背面にあるボタンを長押し。デバイスを検出したら、後は指示に従ってWi-Fiのパスワードを入力し、設置する部屋とデバイス名を選択して完了。

表現能力

 セットアップが完了したら、早速画像を表示させてみましょう。アプリから画像を選択し、転送ボタンをタップ。その後にトリミングやフィルターを掛けて保存すると、画面が点滅を繰り返しながら徐々に画像が浮かび上がってきます。

 この書き換え動作、7.3インチモデルでは約20秒ほど。これに、画像を転送する時間がかかります。電子ペーパー特有のゆっくりとした描画は、ある意味で趣があるとも言えますが……。そして表示された画像を見て、率直に感じたこと。それは「想像以上に表現力が限られている」ということでした。

 本機が搭載するE Ink Spectra 6は、白黒に加えてグリーン・ブルー・レッド・イエローの合計6色の表示が可能。しかしこれは「1ドットに1色しか表示できない」という制約があり、異なる色を交互に配置することでそれ以外の色を演出する仕組みとなっています。

 つまりグラデーションを表示しようとすると、バンディングノイズ(色の段差)が目立ってしまいます。色数も少ないため、写真や複雑なイラストの再現性は正直厳しいように感じます。レインボーのグラデーション画像を表示させてみましたが、特に純色どうしの境目でうまく表現ができません。

 ただこの問題も、遠くから見ればさほど気になりません。町の巨大ビジョンとかも画素密度は粗いわけですが、数m離れた距離から見た時にその粗さは気にならないはずです。

 とはいえ、卓上に置くことが多いであろう7.3インチモデルだと、電子ペーパーの限界を痛感させられます。遠くから見るであろう大画面モデルだと、ここがどう変わっているのか気になるところです。

 しかし、この解像感に最初はがっかりしたものの、この電子ペーパー特有の粗さがものによっては意外と悪くない、そういう風に思うようになりました。まず一つ相性が良いものは、シンプルにキャラクターのイラスト。ひと昔前のAIに作らせたような過剰な書き込みが行われているものは崩れてしまいますが、そうでないキャラの立ち絵だとか漫画のワンシーンといったものはそれなりに映えます。一方で、複雑な光の当たり方をするようなCGやゲームのスクショなどは不向きです。

 背景はなるべくシンプルにするか、もしくはキャラをなるべくデカく映すとそれっぽい気がします。電子ペーパーの色の出方も、漫画のトーンだと思えば乙なものです。

 

 そしてもう一つは、昭和のレトロな看板。色数が少なく純色が多いため、近づいても比較的きれいに映ります。色の再現性は分からないですが。ただし16:9で画像化されたものが少ないのが難点ですし、そもそも「昭和レトロ看板専用デバイス」を欲しがる変人は居ないでしょう。いや、居るか……?

AI Studio 

 さて、表現力に触れたところで、本製品の目玉機能であるAI機能についても語りましょう。この製品独自のサブスクリプションプランである「AI Studio」がこの製品をAIアートキャンバスたらしめているものではありますが、結論から言うとnot for meでした。

 AI StudioはT2I(Text To Image)やI2I(Image To Image)のようなAI画像生成がアプリ内で行えるサブスクリプション。月400枚の生成が可能で、その価格は月額600円。

 早速試してみます。アプリからアートキャンバスの操作画面にアクセスすると「AI Studio」という項目があるのでクリックすると、「AI画像生成」と「AIスタイル変換」という項目が表示されます。どちらも生成AIを齧ってきた人からすると分かりやすい機能ですね。なお、iPadではAI Studioは対応していないようです(一敗)。

 AI画像生成を選択すると、プロンプトを入力できるフォームの上には、画像生成のアイデアとなるようなネタが流れており、クリックしてそのまま入力ができます。

 入力後、しばらく待つと画像が生成されてきます。ただ画像のアスペクト比と、アートキャンバスに表示できるアスペクト比は異なるようです。7.3インチモデルは5:3、13.3インチモデルは4:3、そして最大の31.5インチモデルは16:9であるようで、31.5インチモデル以外は大体どこか見切れてしまいます。これはご愛嬌。

 その後はフィルタや切り抜きを設定してから、普段の画像のようにアートキャンバス側に転送すれば完了。IT関連に疎い方でも簡単に使えそうな印象です。

AI Studioでおススメされたプロンプトで作成

 ただ正直なところ、SwitchBotアプリ内で完結する利便性は評価できるものの、それ以外の使い勝手やコスパを考えるとおススメはあまりできません。

 まず月間400枚という画像生成数は結構多いですが、都度1枚しか生成できない効率の悪さを考えると、とてもじゃないが使いきれないでしょう。

 また、間接的に競合するサービスが強すぎるという問題もあるわけです。ChatGPTもGeminiも、かなり強いレベルの画像生成を、しかも無料で使えてしまうという強さ。赤字覚悟で巨大資本を湯水のように投入しAI界のリーダーを競い合う企業にコスパで勝てるわけがありません。これは正直相手が悪いです。

えっ、あっ……APIは?ハブ連携は?

 個人的に、SwitchBotといえばAPIという印象がありました。Webhookは制限なしですが、REST APIは1日1万回までしか使えないというレートリミットはありつつも、かなり簡単に自宅のスマートホーム製品をいじることができるため、DIYに最適です。

 しかし確認したところ、AIアートキャンバスは現時点でAPIの一般公開予定はないとのこと。それどころか、APIのために必要になるであろうSwitchBot ハブとの連携も、現時点では対応予定が確定していないようです。

 とはいえフォローすると、執筆時現在11月末、出荷開始となる12月下旬まではしばらく時間があります。絶えずアップデートが降ってきているのは確認しているので、発売開始からそこまで間をおかずして対応してほしいところ。

 筆者がなぜここまでハブ連携やAPIが現時点で整備されていないことを悲しんでいるかというと、これらによって実用的な使い方を提案できると考えていたから。AIアートキャンバスは消費電力の少なさがウリであり、また重さも大したことが無いのでどこにでも設置できます。

 例えば玄関ドアに配置し、適切なタイミングで毎日更新すればゴミ出しの日リマインダーに。筆者はペットボトルを出せず2か月ほどため込んでいたことがありましたが、出勤時に絶対に目に入るため、これができるようになれば絶対に気づけるでしょう。

 あと例えば、SwitchBotはビジネス向け事業も展開していますが、こいつを使えば会議室予約システムも構築できると思います。 

 その会議室の次の予定と、会議室を予約するためのQRコードあるいは会議室のIDを表示しておくとか。会議室予約システムはiPadを会議室前に備え付けることも多いですが、こちらのほうが消費電力も初期コストの面でも優れますしね。

 電子ペーパーの特性である低消費電力と視認性の高さを活かせば、常時表示するデバイスとして理想的。バッテリー持ちの問題も、情報更新頻度を1日1〜2回程度に抑えれば十分実用的になるでしょう。こういった使い方が実現すれば、単なるアートキャンバスとしてではなく、生活に溶け込むスマートホーム製品として真価を発揮できるはずです。

総評

 率直に言って、執筆時現在、この製品を積極的にお勧めすることはできません。それにはいくつかの理由がありますが、やっぱり大きいのは完成度。

 まず一つは画像の入れ替えのしづらさ。現在はスマートフォンとBluetooth接続することが必須となっていますが、その唯一の接続方法も結構打率が悪く、案内通りに背面のボタンを押さないと接続できないということも多々あります。ハブ連携が実装されれば多少はマシになるかもしれません。

 次に保存できる画像の制限。デバイス内に最大でも10枚までしか格納できません。もしかすればハブ連携が登場することによって、バッテリー持ちと引き換えに保存する画像を動的に入れ替えながら10枚以上の画像のスライドショーを行うことも可能かもしれませんが、現時点ではそれも不可能。

 後は、誰に向けた製品であるかが若干分かりづらいところも気になります。AIアートキャンバス最大の31.5インチは定価24万9800円。スマートロックやロボット掃除機を軽々と飛び越えて、SwitchBot最高価格のデバイスとなってしまっています。

 まあこれは仕方ないところがあり、そもそもeInkそのものが目ン玉飛び出るほど高いのです。特に需要の少なくなる大画面モデルとなればなおさら。

 その高さ故に購入層が限られるのは必然の話。しかも筆者の勝手な想像ですが、お金持ちはeInkにとびきりの名画を表示するのではなく、現代画家だとかの絵画を買い付けてそうです。

 そんな中、一つ思いついたアプローチがあります。それはオタク向け。正直、名画を電子ペーパーに乗せて表示したい人がそこまで多いとは考えられません。ひまわりのポスターなど大量に転がっています。今は好みが分散する時代ですから、「毎日●●を日替わりでお届け!」というのは、もはや刺さりづらいと思っています。

 しかし、pixivでフォローしている神絵師による推しのイラストなら?31.5インチというタペストリー並みのデカい画面に神絵師のイラストが毎日日替わり表示されるなら?スマホの壁紙を設定するのと同じような感覚で、部屋にデカデカと映るイラストを変えられるなら?

 そのように考えなおすと、人によっては喉から手が出るほど欲しいデバイスになり得る可能性を秘めていると思っています。電子ペーパーの弱点である表現力の弱さも、遠くから見れば気にならなくなります。

 ただ、イラストはデバイス内に収まる10枚じゃ到底足りないだろうし、お気に入りフォルダに格納された神絵師によるイラストは日に日に増えていき、都度削除と更新を繰り返すのも面倒でしょう。現時点での出来上がりでは、主にUXや機能性の理由からおススメすることはあまりできません。

 そこで、クラウドストレージサービスとの接続。フィルタやトリミングは考えないものとしておいて、好きなイラストをフォルダに無限に放り込み、勝手に画像を表示してくれるようになれば大化けする気がします。

 そんな妄想をちんたら続けていましたが、今はまだ、様子見を推奨するデバイスというのが結論です。すべてのモデルで安い買い物ではないですからね。

 私としては先述のオタク向けとしては壁に飾れる大画面モデルが適していると考えているものの、今のところ7.3インチモデル以外は生産状況の問題により、レビュー用に提供されていませんでした。そのため、実力、表現力をうかがい知ることはまだできません。

 大画面モデルの実力と今後の改善によっては、オタク業界に恐ろしいほどの特効を秘めている可能性がありそうです。他のサイズもぜひ試してみたいところです。

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