SIMロック解除を半年間拒否する携帯キャリアに対し、総務省は断固とした措置を講じるべき。

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 NTT docomoとKDDIは、総務省のモバイル創世プラン・改正ガイドラインに合わせ、5月以降のSIMロック解除の詳細を発表しました。

 蓋を開けると、消費者の端末購入後、180日間(=半年間!)のSIMロック解除を拒否するというものでした。

本末転倒、最初から端末返品に応じるべきだった

 携帯キャリアのプランは複雑化しています。実際に説明を受けた内容と端末・サービス・エリア・料金が異なる、という消費者からの苦情が相次いでいました。

 総務省は当初、「消費者は携帯契約から一定期間、回線を無償解約・端末を返品できる、クーリングオフ制度」を携帯販売に導入する予定でした。

 そこで強く反発したのが携帯キャリア各社です。紆余曲折の末、契約後8日以内の無償解約は「初期契約解除ルール」の名称で導入が閣議決定されることが決まりましたが、結局、「端末返品」は導入が見送られました。

 なぜ見送ったのでしょうか。総務省の考えは、要約すると「消費者は回線さえ解約すれば、手元に残った端末をSIMロック解除し、そのまま他社にMNPで乗り換えられる。だから、端末を返品できなくともいいだろう」というものです。

 ところが、ドコモとauは、半年間SIMロック解除を拒否する「解除制限期間」を設定すると言うのです。これなら総務省も「初期契約解除ルール」として妥協するのではなく、名実ともにクーリングオフとして、端末返品を導入していたら良かったのではないでしょうか。

 ただし総務省はこのような事態を予見してか、ガイドラインのある一文の補足に、細工を施しています。これについては後述します。

同内容、同時刻に正式発表。

 ドコモとauが発表した新しいSIMロック解除サービスは、細部に差異はあれど、「半年以内のSIMロック解除を受け付けない」という骨子は同一。

 しかもこの発表は、4月22日のほとんど同時刻に行われました。これは一体どういうことなのでしょうか。偶然にしては出来過ぎており、両者で事前に話し合いでもして、足並みを揃えたのではと疑いたくなります。

 特にドコモは今まで、比較的使い勝手のいいSIMロック解除サービスを提供してきたにも関わらず、auと同等のサービス内容に変更したことで、結果として大幅な改悪となっています。しかし、いくら改悪しても、他社と同程度なので、問題になりにくいわけです。だって消費者は(MNOしか見ない限りは)3社しか選択肢がないわけですから。

 移動体通信は寡占業界であり、このように足並みを揃えてよく似たプランが登場することはよくあります。特に今回は起きたのは、他社の発表を見てから真似をした「後出しジャンケン」ではなく、同じ骨子のサービスが同じ時刻に発表されたという奇妙な現象です。SIMロック解除のような重大事案は、特に時間をかけて考案するものであり、他社の発表を見て数分で決められる性質のものではありません。ここに弁解の余地があるのでしょうか。

 自由競争とは一体何だったのか。携帯業界の寡占企業2社がこの体たらくでは、モバイルを我が国創世の切り札と位置づける「モバイル創世プラン」の先は明るいとは言えないでしょう。

そもそも期間設定に妥当性がない。

 確かに改正ガイドラインでは、事業者がSIMロック解除に応じるまで、解除制限期間の設定自体は禁止されていないと読める一文があります。以下、総務省の改正ガイドラインより。

ただし、端末の割賦代金等を支払わない行為又は端末の入手のみを目的とした役務契約その他の不適切な行為を防止するために、事業者が最低限必要な期間はSIMロック解除に応じないことなど必要最小限の措置を講じることを妨げるものではない。

 要は、代金踏み倒しや端末転売を禁止するため、最低限必要な期間は応じない「など」の手法で、対策は否定しないということ。そういう読み方をした上で、都合のいいように最大限拡大解釈した結果が、ドコモとauの「『解除制限期間』で半年間、SIMロック解除を拒否する」というものでしょう。

 この一文は、代金踏み倒しや端末転売を防止する目的においてのみ、「解除制限期間」が認められているとも読めます。支払い履歴等に傷のない一般ユーザーのSIMロック解除まで拒否できることは目的外と言えるのでは?

 むしろ、端末代金を払わず踏み倒すようなユーザーに対しては、2年経過後もSIMロック解除に応じないべきであり、現金一括払いで端末代金を支払った優良ユーザーに対しては即時にでもSIMロック解除に応じるべきではないでしょうか。

 というのも、分割払いは通常2年、つまり24回です。半年ではたったの6回程度です。つまり半年経過の時点では、まだ18ヶ月も分割払いが残っているわけです。そのようなユーザーにSIMロックの解除を応じるということは、ユーザーが残債を踏み倒して端末を売却、他社や海外で利用されてしまう事態も想定されます。それは明確に「割賦代金等を支払わない行為」「不適切な行為」に該当します。半年という期間の設定では、それらの行為を防止し得ない以上、やはり期間ではなく、純粋に端末代の支払いが完済しているか否かを見るべきです。

 SIMロックが解除されない間、ユーザーの会社間での流動性確保と公平競争が阻害され、ユーザーの海外渡航時の通信手段が制約されます。ドコモやauのガイドライン解釈に基づいたSIMロック解除拒否を認めると、これらのデメリットを半年という長期間にわたって生じさせることになります。これは「最低限必要」「必要最小限」の範囲を逸脱しているのではないかと思います。しかも半年間という期間設定では、期間設定の根拠となるべき「不適切な行為の防止」は達成できないのです。

 このことから、半年間の「解除制限期間」は妥当性を欠き、到底認められないものと考えます。

総務省が取るべき対応。

 先ほどガイドラインから引用した、最低利用期間を容認し得る一文には、実はとても小さい文字で、補足事項があるのです。

5 「ICT サービス安心・安全研究会報告書(案)」において導入の方針が示された初期契約解除ルールが将来的に導入された場合の、 同ルールにより通信サービスの契約を解約した利用者への対応については、 事業者の体制整備の状況も踏まえ、別途整理する。

 SIMロック解除をどう実施するかは携帯キャリアに裁量権がありました。ガイドライン改正の当時、その具体的なまだ内容は決まっておらず、また「初期契約解除ルール」も具体化されていませんでした。

 最近閣議決定された「初期契約解除ルール」は8日以内の無償解約を定めています。つまり総務省が、8日以内に回線を解約した場合については、最低解除期間関係なく、消費者のSIMロック解除に必ず応じなければならないことを定めたルールを作る、という対策を取れる余地があるわけです。議論の経緯を考えれば、そうせざるを得ないのではないでしょうか。

 また、総務省はSIMロック自体について、適正性・合理性はなく、利用者の利便性を妨げる、競争阻害要因として公式に位置づけています。今回、総務省はガイドラインの改正にあたり、携帯キャリアがガイドラインを逸脱してSIMロック解除を履行しない場合を、電気通信事業法第29条の「業務改善命令」の発動要件(=「適正かつ合理的でないため、電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがある」)を満たすとの公式見解を明らかにしています。

 このため、ドコモとauの半年間SIMロック解除を拒否する姿勢に対して、法的実効性のある「業務改善命令」の発動を総務省が示唆する展開は可能性としては否定できないわけです。

 私は、政府が民間への介入を控え、市場原理に任せることが最もサービスを向上させ、消費者にとって利益になると考えています。しかし寡占化した移動体通信業界は、前述した通り健全な公平競争が行われているとは言えない部分が多々あります。仮に総務省が強制力をもって、各キャリアの新しいSIMロック解除サービスの内容を覆したとしても、私は総務省の行動を支持します。

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