「Kindle便利だけど、何がダメなんだろう?」というツイートに対し、読者からの大反響があったのをまとめたのが以下の記事です。
これに対し、実話怪談作家/編者の加藤AZUKIさんが「既に解消されている部分が結構ある」と言及。
なぜ電子書籍は海賊版を駆逐できないのか?電子書籍のダメなところまとめ – すまほん!! https://t.co/6Ec9kf2maJ @sm_hnさんから
「電子書籍のダメなところ」として挙げられてる前半項目は、既に解消されてるものが結構ある気がする。ので、ダメと思ってる人の情報が更新されないまま古い可能性高い。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
興味深い内容なので許可をいただき、一連のツイートを本記事にまとめさせていただくことにしました。
Index
発売が紙より遅い
発売日が同時の大手も。筆者・編集者の入稿次期の遅さに起因した電子書籍版の発売日の遅れもあるのだとか。
【発売が紙より遅い】
講談社、角川系列などは、最近はほぼサイマル配信になっていて、紙と電子は同日発売。(まあ、都内で印刷所に近いとこなんかが、発売日前に紙が店頭に並ぶ、という例外はなくもないが)
竹書房もほぼ同時配信で、これは今後他社も解消されていくと思う。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
これまで電子本の発売が紙より遅かった理由は2つあって、
1)紙の収益を圧迫させないため、電子の発売を遅らせていた
2)電子のデータオーサリングが紙の出版より遅れた
など。(1)はサイマル配信が標準化していくなかで消えていく。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
(2)は「オーサリングするオペレータの不足」と「著者・編集者の入稿時期の遅さ」に起因する話で、電子本が悪いんじゃなくて原稿が遅い作者が悪いのですヽ(´∇`)ノ
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
ラインナップが少ない
発売当初は電子版の予定がなかった昔の本を電子化する場合、売れなかった本は、電子化しても回収のアテが見込めないため、電子化のコストを事前に用意できないことから電子化されないという現実もあるようです。
【ラインナップが少ない】
これ、昨今では新刊は紙と電子が同時刊行になってるので、主に「過去刊」か「電子化が立ち遅れている中小出版社」の話かとは思う。
過去刊についても、著者の合意を取り付けた上で電子化されてるものもある。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
それでも電子化されないものはというと、「電子化を前提とした編集が行われていなかった本」は、新たに電子化のための作業をしなければならないが、「売れなかった本はそのためのコストをなかなか掛けられない」という悲しい現実のため(´・ω・`)https://t.co/BOIDAeikpW https://t.co/szMuSqFw4A
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
価格が安くない
ちょっと安めの設定だよとのこと。
【価格が安くない】
現在、電子書籍の価格は同じ内容の紙の本より数十円から百円の間くらいで安めに設定されている。
黎明期は「紙の本の収益を圧迫しないため」ということで、電子のほうが高めに設定されていた時期もあるけど、それはもう古い価格設定かと思う。
定額読み放題もあるし。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
また、電子書籍について、「製本、流通、補完コストが掛からないのに、紙とほぼ同じなのはずるい」みたいな意見を偶に聞くけど、サーバの維持管理コスト、管理システムに拘わるITエンジニアのコストが無視されていて、そこんとこどうなのと思う。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
「KindleはAmazonが取り過ぎ」みたいな批判もあったけど、これも誤解で、「同じ値段なら紙より電子のほうが著者の取り分(印税率)は高い。単価を下げても著者の取り分は電子のほうが大きくなる」(同じだけ売れるなら)。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
電子の場合の「中間業者」というのは、流通・小売店ではなく、どちらかというと「著者ではないがデータ製作に携わる実務者」のほうだと思うよ。ここらへんの取り分は印税率でなく買い切りだから。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
無料じゃない
無料も読めるものもあるよとのこと。
【無料じゃない】
電子書籍のダメなとこで、これ挙げてくる人は、電子書籍じゃなかったとしてもあらゆるサービスを無料で寄越せと言うと思うので、電子書籍だけの「ダメなとこ」と呼ぶのには無理がある。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
そして、「無料で読める電子本」は別にないわけじゃない。
マンガ図書館Zしかり、各社がWebで展開している「無料Web連載」しかりで、見つける努力をしていない人が、既にあるサービスに気付いていないだけ、と言えなくもない。
「鋼の錬金術師」は、今ガンガンオンラインで無料連載中やで。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
決済手段?
おっしゃる通り。保護者の皆さん、よい子のみんな、Amazonギフトはコンビニでも買えるんですよ。
【決済手段?】
「電子書籍の決済手段が、クレカしか使えないのは問題」について言えば、KindleだったらAmazonの利用はクレカ以外(電子マネーの購入)で使える。これは親の目には見つからないぞヽ(´∇`)ノ— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
電子化の品質が低いことがある
サーバーなどのコストの問題も。
【電子化の品質が低いことがある】
あー、これは電子書籍の課題のひとつではあるけど、品質を最上にすると、
1)ファイルサイズが大きくなりすぎるので、保存サーバの負担が増える
2)データ転送に掛かるパケットサイズも大きくなり、転送コストが跳ね上がる
などの副次的問題が出てくる。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
書き込みが物凄い作品なんかは潰れちゃって読めないとかネームが読めないとか(銀魂なんかがそう)が起きてくることもままある。
ただこれは、閲覧端末側である程度解消できる場合もある。
タブレットPCで「1920×1200」のものと「2048×1536」のものだと自ずと表示精度は変わってくるし。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
あと、「図鑑」や図説の多い文字本、文字をテキストデータ化(リフロー化)しないでスキャン(レプリカ)した本を、リフロー化しようとすると、結構な「新たな編集コスト」が掛かるので、それの回収が見込めない本は電子化が後回しにされるのは今後の課題。
https://t.co/SElYpID0MO— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
複数書籍を開けない
【複数書籍を開けない】
電子書籍で複数の本を同時に開く必然はかなり特殊なケースなんじゃないのかしら。内容を対照するとかには不向きだけども……「自分の読みたい頁をサッと開けない」については、目次表示、ページ番号入力でサッと移動できるので既に解消済みだと思う。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
「電子」書籍ならではの表現が欲しい
アイデアとしてはあったとのこと。
【「電子」書籍ならではの表現が欲しい】
音を付けろ、とかそういうの。これはこないだも触れたけど、「ファイルサイズが大きくなる」「製作コストが跳ね上がる」既存のノベルゲーやラジオドラマなどとの差別化が困難な「金が掛かるけど半端なコンテンツ」になるので消えていった徒花アイデアです。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
ちょっと関係ないですが、そういえば英語音声を収録したファイルのダウンロード権がついた電子書籍ならありましたね。
電子版ならではの展開の不足
もっと増えるとファン的には嬉しいのかもしれません。
【電子版ならではの展開の不足】
スピンオフやサイドストーリー、ボーナストラックとしての書き下ろしの追加などは、最近の電子本では割と普通に見かけるので、これも解消されてる指摘だと思う。
無料配信しろとか格安にしろとかに対する反論は、前述してるので割愛。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
複数サービス乱立、横断できず
競争の末の淘汰しかなさそう、とのこと。
【複数サービス乱立、横断できず】
これは、例えばKindleと角川とeBookJapanとが横断できない、とかの類だよね。
これは、「VHSとβ」みたいな話なんで、最終的に勝ち残る超大手以外が全て淘汰されるまでは収まらない気はする。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
アプリの使い勝手の悪さ
漫画セリフの検索機能を実現するには作者負担も増える可能性があるようです。
【アプリの使い勝手の悪さ】
KindleのUIはクソ。それは認める。
それはさておき、「アプリ型電子書籍」というのはほぼ消滅しつつあるので、そっち方面の不満については解消されてる気はする。
「マンガの台詞検索」とかができないのは、ネーム部分がテキストデータ管理されてないから。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
それができないのは、繰り返しになるけど「リフローデータを作るのには手間が掛かるから」で、これを達成しつつ紙と電子の発売日を同時にしろ、ってなると、「著者/作者は入稿を一カ月は前倒しにしろ」になると思う。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
専用端末の使い勝手
iOS版でアプリ内で書籍購入できないのは、これはApp Storeの仕様のはずです。
【専用端末の使い勝手】
Kindleの場合で言うと、専用端末(Kindle端末)からは直接電子本が買える。AndroidOS版も同様。iOS版のみ閲覧アプリから直接買えないんだけど、あれはApple側の制限だったかと思う。
それこそ、VHS/β戦争的なアレの余波。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
友達との回し読みができない
要望の多かった「友達との回し読み」は、近い機能を実装しているサービスもあるようなので、他にも広がっていくことに期待するしかなさそうです。
【友達との回し読みができない】
まあ、「回し読みによる機会損失を減らす」のが電子書籍のメリットだからなあ(^^;)
一方で、「友人へのレンタル(一時的な購読権の貸し出し)」や「他人に本を贈る」などのサービスが実装されてるケースもある。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
「中古本市場がない」云々については、「著者(出版社)に正当な収益が届かない状態の中古本流通を抑制する」のが電子書籍のメリットなので、「新刊買って下さい」もしくは「セールを狙って値引きされたの買って下さい」と言うしかないんだよなあ、これ。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
所有権がない・DRM
DRMフリーのKindle書籍もあるそうです。(一体どれぐらいあるんでしょう?)
【所有権がない・DRM】
Kindleの場合は「購読権の貸与」という形であることになってる。
一方で、「PDFデータをKindle端末、Kindleアプリで読む」ことは可能。DRMフリーのものはKindleで買ってKOBOで読むってのもできたはず。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
ストアが潰れる、取り扱い停止などのリスク
現状では、潰れなさそうなところを選ぶしか無い……とのこと。
【ストアが潰れる、取り扱い停止などのリスク】
これは目下、電子書籍の最大のリスクではあって、対応策は「一番潰れなさそうなところを選ぶ」にならざるを得ないとは思う。
僕は、携帯キャリア会社提供の電子書籍サービスを使わないようにしてるのは、ここらへんの懸念が払拭されないため。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
この「潰れない」という観点だとAmazonは強いですよね。
企業の信用、共に表現の自由守れるか
潰れはしないけど、配信するアイテムの選別など、今後問題を起こしてしまう可能性がありそうなのもAmazonだと思います。
【企業の信用、共に表現の自由守れるか】
ここらへんは特にKindle(Amazon)に向けてのことだと思うけど、配信会社が自社を守るために、配信するアイテムを選別するということは、Kindleに限らず今後起きてくると思う。
そうなると、「絶対に揺るがないサイトを選ぶ」か「紙を買う」になる。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
この辺りは、「百冊の本のうち一冊でも非対応ならば残り九十九冊の利便性を捨てる」か、「九十九冊はサービスを活用して電子で読み、非対応の一冊は紙で持つ」などのように、利用者側がケースバイケースでチョイスしていくことになるとは思う。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
その他
何にお金を払うのか、電子書籍のどういうところがいいのか、という話。
……と、ここまで、https://t.co/6Ec9kf2maJ
にあった「電子書籍への不満」についての補足、みたいな。
「タダで読みたい、タダでよこせ」
これについてはもう付ける薬がないんだけど、「タダで読める本はあるから、それを探して選んでくれ」って言うしかないよね、これ。https://t.co/blosIDN3HJ— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
ただで読める無料Webマンガをチェックしていった結果、「Webで全部読んでるんだけど、コミック(電子)を買って著者にお布施しないと気が済まない作品」とかに出会ってしまうので、結局「何のために本に金を出すか」「本は金を出すに価する娯楽か」と折り合いがつく人だけが、電子にも金出すと思う。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
あと、どんなものでもそうだけど量をこなすと目が肥えてくるので、「無料で読めても読みたくない」ものは、すぐに区別付くようになるヽ(´∇`)ノ
そういう目が育ってくると「これはずっと手元に置きたい」「これはいつでもすぐに取り出して読めるようにしておきたい」とかのランク付けがされるように。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
「探す手間を省いていつでもすぐに読める」ということにコストを掛け、「何度も読み返したくなるもの」にコストを掛け、「そういうものを作った著者に、何がなんでもお布施を投げつけるために、金を出して買う」という行動にはなる。
結局のところ、作者へのリスペクトと自分が試される気はする。— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
東日本大震災のとき本棚の一部が書籍流で崩れて、数年間アクセスできなくなった棚があったんだけど、電子だと書籍流の心配が無いというのは、防災上大きなメリットだと思うよ!ヽ(´∇`)ノ
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) 2018年4月27日
以上、加藤AZUKIさんのツイートでした。掲載を快諾していただきありがとうございました。