カナダでのHuaweiのCFO逮捕で新展開を迎えた米中貿易戦争。中国でまた新たな動きがありました。
中国共産党系メディア「環球時報」の英字版にあたる「GLOBAL TIMES」は、大連ラジオテレビ局運営のウェブサイトrunsky.comを情報源として、カナダ人のRobert Lloyd Schellenberg氏が、遼寧省の高等裁判所にあたる高等人民法院によって麻薬密輸容疑で裁判にかけられると報じました。
政府当局は、この人物がカナダ市民で間違いないことを確認したとのこと。
仮に密輸した薬物の量が公開されれば、驚くべき量になるとしています。
中国刑法では1000グラム以上のアヘン、50グラム以上のヘロインやメチルアニリンを密輸したものは15年の有期懲役、無期懲役、死刑に処すると定められています。
中国では2009年12月、イギリス人実業家Akmal Shaikh氏を、4030グラムのヘロイン密輸で死刑執行しています。
今回、公開されれば驚くべき大量の薬物であることが判明する、多量の麻薬密輸は死刑となる中国刑法を解説した上で、過去の外国人実業家の死刑例を、まとめて一つの記事内で丁寧に紹介してくれたGLOBAL TIMESは、記事冒頭で紹介した通り中国共産党の息の掛かった政府系メディア英字版であり、直接公式に人質であると表立って言えるはずもない中国政府を代弁し、死刑を外交カード化することを対外向けに暗に示唆していると読み取ることもできます。
中国外交部は2018年12月27日記者会見で、記者から本件について質問されると、「事件の状況は承知していないが、外国人に関しては担当当局が速やかに領事館に通知を行う」と述べ、あくまで事態を把握していないとの立場を表明しました。
2018年12月、他にも元カナダ外交官Michael Kovrig氏とMichael Spavor氏、2名のカナダ人が、「中国の国防に害を与える活動に従事した」疑いで逮捕。このほか、カナダ人女性Sarah McIver氏が違法就労で処分。これら3名は親中派であることから、カナダ世論に揺さぶりを掛けるための芝居との見方もありましたが、今回、新たに拘束されたRobert Lloyd Schellenberg氏の素性はまだ不明です。
中国当局は、Michael Kovrig氏に弁護士への連絡を許可せず、朝と夕方の休憩を許可せず、さらに夜間の消灯も許可せず、24時間明るい部屋で睡眠をさせないと、匿名の情報源をソースとしてBBCが報じています。もし事実であれば、重大な人権侵害・虐待行為が加えられていることになります。
しかし弁護士と接見できないのにどのように情報が伝わったかを考えると、この情報自体、中国政府が海外メディアに意図的に掴ませた欺瞞情報でないという保証はありませんが。
これらカナダ人の相次ぐ拘束は、タイミング的にも当然ながらHuaweiの孟晩舟CFOのカナダでの拘束への報復措置、事実上の交換人質ではないかと見られています。
カナダ邦人複数名を人質、外交カードとして孟CFOの米国への身柄引き渡しを阻止し、身柄解放と帰国を迫っている中国。やりすぎ感も出てきたアメリカに対し、中国政府側にもやりすぎ感が漂ってきた米中貿易戦争は、一体どのような帰結を見せるのでしょうか。冷静に見守りたいところです。