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「私的録音録画補償金、今期に結論を」文化審議会著作権分科会が開催

 2019年7月5日、文化庁第54回文化審議会著作権分科会(第19期文化審議会著作権分科会 第1回)が開催されました。

 まず文化庁側の挨拶。昨年度の著作権分科会は違法ダウンロード拡大等を議論したが法案は国民の理解を得られず提出を見送ったとし、今後の法案提出の具体的内容とスケジュールは立っていないとしつつも、海賊版の被害は深刻であり早急な対策が必要。実行的な対策を講じつつも国民の正当な情報収集を萎縮させない、この課題を両立させていくことが重要としました。

 知的財産推進計画2019等の政府計画に基づき、文化庁文化審議会著作権分科会事務局としては、検討課題案として、ネット同時配信時の著作隣接権に関する在り方含む肖像権などの権利処理の円滑化、研究目的に係る権利制限規定の創設、国境を超えた海賊版への権利行使に関わる課題の分析とノウハウ整理、授業目的公衆送信補償金の額についてなどを挙げました。

 この分科会において重要なことを確定し、今期審議、各委員会の議論へと進みます。継続検討課題として、私的録音録画補償金制度に代わる新たな検討措置が挙げられました。

渡辺委員「なんとかして今年度中に結論を出していただきたいとの思いが強くある。5月の著作権協会国際連合の総会が日本で行われ、決議の一つが私的録音録画補償金制度について早くEU並にしてほしいという内容」「イタリアの関係者曰く、iPhoneなどスマホについてイタリアでは5ユーロ(約600円)の補償金を徴収している。日本の現状の私的録音録画補償金制度は適用対象の複製機器・媒体がDAPやMDなど、ずっと古いまま来ている。PCやスマホ、CDコピーした媒体にも適用をお願いしたい」

 同委員は、音楽に特化したような機器の基準として、例えば「ハイレゾ音質で聞ける」と謳うデジタルオーディオプレイヤーは明らかに音楽に特化しておりMDウォークマンなどと同様に補償金対象として扱うべきとしました。また、個人の意見として、PCについてはWindowsならメディアプレーヤー、MacならiTunes、そういった音楽ソフトが入ったPCと入っていないPCを選択、iTunesをMacに入れて音楽複製をするなら補償金を払うという独自のアイデアを披露しました。(とにかく案を出して具体的に話を進めるべきという主旨)

 また、レンタルショップは当時の半分とはいえまだまだ存在し、CDをコピーして利用、周りに渡している人は多いだろうとの周囲の実感からの見解を話し、やはり早急に結論を出すべきとしました。

高杉委員「昨年度、小委員会で私的録音録画補償金については2つ大きく整理。今の制度の録音録画専用機器の漏れの確認。録音に関して、PC スマホの利用実態があることにどう対処するか。この2つを分けて議論。それが今期のステージと認識」「社会的コストを抑えて複利最大化を図る制度として、再構築できるか、という議論を今期ぜひしていただいて、結論を出したい」

椎名委員「(私的録音録画補償金について)平成18年から見直し検討が始まり、当時PCからのリッピングができるということでSCMS、コピー保護技術を前提とする補償金制度が成り立たなくなっていると議論が始まり、十何年も議論をしている。コンフリクト、意見対立をどう考えるか。どれが最適な解なのか、政策的に検討し、決定していかなければ、延々と議論することになりかねない。今期はぜひ解決し一定の解をと強く思う」

 初っ端から委員3人が私的録音録画補償金制度について発言する形となりました。

 瀬尾委員は、著作者が自らの作品が転売されるごとに作品の売価の一部を還元される「追及権」について、欧州その他外国との整合性もあり、これを調査や検討すべきとしました。

 また、同委員は海賊版対策問題について、去年議論を尽くしたが実現に至らず、様々な形で現在進行中とし、「より慎重な議論が必要と承知、この問題は出版社と漫画家にきちんと立法すべき事実を提出していただきたい。これがない限りエビデンスがなければ停止する。両者の強い後押しなしにこの議論を進めることは難しい」としました。

 椎名委員は、新たな課題であるネット同時配信と隣接権についていよいよNHKが開始するため喫緊の課題と指摘。「見直しにあたって権利保護と円滑化のバランスが重要。著作隣接権に関する在り方という観点から言えば、同時配信は国際条約に定める公衆伝達にあたる利用。だが、日本の著作権法ではレコード公衆伝達について、同時配信にかかる許諾権をレコード制作者に事前に与える一方で、レコード演奏伝達には無権利となっており、いささかアンバランス。バランスの取れた議論をするためにも、同時配信だけに着目するのではなく、公衆伝達全体との関係や諸外国の制度状況をフォローしながら真摯な議論を進めていただきたい」

 龍村委員は「公の伝達権利は、著作権分科会では手がついてない分野。知財計画上は、同時配信のテーマで公の伝達権はハイライトされていないが、聞くところによると、日本EU経済協定の中でも取り上げられていて、レコードの伝達権は協議事項。政府レベルでの取り決めがあるという背景もあるようで、大きなテーマだろう。性質の在り方が、放送の取り扱いとリンクしてくる可能性もあるのではと感じる」とし、ネット同時配信に関する検討が広いテーマになることを指摘しました。高杉委員も公衆伝達一般の議論の場はどこかで必要だとし、適当な場で別途検討すべきとしました。

井上委員「私的録音録画。録画は、これまでは放送に関してコピーワンスやダビング10でよかったが4Kになるとそのまま録画すればかなり高質なファイルが残る。パッケージ、映像ソフト業界には重大。きちんと議論していただかないと、パッケージ業界が存亡の危機になる」

井村委員「(海賊版対策の)エビデンスに関して、出版業界で引き続き検討。出版界においては日々莫大な損害が発生している。資料には総合的な対策とあるが、あまり総合的すぎるとスピード感が落ちることを危惧。限定的で構わないので前に進めるルールづくりを」

 これについて分科会長は既に取りまとめ済みの事項であるとし、事情の変化があればと補足しました。

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