ユーザー動向調査に強い研究機関MMD研究所は、都内にてQRコード決済利用者と興味者の座談会を開催しました。QRコード決済についてどう考えているのか、一般ユーザー目線の声を聞くことが出来ました。
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QRコード決済利用者の声
QR決済を始めたきっかけは?
早坂さん「100億円キャンペーンのCMをみて始めた。使えるお店が会社によって違うので、Origami Payや楽天Payなど利用サービスが増えていった。利用頻度はPayPayが一番高い。還元率のほか、ドラッグストアとスーパーでも利用できるため」
稲田さん「楽天PayとメルペイとPayPay。きっかけはPayPayがニュースになった時。ポイント目当てで楽天Payも。メルペイはセブンイレブンとのキャンペーンの時に。QR決済は今はそれほど使っておらず、Suicaの方が便利」
やはりポイント目当てというのは大きいようですね。
中尾さん「LINE Pay、PayPay、AliPay。銀行をアメリカで作っていて、国内でクレカが作れなかった時にLINE Payを申し込んだのがきっかけ。仕事で必要な時にPayPay。AliPayは中国で出張の時に必要だったため。メインはAliPay」
検討中の二人、興味を持ったきっかけは?
青山「世間を騒がせてる感じのPayPayのキャンペーン。実際の店で使える店舗が増えてきたので、自分もそろそろと思っている」
西条「最初は百億円のキャンペーン。その時に通っていたマッサージ屋さんで導入されていて、使ってみようかなと思った」「LINEを使ってるとLINE Payの、メルカリだったらメルペイのクーポンが出てきて『きっと安いんだろうな』と思うけど、やり方がよくわからない」
キャンペーン情報どこから入ってくる?
西条「テレビで宮川大輔のCMや、LINEニュースのところに出てきて興味を持った」
早坂「テレビが多い。口コミも」
青山「テレビのCMがインパクトがあるので知るきっかけになる。楽天のサイトで出てきたり、メルマガなどで目に入る」
稲田「PayPayは、社会的にニュースになっていたのもあるが、Twitterで買い物をした報告がタイムラインに流れてくるので、やってるんだなと」
中尾「PayPayはTwitterでトレンド上位に来ていた」
PayPayのキャンペーンは、1回目は全員が認知していた一方、間に合わなかったとのこと。テレビとツイッター、大きいですね。他に知ってるキャンペーンとしては、メルペイのセールが認知度が高く、5人中4人が知っていました。
魅力のあるキャンペーンは?
中尾「ポイントや現金が魅力。AliPayで1000元(1万円)貰った時は嬉しかった」
早坂「10人に1人、1000円まで戻ってくるキャンペーンに当たった時には『よっしゃ!』と嬉しかった」
飯田「良くなかったのがメルペイ。メルカリのポイントが貯まるがそんなにメルカリで買い物しない。ローソンでは使えるらしいが、よく行くセブンイレブンだと使えない。楽天はいろいろなキャンペーンで楽天ポイントがガンガン溜まるので嬉しい」
西条「使いたいと思ったのは100億円とかで、リアルに現金が手元に入る方がわかりやすい」
青山「やはり自分のよく使うポイントで還元してくれる方が嬉しい」
QR、周りは使ってる?
青山「同世代はほとんどやっていない」
中尾「海外はみんな使ってるが、日本人の友達だとあまりいない」
早坂「LINE Payで友達に1000円送れるというのがあったが、その時の実感から推測するに、たぶん2割程度しかやってない」
稲田「キャンペーンのときだけ。QRは面倒、Suicaなどのタッチのほうが楽。QRは出してタッチしてもらうので、店員さんの動作が必要なのが手間。店員さんも最近は慣れてきたが、混んでる時はちょっと」
周りにやっている人は意外と多くないという実感のようです。
自分は日常利用してる?
早坂「使える店だったら使うようにしてる。キャンペーンがなくても3%ぐらい返ってくるなら、クレカとかよりは多少得かなと。ドラッグストアでは全部PayPayで。1年ぐらい買いだめ。コンビニは店舗によって使えるのが違うので使えるサービスを使ってる。キャンペーン、還元率が20%の時はむしろ使える店を地図で探して行く。ケチなので(笑) PayPayが20%の時は毎日。仕事に行ってお昼とかもPayPayが使えるコンビニで買うか、使えるレストランを探して入る。」
中尾「週2~3回だが、『この店ではこれ』という使い分けはしていない」
稲田「月に1~2回。マクドナルドで、楽天Payのマークが合って、混んでいなければ使う。積極的には使っていない」
QRコード決済の良いところ・悪いところ
中尾「現金を持ち歩くよりはセキュリティーにおいて安心感はあると思うが、まだ浸透していない。いちいち画面を出すのが面倒」
稲田「楽天ポイントは楽天モバイルの引き落としに充当できる。月額2500円の楽天モバイル代金がポイントで支払いできる」
西条「お財布持ってなくても、財布にあまり現金入ってなくても買えるのが良い。それぐらいかな」
非利用者はQR決済をどう使いたい?
青山「コンビニ、スーパー、ドラッグストアで使いたい」
西城「クレジットカードみたいな感覚で使いたい。子供がいると現金出すのも手間なので。クレジットカードで終わらせるのが楽。QR決済も簡単なら使いたい」
現金を使う場面は?
青山「ない。現金は、支払い全体の2~3割ぐらい。現金が使えないとICカード」
早坂「多少使う。現金しか使えない店とか。現金は物騒だと思う、財布を無くしたこともあるので」
中尾「現金は1ヶ月に1万円あれば十分。小銭が嫌い。お釣りを計算して何十円、何円と出すのが嫌。少額の硬貨が貯まるのは重くてすごく嫌なので、クレジットカード・QR・ICでいい」
稲田「ランチ、現金の店では現金。夜、飲みに行った時の複数人での精算でも使う。ただ日常的なスーパーやコンビニはSuica。オートチャージ機能付きSuicaなので、楽。財布が大きくて胸ポケットに入れてるが出すのが面倒というのもある。Suicaは、iPhoneケースに入れているので楽」
早坂「現金は物騒。スられるリスクがある」
西条「面倒だけれど八百屋や魚屋では現金を使う」
QRコード決済は、クレカや電子マネーと比べてどう?
中尾「クレジットカードならどの店に行っても大概対応しているが QRは対応店舗が少ないのがネック。埼玉のコンビニで『QR決済で』と言ったら、怪訝な顔をされた」
早坂「電子マネーと比べて、ヤフーカードからの引き落としでPayPayからポイントが得。アプリで履歴を確認できるから、使い勝手は同じかなと」
稲田「電子マネーは iDもApple Payも一通り使っているが、Suicaが一番楽。JALビューSuicaカードならポイントが貯まるので楽しい」
早坂「使い勝手は、PayPayが一番自然に使える。結局クレジットでも、セブンでカードを出してクーポンはこれで……と手間もあるので、(QR決済で出すのが面倒とかは)あまり気にしていない」
なぜQR決済使用まで至らないか?
青山「興味はあるがICカードで困らない」「メルカリだったら使わないサービスなのでポイントが得られても意味がない。スーパーはイトーヨカドーをよく使っており、カードもセブンカードを使っているので、自分が使うサービスが一番いい」「楽天だとカードが使えるので良さそう。楽天はそんなに好きではないが、便利さではかなわない。楽天銀行の口座も持っているし、株も楽天証券でやっているので」
中尾「(同意して)還元率や便利さを考えると行き着く先は楽天。買い物も楽天でやっている」
西条「QR決済、リアルに使い方がわからない(笑)。登録方法も、使える場所も、ネットで調べるほどにまでいってないとわからない部分があり、そこが壁。今回の座談会で、銀行から引き落とされるのか、カードからもあるのか、今知ったぐらい。わかりやすいものがあればやるかもしれない」
早坂「PayPayは当初不正利用が問題になっていたから心配だったが、今は大丈夫らしいということで使っている」
中尾「QRコード決済は対応店舗が異なるのが面倒。クレジットカードやICの方がいい」
早坂「PayPayはマップをみて使用している」
西条「QRコード決済自体を知ったのがPayPayが最初。会社名的に『何?』だった。登録しちゃっていいのかぐらいに思ってた。LINEは自分は信用してるので、LINE Payがキャンペーンをやってたら使ってたかも」
稲田「店のPOSレジをiPadでやるようなものが増えてきたが、基本こちらの動きだけで完結するほうがやりやすい。Suicaはタッチするだけ、クレジットカード払いも自分でさして自分で番号打って完結。もしQRも自分だけの動作で完結できるようになれば使う。今は黎明期だがそのうちどこでも使えるようになれば悩まない。環境が整えば使う」
座談会を終えて
非利用者の気持ちの変化
西城「もっと調べてみようと思った。やるならメルペイかな?」
青山「自分の世代ではやってないので、他の世代の話感があったが、今後スタンダードになるならそろそろ利用する決断をしたい。LINE Payか楽天のどちらか」
他に使ってみたいものは
中尾「Amazonフレッシュ。入って出ただけで会計できる」
早坂「新しいものが出たらとりあえず使う。新しいものはキャンペーンがあるから楽しい」
非利用者による体験
非利用者によるQRコード決済の体験も催されました。
QRコード決済では、コードを店員に読み取ってもらう場合と、自分で店舗のコードをスキャンする場合の、2種類があります。後者は、やはりカメラを向ける・数字を入力するといった作業をユーザーが行う必要があることから、体験してもらったところ、座談会の中で話題になった「コンビニ等で列で並ぶのが申し訳ない」という部分を理解できたとのこと。しかし前者、つまり店舗側がスキャンする方式では、時間のロスはかからなそうとの感想を抱き、利用したい意向を示していました。
総評
QRコード決済は認知度が高くとも、意外と日常利用まで使い込んでいる人はまだまだ少なそうで、その理由もいくつか見えてきました。
やはりまだまだ利用店舗が少ない、利用できるサービスが異なることも挙がっていましたが、何よりQRコード決済の手間。アプリ起動や操作が手間の上に、店員さんが慣れていないと時間がかかりレジが混んでしまうこと。Suicaやクレジットカードを使い慣れているとなおさら強く感じる不満点でしょう。
対応店舗が増えることはもちろん、いかに決済までのステップを減らすか、?現状でもよくやっているアプリもあるとは思いますが、アプリ側の対応も不可欠でしょう。その辺、LINEはよくやっていると思いますけどね。LINE Payは、決済画面へのショートカットを置くことが可能で、決済機能単体のLINE Payアプリも用意しています。
そもそも、QRコード決済の意義は「エコシステム拡大」と「店舗側の導入コストの安さ」です。LINEやメルカリの強力な経済圏の下地があって、初めてポイントが使えて便利、となるわけで、こういったバックボーンの弱いQRコード決済は淘汰されていく予感がします。
また、PayPayは、SoftBank・Yahoo!とのシナジーを活かしつつ、「導入コストの安さによって、Suicaやクレジットカードに非対応の個人商店・中小事業者に拡大する」という点を理解してガンガン営業しているのも強いですね。別にコンビニやドラッグストアだけの話だったら、今回の座談会のように「Suicaやクレジットカードでいいじゃん」で話が終わりです。コンビニやドラッグストアはあくまで前哨戦であり、そうした日常利用店舗で貯めたポイントをもって、ユーザーが個人・中小事業者の店でもQRコード決済を日常的に利用する、そういう展望があって然るべきで、おそらくそれを認識しているPayPayは最後まで生き残ると筆者は予想します。その点で言えば強力な楽天経済圏を持ちつつ、MNO参入も果たす楽天にもポテンシャルはあると言えるでしょう。SoftBank(とそのサブブランドY!mobile)や楽天モバイルが、オフラインの販売チャネルで訴求や使い方の解説をしてきたら、他の決済サービスよりも飛躍するのではないでしょうか。
筆者の周りにもキャッシュレスを実践しているガジェッターはいるのですが、彼らは本当に最小限度のカードしか入らないような財布で、現金をほぼ持たずクレジットカードで生活しています。キャッシュレス非対応の店は入らないとのこと。筆者自身は「個人経営の喫茶店や飲食店、ああいうところで本物を探すのも愉しみではないのか」と思っているので、abrAsusの薄い財布で一応現金も持ち歩いています。個人・中小事業者にまでQRコード決済が浸透普及すれば、もっと身軽に外出できそうです。
QRコード決済は、わかりにくさや手間はあるものの、座談会でも言われていたように、お得で楽しい面もあり、そしてなんだか難しそうに見えて、使ってみると案外簡単だったりもします。1つのQRコード決済サービスを使うことができれば、類推適用で他のサービスも使えそうだなと感じるのではないでしょうか。QRコード決済各社は派手な宣伝やポイント還元による殴り合いも引き続きやったらいいですが、とりあえず使ってみる第一歩をどのように踏ませるか、啓蒙していくかといった点も考えながらサービス展開を考えていく必要がありそうです。