伝音「スマホシェア50%以上」のアフリカ市場に異変。他の中国強豪が総攻撃を開始 すまほん!!

 アフリカ携帯電話市場で2台に1台以上という圧倒的シェアを誇る、中国「伝音(Transsion Holdings)」。中国国内ですら商品を展開していないことから、中国での知名度も高くありません。アフリカ大陸を主要市場とし、従来型携帯電話は1000円前後、スマートフォンも1万円前後という価格設定。

 2019年9月、上海証券取引所STAR市場に上場。「アフリカ携帯電話の王」との触れ込みから、一時は時価総額2000億元にまで膨れ上がりましたが、その後暴落し、今はだいたい半額くらい(それでも2兆円近くなので立派なものですが)。

 「アフリカの伝音」は「アフリカ止まりの伝音」でもあるようです。伝音は東南アジアと南米市場の開拓にも挑戦しましたが、こちらは成功しませんでした。そして本拠地アフリカでも、中国勢との競争圧力にさらされつつあります。

 中国「AI財経社」の論評をお伝えします。 

アフリカで驚異の「50%超え」シェア

 伝音はもともと「山寨機」と呼ばれるパチモノ携帯電話メーカーに過ぎませんでしたが、アフリカ市場での超低価格戦略に全振りし、2019年のアフリカ市場占有率は驚異の52.5%。

 アフリカの多くの地域は経済水準の制限があり、インフラも整備されておらず、通信キャリアも複雑に混乱していることから、現地の消費者ニーズはかなり特殊。国際的大メーカーであるサムスンも、アフリカ市場の特殊なニーズにカスタマイズはしていないのだとか。

 一方の伝音は、早い時期から超低価格、高い耐久性、電池もち半月以上、SIMカード4枚での運用可能な携帯電話をリリースしていました。

 こういった戦略と製品観念は、伝音創始者・竺兆江が中国国営携帯電話メーカー「波導(BIRD)」にいた経歴が関係しているそうです。竺兆江が波導を退社して伝音を設立した2006年、波導は海外携帯電話市場の成長の波に乗り、4年連続で中国メーカー携帯電話海外輸出量第1位になっていました。当時、品質が波導携帯電話最大の武器でした。

(画像出典:pingwest

 伝音は深圳の強靭なサプライチェーンに頼り、やはり製品の品質を武器として、アフリカ人民とのコミュニケーションを取り続けることで、アフリカでの出荷台数トップを獲得、アフリカ市場での先行者利益もあるところ。伝音傘下の3大製品ライン「TECNO」「itel」「Infinix」も「アフリカの消費者好感度最高ブランド」といった称号を連年獲得しているといいます。

「ローカライズ」「カスタマイズ」で勝ち取った成功を守れるか?

 「アフリカの伝音」ですが、一方で伝音のアフリカ依存も深刻で、2020年末時点での伝音の地域別営業収入を見ると、アフリカが60%を占めています。

 伝音はアフリカでの経験からローカライズ、カスタマイズこそが、アフリカ市場を守る「城壁」だとしていますが、あるスマホ業界関係者は、伝音は確かにアフリカでは先行者としての強みがあるが、これはブランドの強みであり、城壁ではないと、疑問符をつけています。「真の城壁とは、ブランドの技術、研究開発、製品、人材といった総合的な実力」だといいます。

 また、他の伝音のサプライヤー幹部は伝音のアフリカでの成功について、「アフリカは非常に苦しい。伝音は非常に堅実に、地に足をつけて取り組んでいる。ただ、伝音の強みと弱点は、どちらもとても明らかだ」と評しています。

 伝音がアフリカでサムスン、アップル、華為を打ち破った主な理由は、アフリカ全体が依然として超ローエンド市場にあることで、これらのメーカーは長い間アフリカを、競争を展開する重点としてきませんでした。つまり、アフリカ市場の大部分の地域は、肉がほとんどついていない骨のようなもので、利益はほとんどなし。500元(約9,000円)以下の廉価スマホ市場は、トップクラスにあるメーカーが狙う範囲にありません。

 とくに、大手中国メーカーはブランドイメージを競争する段階にあり、廉価モデルを大々的に発売することは、ブランドの得にならないばかりか、イメージを損なうことにもなります。

「実力」は華為、小米、OPPO、vivoに遠く及ばない?

 また、あるアフリカで事業をしている人は『財経天下』の取材に、「伝音はスマホの最先端能力の上で、とくに強みがあるわけではない。今後アフリカ市場が従来型携帯電話からスマホへの転換を続けていく中で、華為、小米、OPPO、vivoといった中国ブランドにやられやすい」と答えています。

 伝音はアフリカでの出荷台数第一位とはいえ、取得特許数は他の大メーカーと比べると少なく、今後知的財産侵害問題に直面する可能性もあると指摘します。2019年の上場前、伝音は華為に権利侵害で訴訟を起こされているそうです。

 伝音の技術能力は、他の中国勢大手の相手にならないようです。2020年、伝音の通年での研究開発費は10億元(約190億円)でしたが、研究開発費が比較的少ない小米でも100億元規模なので、桁が一つ違います。

中国の強豪メーカーが続々アフリカへ進出

 アフリカは最後の潜在力が極めて大きい市場と見られており、アフリカの平均年齢はわずか19歳。多くのマーケティング機関の予測でも、アフリカは世界最後の「十億級ブルーオーシャン市場」とされており、2030年のアフリカの人口は中国とインドを大きく超えると予想、人口ボーナスが期待されています。

 伝音がアフリカに進出したときと異なり、華為、小米、OPPO、vivoといった代表的なメーカーは、既にいずれもアフリカに現地部門を設立し、現地でのパートナーを積極的に探すことで、アフリカ市場での突破口を求めています。

 華為は2017年にはアフリカに進出しており、今の5Gチップの供給が絶たれている状況は、4Gスマホだけ売ればいいアフリカ市場に合致しているのだとか。OPPO、vivoはともに2019年にアフリカ市場進出計画を展開、OPPO傘下のrealmeもアフリカ市場争奪戦に参加しています。

 大手各社がアフリカ市場に参入している背景として、アフリカが従来型携帯電話からスマホへの転換期を迎えているのがあるそうです。2020年、サハラ以南のスマホ浸透率が48%、2025年には64%になると予想されているといいます。

 これらの世界規模でのサプライチェーン調達能力のあるメーカーは、これまでアフリカの消費者を今ほど重視したときはありませんでした。いまのところ、大手各社がアフリカに向ける競争への本気度はインドほどでないにせよ、アフリカへの関心は高まっています。伝音は、まさにトップ集団のブランドからの挑戦に直面していると指摘します。

 あるスマホ業界アナリストは、『財経天下』の取材に対して、次のように答えています。

「中国トップクラスのブランドとの競争は、伝音にとってこれからのニューノーマルになるだろう。当初、伝音は遠くアフリカへ来ることで中国国内の激烈な競争を避けたが、今、アフリカでぶつかり合うことは免れられない。しかし、短期決戦にはならないのではないか。アフリカは50数カ国あり、市場が広い。各メーカーとしてもそれぞれの開拓重点と計画があり、制品のポジショニングと具体的な価格帯の上では、すぐに白兵戦とはならないだろう」

「伝音は東西アフリカ、人口規模の比較的大きな市場、例えばナイジェリアから始めて、北アフリカと南アフリカへと向かっていったが、後発のブランドは、北アフリカのエジプトやモロッコなど、比較的裕福な市場から手を付けている。小米もOPPOも、これらの市場で成果が出ている」

 このアナリストの見立てでは、アフリカの消費者は普遍的にスマホの価格に対して非常に敏感なことから、ポジショニングが異なるブランドはアフリカ市場の開拓方法が異なってくるが、最後にはぶつかり合うことになるだろうとのこと。

コスパの小米と実体店に強いOPPO・vivoが脅威に

 前出アフリカでの事業者によると、華為、小米の販売店量は体感上急速に伸びているようです。「アフリカ在住の中国人は伝音を使わない」とか。彼自身は、現地スタッフに中古の華為や小米といった中国主流メーカーの制品を渡しているそうです。また、白人の多い国では、「白人の多くはiPhoneを使っている」とのこと。

 また、「ローエンド市場では、小米の低価格が伝音にとって一定の脅威となるだろう」といいます。彼によると、多くの低層アフリカ人民のアルバイト収入は月100~200ドル程度、中間層の収入は1000ドル前後。200~300ドルの価格帯は小米、OPPO、vivoが力を入れているところで、多くのモデルを発売して市場シェアをとっていけば、アフリカ市場での存在感も出てくるだろうといいます。

 伝音はアフリカで壁面広告を展開していますが、協力パートナーは街角によくある夫婦経営の店舗。彼は、これはOPPO、vivoが最も得意とするところだと指摘します。インターネット通販が普及していないアフリカ市場で伝音が10年以上積み上げてきた膨大なオフラインネットワークは、他ブランドによる引き抜きと侵食にさらされようとしています。

 前出アナリストが見るに、スマホ浸透率が拡大するにつれ、市場も成熟、グローバル化の程度は更に高まり、より国際知名度の高い中国主流ブランドがウケるようになるのではといいます。

まとめ

 「美白」ならぬ「美黒」ポートレート撮影機能や、爆音スピーカーなど、アフリカのニーズに寄り添った製品開発で市場を握っている伝音ですが、中国の識者からは「大手メーカーと比べると実力不足」との声が多いようです。

 単に他のメーカーが手を付けていなかった市場で「お山の大将」、「鳥なき里の蝙蝠」として振る舞っていたのに過ぎないのかどうか。小米、OPPO、vivoが本格参入を始めたこれからが、伝音の「ローカライズ」路線の真価が問われそうです。