以前、iPhoneと物理キーボードを合体させたXperiaを作った中国ユーザーが話題になりましたが、同じく中国のYouTuberチャンネルである科技美学は、Motorola RazrとiPhone Xをベースにした「iPhone V」なる折りたたみスマートフォンを作り、その様子をYouTube上に公開しました。
この「iPhone V」一番の特徴は、ディスプレイに専用のフレキシブルディスプレイを使用していない点。Galaxy Z Flipなどの交換用折りたたみディスプレイは、AliExpressなど様々な場所で販売されていますが、科技美学チームはiPhone Xのディスプレイをそのまま採用しています。
iPhone Xのディスプレイは6層構造。ディスプレイを折り曲げるためには、保護ガラスや3D Touchセンサーなど折り曲げることのできない部品を取り除く必要があります。この作業にかなりの時間と費用を費やしたとのことで、36枚のディスプレイを犠牲にし、37枚目でようやく完璧に動作。折り曲げても壊れないディスプレイの取り出しに成功しています。
製造の上で問題となったのは、折りたたみスマートフォンの要でもあるヒンジ部分。勘違いしやすい部分ですが、折りたたみスマートフォンのディスプレイは、完全に折り曲げられているわけではありません。いくら折りたたみディスプレイとはいえ、真っ二つにすれば壊れてしまいますから、画面を折りたたんだ時に折り目の部分を湾曲させて壊れないように設計されています。
科技美学チームは、Galaxy Z FlipとMotorola Razrのいずれかからヒンジ構造を移植しようと考えました。Galaxy Z Flipのヒンジは、非常にコンパクトで、湾曲させるスペースが最小限にされているため、iPhone Xのディスプレイでは耐久性が不足。結果、より折り曲げる幅の大きいMotorola Razrのヒンジを採用することになりました。
最後に、内部部品の移植。折りたたみスマートフォンでは、折りたたんだ際に部品を上下2つに分ける必要があるため、部品の位置を細かく調整し、最終的に本体のフレームを作成して、「iPhone V」を完成させました。
また、iOSに関しても、折りたたみスマートフォンに合わせた動作になるように改造。Split Viewに対応させ、端末を折り曲げた際により使いやすくなるように挙動を変更するなど、細部にまで抜かりがありません。
ただ、この「iPhone V」にはまだ大きな問題がたくさん残っているとのこと。
まずは、バッテリー持ち。折りたたみ構造にするためには、元の容量の大きいバッテリーを利用することはできず、1000mAhの小さなバッテリーを使用せざるを得なかったとのこと。そのため、世界初の折りたたみiPhoneでありながら、世界で一番バッテリー持続時間の短いiPhoneにもなってしまっています。
また、画面の強度にも問題が発生。通常のディスプレイでもある程度折り曲げることができるとはいえ、折りたたみを前提に製造されたディスプレイと強度は雲泥の差であり、数日利用すると横方向に折り目が入り、さらに取り除けない気泡が入ってしまいます。
これらの大きな問題は解決が非常に困難ではあるものの、科技美学チームは今後も改善を続けていくとのことです。
科技美学チームの那岩氏は、この「iPhone V」を作ったきっかけとして、世界トップのスマートフォンメーカー7社のうち6社で折りたたみスマートフォンがすでに販売されているのに対し、Apple製品ではまだ販売されていないことを指摘。さらに、予想されている販売計画では、発売はまだ先であることを示した上で、「自分たちで作れないかなと思った」と話しています。
非常に単純な動機で、折りたたみiPhoneを作り上げてしまうことに驚きを隠せません。今後も奇抜なアイデアで面白い製品を生み出してくれることにも期待したいですね。