
中国のTECNOは、「Future Lens 2025」というスマートフォンカメラの技術発表イベントを開催しました。
今年で5年目となる同イベントで、TECNOは「デュアルミラーリフレクトテレフォト」と「フリーフォームコンティニュームテレフォト」という2つの望遠カメラ技術を発表しています。
デュアルミラーリフレクトテレフォト
近年のスマホカメラでは、望遠カメラの性能競争が激しさを増しています。より大きなセンサーの採用や、さらなる高倍率撮影が求められる中で、焦点距離(レンズからセンサーまでの光路の長さ)をどう確保するかが大きな課題です。
通常のスマートフォンのカメラレンズ(直立型レンズ)では、厚み方向の制約が大きく、光路長を伸ばしにくい傾向があります。一方、ペリスコープ型望遠レンズは、プリズムで光を90度曲げて横方向にレンズとセンサーを配置し、横方向のスペースで光路長を稼げる点が特徴です。現在のスマートフォン望遠では、この方式が主流になっています。
ペリスコープ型望遠レンズの一般的なモジュール構成は、次のイメージの通りです。

ペリスコープ型望遠レンズのモジュール(イメージ)
ただし、ペリスコープ型望遠レンズはモジュール全体が厚く横長になりやすく、スマホ内部スペースを大きく占有したり、背面のカメラ突起の大型化・厚みの増加につながったりする点がデメリットです。
こうした課題に対し、TECNOはSamsungとLarganの2社とともに、新しい望遠カメラ技術「デュアルミラーリフレクトテレフォト」を開発したとしています。まずは発表資料のイメージを見てみましょう。

この技術は、その名の通り2枚の反射鏡を使う方式です。1枚目は対物レンズの裏側中央に、2枚目はその向かい側(周辺部)に放射状に配置されます。
反射鏡の配置が分かる発表資料は次の通りです。

中央が反射鏡部
光はまず対物レンズから入射し、2枚目の鏡で反射されます。さらに1枚目の鏡で再度反射され、レンズを通ってセンサーへ到達します。2回の反射を挟むことで光路が長くなり、焦点距離の拡大を実現しています。
光路の模式図は次の通りです。

TECNOは、この方式により、一般的なペリスコープ望遠レンズと比べて、厚み(高さ方向)を10%、横方向の長さを50%小さくできるとしています。
モジュール寸法の比較イメージは次の通りです。

さらに、低照度での明るさとSNR(信号対雑音比)が大幅に改善されるとのことです。また、レンズの独特の開口部形状により、背景の光源がドーナツ型にボケるという特性もあるとしています。
ドーナツ型ボケのイメージは次の通りです。

ドーナツ型ボケ(イメージ)
なお、デジタルカメラの望遠レンズにも2枚の鏡を使う方式があり、レフレックスレンズなどと呼ばれます。デジタルカメラではマイナーな方式ですが、スマホカメラで普及するのかは気になるところです。
フリーフォームコンティニュームテレフォト
もう1つの発表が「フリーフォームコンティニュームテレフォト」です。従来のスマホカメラでは、超広角、広角、望遠といったように、焦点距離が固定の単焦点レンズを切り替えて使うのが一般的です。
切り替え式のイメージは次の通りです。

対してこの技術は、1つのレンズで焦点距離を連続的に変えられる「連続光学ズーム」を実現するとしています。
ズームレンズはプリズムを用いたペリスコープ構造で、プリズムの上部と側面にフリーフォームレンズを2枚ずつ配置します。フリーフォームレンズは、自由な形状の曲面を持つ高度な加工が施されたレンズで、高度な光制御や小型・軽量化などを可能にする技術です。
構造イメージは次の通りです。

これらのレンズを数mm単位でずらして光路を調整し、焦点距離を変更可能にします。これにより、光学ズームに必要なレンズ移動距離を短縮し、より小さなモジュールで連続光学ズームを実現したと説明しています。
発表資料の比較イメージは次の通りです。

連続光学ズームが可能な端末としてはXperia 1 VIIがありますが、こちらは望遠の3.5倍~7.1倍の範囲で光学ズームを行う仕組みです。一方、今回のレンズ構造では、超広角を1倍相当として1~9倍の全域で連続光学ズームが可能になるとしています。
もしこの技術がスマホに搭載されれば、デジタルズームを強く意識せず、狙いたい画角へスムーズに寄れる撮影体験が期待できます。とくに動画撮影では、ズーム時の切り替わりが目立ちにくくなり、よりシームレスな映像になる可能性があります。
さらに、連続光学ズームで超広角・広角・望遠を幅広くカバーできるようになれば、トリプルカメラやクアッドカメラではなく、シングルカメラへ回帰する未来も考えられます。デザイン面では、かつて1~3倍の光学ズームをうたった「ASUS ZenFone Zoom」のような方向性になるのでしょうか。

ASUS ZenFone Zoom(2015年発表)
今回のイベントはあくまで技術披露であり、将来TECNOのスマートフォンにこれらの技術が搭載されることを保証するものではないとしています。とはいえ、この発表はスマホカメラの進化の可能性を示唆した点で、大きな意義があったと言えます。




















