「スマホのカメラでは物足りないけど、一眼レフやミラーレスは面倒くさい」という人にぴったりなのが、「高級コンデジ」です。
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一大ジャンルと化した「高級コンデジ」
2012年にソニーが1インチセンサー搭載のRX100を発売、14年にキヤノンがG7Xで後に続き、昨年にはパナソニックがLX9を投入するなど、「高級コンデジ」は各メーカーがしのぎを削る、ひとつのジャンルとして確立しました。
なお、ニコンも今年、1インチセンサー搭載コンデジ市場に参入する予定だったのですが、予約受付までした挙句に、発売中止に。もはや商品開発力を失ってしまったようで、三菱グループの一角を占める名門企業ながら、そろそろヤバいのではと思います……。
センサーサイズは1インチ
さて、「センサーサイズ」という概念についてザックリ説明すると、写真を焼き付ける画用紙だと思ってください。確かにスマホカメラの性能が向上し、いいレンズを搭載するようにもなったとはいえ、レンズの大きさは豆粒程度ですよね?ということは、その後ろにあるセンサーも、やはり豆粒サイズ。スマホカメラの写真は、豆粒に絵を描いているようなものなので、いくら絵師の技術が優れていたとしても、描写力にはおのずと限界があります。
ポケットに入るサイズのデジカメに搭載されているなかで、最大は1インチ。そこで、餅は餅屋、東京都内の家電量販店に、1インチセンサー搭載「高級コンデジ」について聞いてきました。
魅力は「スマホでは撮れない写真」
――「高級コンデジ」でウケるポイントは?
お求めになる方の種類として、「一眼レフを持っているけど、普段手軽に持ち歩けるカメラも欲しい」という方と、「スマホのカメラ以上のものが欲しい、普通のコンデジだとあまり変わらないし、どうせなら高級コンデジ」という方がいます。後者の方が多いので、「わかりやすく、スマホで撮れない写真が撮れる機能」がウケます。
――具体的に、どんな機能がウケていますか?
キヤノンG7X MarkⅡ(税込7万2,000円)の、「星空モード」が人気です。夜、屋外で撮影しても、普通は星が潰れてしまって写真に写りませんが、シーンモードから、星空と人物を一緒に写す「星空ポートレート」、「星空夜景」を選ぶと、星もちゃんと写りこみます。それと、これは三脚が必要な機能ですが、10分~2時間かけて星の軌道を撮影する、「星空軌跡」も評判がいいです。時間がかかるものの、「高いカメラを買ったことだし、特別な写真を撮りたい」という要望が、手軽に実現できる機能なんだと思います。
カメラらしいダイヤル、受ける層と受けない層がいる?
――キヤノンG7X MarkⅡのカメラとしての使い勝手は?
それも、高級コンデジのなかで一番いいと思います。これはカメラに多少詳しい人向けのポイントですが、コントロールリングがカチカチと動くのも、細かいですが高評価です。アナログ感覚で、ピッタリ「何mmで撮影したい」というときに便利ですよ。もちろん、設定画面から、コントロールリングを絞り値やシャッタースピードに振り分けることもできます。
――パナソニックのLX9は、リング回りが凝っていますね
パナLX9(税込8万1,620円)は、ダイヤルが昔の銀塩カメラのように、F値がアナログダイヤルで数値指定できるようになっていますね。昔からカメラをやっている人からはウケがいいですが、高級コンデジはやはり「スマホカメラから」という流れのお客さんが多いので、そこまで注目されるポイントにはなっていません。
4Kは動画よりも切り出しが人気
――LX9の注目ポイントは何ですか?
4K撮影です。とはいっても、4K動画撮影は、4Kテレビ自体持っていない人が多いので、あまり注目されません。
でも、4K動画をスチル切り出しする、「4K Photo」機能は評判がいいですよ。1コマ1/30秒の4K動画から、決定的瞬間を切り出せます。肉眼では目にすることのできない絵が撮れるので、面白い機能です。普通、動画からの切り出しだとL判(一般的な写真プリントサイズ)でも画質が粗くなってしまいますが、4KならA3サイズまで引き延ばしても大丈夫です。
RX100シリーズは?
――高級コンデジで先行していたRX100はどうですか?
カメラとしての性能だとほかの2機種に並ばれているので、苦しいところです。RX100 Ⅲ(7万7,090円)以降だと、有機ELファインダーがついているのが特徴にはなるのですが、やはり一眼レフユーザー向け、一般ウケするポイントではないので……。
――RX100は、最新モデルがずいぶん高いですね
最新のRX100Ⅴは12万4,080円なので、ほんとうに高いですね。RX100シリーズは初代以降のモデルが全部現行として売場に並んでいるので、値段が本当に下がらないです。タイムセールで、せいぜい5,000円オフというところですね。とっつきにくい感じになってしまっています。
記者雑感
数年前は、価格の下がったRX100シリーズの旧モデルが高級コンデジコーナーに並んでいたが、今はSONYのデジカメコーナーにのみ置くようになりました。やはり旧モデルはすすめづらいのかもしれません。
編集部総評
高級コンデジ市場は、スマートフォンからのステップアップとして需要があります。このため、Panasonic LX9のダイヤルやRX100シリーズのファインダーといったカメラらしい機能は、必ずしも人気には繋がらないようです。もちろん、使いこなせば便利ではあるのですが。
G7X MarkⅡの「星空モード」など、スマートフォンのカメラでは容易ではない用途を、しっかり訴求できた製品は人気が出やすいようです。