日本でも相当前から問題になっている、「なりすまし詐欺」。以前は「オレオレ詐欺」と言ったりもしましたが、手口が巧妙化してきたため、より普遍的な名称となりました。犯人に騙されたふりをして警察に通報、カネを受け取りに来たところで逮捕……というニュースも、ちょくちょく目にします。
さて、俺たちの「プライバシー無視ハイテク治安維持先進国」こと中国で、民警が「なりすまし詐欺」の犯人に13万元(1元=約17円)を振り込もうとしていた女性からスマホを奪い取り、被害を阻止したと澎湃新聞が伝えましたが、よくよく読んでみると、「さすが!」いう内容でした。
10月26日午前9時ごろ、湖北省に住む43歳女性の周某氏にもとに、知らない電話番号から着信がありました。
「周某ですか?私は重慶市公安局の者です。あなたの身分証番号は、42032********2127ですね?」
周某氏が確認すると「重慶市公安局の者」は、「ある人が周某氏の身分情報を騙って児童誘拐の嫌疑がかかっていて、重慶市人民検察院で立件の準備がされている、ついては周某氏の銀行カード等の関係情報を調査する必要がある、積極的に協力せよ」と告げました。
もちろん周某氏も馬鹿ではないので、半信半疑で聞いていましたが、重慶市人民検察院による周某氏への命令書が送られ、しかもその中の周某氏に関する個人情報が完全に正しかったため、気の小さい周某氏はパニックになり、思考が停止したとのことです。
「警察に協力すれば、牢屋に入らずに済む」と言われた周某氏は相手の言うがまま、家族からの邪魔が入らないよう、ホテルに部屋をとりました。
ホテルの部屋でネット口座にログイン、これまで数年来かけて貯めた13万元を指定された口座へスマホから送金しようとしていたところに民警が踏み込み、彼女からスマホを奪い取ったとのことです。
「え、なんで警察がここに来たの???」と、周さん、もうパニックでしょうね。
どういうことなのか?周某氏が「重慶市公安局」から着信を受けた約3時間後の正午過ぎ、湖北十堰市東丘路派出所は上級から「市民周某氏が電信詐欺に遭っている疑いがある、迅速に情況を確認せよ」との指令を受け、何度も周某氏への連絡を試みたものの、ずっと通話中の状態。
民警は「周某は詐欺師と通話しており、いままさに騙されている可能性が高い」と判断、ただちに阻止行動を開始しました。
民警が周某氏の居る友誼賓館8417号室に到着、何度もノックをしたものの反応がなかったため、フロントで周某氏が部屋にいることを確認しました。
13時26分、ホテル従業員が部屋を開けると、民警が今まさに操作されているスマホを発見、すぐさま飛びかかり、スマホを奪い取りました。
取り乱す周某氏に、民警が「我慢強く」説明すると、ようやく状況を理解したようで、民警が素早く駆け付けたことで、13万元の損をせずに済んだと、深く感謝したとのことです。
確かに、「あれ?どう考えても通信通話内容が検閲され位置情報まで勝手に探知されてるよね……プライバシーとは……」という疑問はありますが、私も感謝すると思います。中国のやりすぎ治安維持施策も、ちゃんと市民の利益になっているんですね!モヤモヤ感はありますが。