2019年9月25日に発売したPanasonicのLマウント採用フルサイズミラーレス「LUMIX S1H(DC-S1H)」を購入しました。
なぜ購入したのか?これまでGH5を使っていた筆者が、S1Hを購入することを決めた動機を紹介。さらに、ファーストインプレッションをお届けします。(動画版はこちら)
Index
LUMIX S1Hを購入するに至った背景
動画重視ユーザーの筆者、GH5からS1への乗り換えを検討していた
これまでは、Panasonicが好きというのもあったのですが、一眼で映像制作がしたいという想いもあって、動画性能を重視した結果として、LUMIX GH5に辿り着き、愛用してきました。GH5は録画時間の制限がなく、世界に先駆けて4K/60pにも対応するなど、動画性能に優れており、申し分ありません。
しかしGH5は、根本的にはマイクロフォーサーズ。より大きなセンサーサイズへの憧れもあり、S1Hが発表される前は、後釜としてPanasonic初のフルサイズ「LUMIX S1」を検討していました。ダイナミックレンジやボケ、低ノイズ、低照度撮影、高い解像感……やっぱり「いつかはフルサイズセンサー」と思っていたからです。
パナのフルサイズのラインナップとして、S1Rは高解像度で静止画、S1は動画性能も重視なハイブリッドの位置付け。この時点ではS1一択ですね。
ちなみに、以下のCP+2019の動画は全編LUMIX GH5で撮影し、LUMIX S1も触っています。(このチャンネルはよく撮影にGH5を用いています)
S1を買わなかった理由。アップデート前にS1H海外発表が!
CP+でS1を触り、購入に乗り気になっていました。フルサイズならではの画質はもちろん、使い勝手はGH5を概ね踏襲。GH5はせっかくUSB Type-C端子を搭載しているのに、ここから給電ができないのですが、LUMIX S1はしっかりできます。
ほとんどLUMIX S1を買う気でいたものの、なぜ春の発売日に買わなかったかというと、動画関連の有償アップデート(4:2:2 10bitや14+ストップV-Log / V-Gamutなど)が「今夏提供」とされたため。購入を見送り。提供時期が遅いなぁと思いつつ、アップデートが来てからS1を買おうと思っていました。
とはいえ、LUMIX S1が理想的かというと、そうでもなくて、特にGH5の角度の自由なバリアングル液晶は捨てがたく、S1の3軸チルト液晶は自分には合わなさそうで、正直迷うところもありました。
ところが、S1への夏のアップデートを待っているうちに、信じられないものが登場します。
2019年6月、Panasonicは世界初6K録画対応フルサイズカメラ「LUMIX S1H」を海外で発表。まさに「S1ベースのプロ向けシネマカメラ」「LUMIXの皮を被った小型VARICAM(パナの業務カメラ)」といったテイストのこだわり製品です。
「放熱ファン搭載で撮影時間無制限」という変態ぶり。は?一眼に放熱ファン?いきなり頭がクラクラしますね……。
デュアルネイティブISO対応2420万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーにはローパスフィルターを備えます。S1の有償アップデート相当の機能が出荷時に組み込み済み、VARICAM水準のダイナミックレンジ・広色域の14+ストップV-Log/V-Gamutに対応。6K/24pの録画が可能。しかも、S1の3軸チルトではなく、フリーアングルのタッチパネル液晶を搭載!
つまり、一眼で動画を撮るユーザー的には理想の製品がついに出た、というわけです。いや、理想をぶち抜いちゃってるか。もはや業務か浪漫の域。
そのS1Hは当初、「秋発売」とアナウンス。そして後に、日本国内で改めて9月25日発売とアナウンスされました。
アップデート提供が遅かったおかげで、うっかりS1を買ってしまい「S1Hのほうが良かった!」と嘆かなくて済んだのは、非常に良かったです。自社製品が動画ユーザーに強く支持されていることを把握しているパナソニックの優しさを感じます。
一方で、S1が春発売、S1Hが秋発売で半年待たされたので、春にS1を買って堪能していたユーザーが羨ましい!と思う部分もアリ。
ともあれ、LUMIX Sシリーズは、高解像度静止画のS1R・動画のS1H・どちらもこなせてハイブリッドでお手頃なS1、魅力的なラインナップになりました。
LUMIX S1H 外観フォトレビュー
サイズ比較
とりあえずサイズの比較から。筆者がこれまで使ってきたLUMIXと並べてみました。結構おっきいですよね。
寸法は本体のみ。LX100以外はレンズ別。
- LX100:幅114.8×高さ66.2×奥行55.0mm, 393g
- S1H:幅151×高さ114.2×奥行110.4mm, 1164g
- GH5:幅138.5×高さ98.1×奥行87.4mm, 725g
S1H、結構ズッシリ重い。S1よりもさらに150gほど重いですからね。
なお、S1Hと同時購入したLマウント 24-105mm Sシリーズのレンズが680gなので、レンズ込みで約1.9kgとなります。(ちなみに、これに組み合わせたレンズフィルターはこちら)
ちなみに、LUMIX S1はこんな感じ。パッと見はS1Hとそっくり。
それではS1Hの外観をチェックしていきましょう。
ガチでプロ仕様なS1Hをチェック
S1Hでは電源オン/オフが、シャッターキー周りのリングに配置。S1では電源ボタンのあった場所に、S1Hでは赤色の動画録画ボタンが割り当てられています。
モードダイヤルはロックが掛かっており、モード変更は中央のボタンを押しながら回すことになります。誤動作防止のためプロに好まれる仕様です。
側面部にはマイク、ヘッドホン、USB Type-C、HDMIのインターフェイス類、そしてそれらとフリーアングル液晶の間にあるのが放熱ファン。これで冷却しながら録画時の熱を冷まして無限に録画できるというわけ。しかも放熱ファン搭載で防滴防塵を実現というのも変態すぎる。USB Type-Cで本体への充電も可能。ファイル、熱、電池といった長時間録画の障壁をことごとく取り除いた野心作。残るボトルネックはSDカードぐらいですかね。
右側面のスライドで開閉、SDカードスロット挿入口が出てきます。あると嬉しい、慣れるともう戻れない、ダブルスロット仕様となっています。これでたっぷり撮れますね!自分は動画がメインですが、静止画も撮るので、設定から動画保存スロットと静止画保存スロットの切り分けができるのが便利だと感じます。
ガンマイクやコンデンサーマイクなど音響機器と接続する場合、別途電源を確保する必要がありますが、XLRマイクロホンアダプタ―「DMW-XLR」を用いれば、カメラ本体からXLRコネクターのマイクに電源供給が可能。
リグと組み合わせて使う場合、上部の録画ボタンへのアクセスが悪くなるので、業務用カメラは前面にも録画ボタンを配置するものですが、本機も前面に録画ボタンを配置。完全に映像プロ向け。
付属品までプロ仕様
シンクロ端子を搭載。この端子を用いてBNCへ変換することによって、TCのIN/OUTが可能に。TCの同期ができる機種は民生機でもあまり見られません。
例えばミラーレス一眼で支持を得ているα7ⅢではTCのOUTは可能でもINは非対応、ましてやHDMI端子を利用するので、TCを同期する場合は一度モニターと接続を解除して、同期するカメラに接続する必要があります。しかしS1HはHDMIで映像出力をしたままTCの同期が可能なので、一連の作業がスムーズに行えます。
画面
上部には、屋外での視認性も良い1.8型モノクロステータスLCDを搭載。各種ステータスを確認できます。必ずしもファインダーや画面を覗けるとは限らない現場で便利です。
ソフトウェアの使い勝手や、ボタン類は、GH5に使い慣れていれば、さほど大きな違和感はなく扱えます。強いて言うなら、GH5ではバックキーなどはカチッと浅い押し込みで良かったのに対し、S1Hでは柔らかくストローク深めで、ちょっとだけ違和感がありましたが、すぐに慣れそう。
底部のスライドロックを外すと液晶画面を開くことが可能。
そして、これが肝心の、チルトフリーアングル液晶。そうそう、これだよこれ!素晴らしい!
「なんで中途半端に3軸チルトが残ってるの?バリアングル液晶だけでも良かったのでは?」と思ったそこのアナタ、違うんです。実はGH5では左側面の端子にケーブルを挿した状態だとバリアングル液晶が干渉することがあったのです。ところがS1Hならチルトを開けておけば、ケーブルに干渉せずバリアングル液晶を自在に動かせるので、快適!というわけ。
ちなみにS1Hの3.2型画面は、S1/S1Rと表示領域のサイズは共通であるものの、ベゼル上下が微妙に異なるので、S1/S1R用の保護フィルムははみ出してしまい貼れないことがあるので注意。カットすればいけると思いますが。私はS1/S1R用の保護ガラスを買って無事、失敗しました。お気をつけ下さい。S1H対応品を買いましょうね。
S1Hに感じるポテンシャル
まだまだ使い始めたばかりで、慣れておらず、作例もまだ少ないのであまり言えることは多くないですが、とりあえず手ブレ補正は良さそうですね。
動画の記録方式が豊富であることは大きなポテンシャルを感じる点です。さて、目玉の6K/24p録画については、正直、4Kですらあまり再生機器が普及していないので、それよりも上の解像度の録画なんて、過剰だと考える人が多いでしょう。
ただ、6K解像度でカメラを動かさずに撮影しておいて、編集でズームアップ/ズームダウン、パン/チルトを行い、その出力動画が4Kだとすれば、どうでしょうか?解像度を落とさずに済みます。また、素材に動画編集でワープスタビライザー(手ブレ補正)をかける場合、解像度が低下しますが、予め6Kで撮っておけば、より高解像度な4K動画を出力できます。
つまり4K動画に最大限高解像度で出力するためのテクニックとして、素材を6K録画。こう考えるとアリに思えてきませんか?
ちょっと気になった点としては、シチュエーションによってはAFが大きく迷う気がします。GH5も当初AFが苦手で、この辺りはアップデートや設定変更で解消。これはしばらく使ってみないと何とも言えないですね。
USB Type-Cでのファイル転送速度は、GH5とほとんど変わらない程度でした。USB-PD(USB Power Delivery)対応のモバイルバッテリーで、S1Hを充電できるので、長時間連続録画が可能。星景や夜景でも対応できます。これこそが冷却ファンを備えたS1Hの真価!
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ただ取り回しを重視したい場合もあると思うので、やはり予備バッテリーを忍ばせておくのが一番の気もします。
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予備バッテリーは互換品よりも純正品の方が安心感はあります。純正品の方が電池持ちますしね。
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総評
パナがプロ向け技術を民生機ミラーレス一眼にブチ込み、ハイアマチュアからプロの映像制作の現場まで活躍できる、(良い意味で)イカれた本格仕様の最強映画カメラ。究極の実用性と浪漫が詰まってる!
筆者もガンガン使っていこうと思っていますので、よろしければ是非チャンネル登録をよろしくお願いします。