中国政府が「管理監督」強化。IT各社は拡大から「縮小」の時代へ すまほん!!

 破竹の勢いもここまで?

 中国のIT大手各社が、事業範囲を縮小する「冬の時代」に入っています。

 2月22日、騰訊(Tencent)傘下のSNS・EC業務「小鹅拼拼」がサービスを停止したことがわかりました。「小鹅拼拼」は既にアプリストアでの提供が停止されており、WeChat内のミニアプリは運営が継続されています。騰訊によると、今回のサービス停止は戦略的集中から職員を他のプロジェクトへ移動させたことにより、グループ内の人員異動としています。

 一年前どころか半年前まで、中国のIT大手は「拡張」「多元化」「業界を越えて」が口癖で、「戦略的集中」という表現は使われてきませんでした。

 モバイル・インターネットのユーザー数ボーナスが失われつつあり、また、2021年上半期の政府による管理強化も加わり、IT大手各社は業務範囲の整理を開始。騰訊、字節跳動(バイトダンス、TikTok運営会社)、阿里(アリババ)はいずれも本業と無関係な開拓性質の業務を停止、売却していっています。

 私の知る範囲でも、中国のインターネット業界からは「不景気」との声ばかり聞こえてきますが、一体どのような背景があるのでしょうか。 新浪科技の記事をもとにお伝えします。

テンセントがEC業界本格参入の夢を込めるも……

 「小鹅拼拼」のミニアプリと公式アカウントはリリースされてから2年足らず、独立したアプリがリリースされてから1年も経っていませんが、「小鹅拼拼」は騰訊がEC業界参入の夢を込めて鳴り物入りで投入されたものでした。

 騰訊が早期に自社で運営していたECは、そう目立ったものではありませんでした。2010年頃の「3Q大戦(奇虎360と騰訊QQが互いに相手を不正競争防止法違反で訴えあった事件)」後、騰訊は自社運営から投資・提携に方針を転換し、2012年には京東に投資することで、自身の弱点であるECをカバーしようと試みました。その後、「拼多多」「有赞」「微盟」といったECサイトの株式も取得しています。

 2020年のコロナ禍後に「ネット叩き売り(直播带货)」がブームとなり、コンテンツECというジャンルが勃興したことで、騰訊は再度ECに手を出すことになります。

 2020年4月、「小鹅拼拼」がリリースされたところ、「拼多多」をライバルに据えたサービスと目されました。このプロジェクトは騰訊のプラットフォーム・コンテンツ事業群下のNbaseチームの革新的イノベーションプロジェクトとして位置づけられ、騰訊の多様化シーンのSNSエコシステムと巨大なユーザーアクセス数を基礎とし、ユーザーSNS網の商品推薦と「叩き売り」に依拠しようというビジネスモデルです。

政府による「管理監督」も要因

 騰訊の持つこれらの要素は、「小鹅拼拼」の強みとして受け止められ、発展が期待されました。ところが、騰訊がこれまでにやってきたECサービスとは異なり、「小鹅拼拼」は2年間で目立った成果を上げることもなく、それから少し遅れて同社がリリースしたSNS・ECサービス「视频号」が数ヶ月で月間アクティブユーザー数1億人を突破したのと比べると、失敗は明らか。

 同時期、政府による管理政策が厳しくなったことで、騰訊のECへの熱も冷めていきます。昨年12月23日、騰訊の京東持ち株率を17%から2.3%へ低下させると両社が発表しました。これについては、政府部門から独占禁止の観点から指導があったのではと見られています。

 事業の発展が当初の予測を下回り、これに政府による管理政策も加わったのが、騰訊が「小鹅拼拼」のサービスを停止した直接の原因のようです。

 中国IT大手については「BATTMD」(百度baidu、阿里巴巴alibaba、騰訊Tencent、今日頭条、美団、滴滴)との呼び方がありますが、2021年以降、これら6大IT企業が停止、リストラ、縮小した業務は20以上にのぼります。

「教育」と「金融」に大打撃

 なかでも、特に削られたのは「教育」と「金融」。

 「小鹅拼拼」サービス停止の前日、字節跳動が傘下の証券会社「文星在線」を「華林証券」に売却していたことがわかりました。中国証券報によると、字節跳動は完全に証券業務を切り離したとのこと。

 インターネット互助保険(簡単に言えば、「無尽講」のようなもの)は騰訊、阿里巴巴、滴滴、美団といった他のIT大手も挙って参入していましたが、2020年9月、中国銀行保険監督管理委員会が出した「違法商業保険活動分析及び対策建議研究」のなかで、一部の先払いモデルのプラットフォームが資金の滞留を形成し、持ち逃げリスクが存在、外部の監督管理は更に厳格になると指摘されたのにともない、2021年1月には美団、10月には滴滴、今年1月には阿里巴巴がサービスを停止しました。

 教育業界も、昨年7月の「双減政策」(義務教育段階の学生の宿題と学外教育の負担を軽減するための意見)後、IT大手各社が相次いで撤退しました。

吹き荒れる「私的独占の禁止」の嵐

 従来、IT大手各社は資本力をたのみにしてベンチャー企業を買収することで事業範囲の拡大と市場シェアをしてきました。ところが、資本の雪だるまが大きくなればなるほど、IT大手の「触覚」が社会経済の大半をカバーするようになり、影響力が拡大すると同時に、他のリスクも持ち上がってきます。

 2020年12月24日、国家市場監督管理総局は、阿里巴巴集団に対して独占禁止法違反の疑いで調査すると発表しました。「独占禁止」への手入れが始まったことで、シェア総取りを目指して血道を上げてきたインターネットビジネス競争のルールが、大きく変わることとなります。

 2021年1月、国家市場監督管理総局は「反壟断法(独占禁止法)」修正草案を発表、11月に国家反壟断局が成立し、私的独占への取締は常態化されていく流れとなっています。

 1年間でインターネット業界での処罰件数は118件におよび、阿里巴巴、美団ともに、取引先に対して同業他社との取引を禁止したかどで不正競争とされて巨額の罰金を課され、中国インターネット企業の株価は次々と暴落しました。

 IT大手各社が事業拡大に血道を上げてきた時代は終わりを告げ、これからは縮小へと進むでしょう。短期的に見ると、これらIT大手各社の市場価値はある程度の影響を受けると見られるものの、本業に集中し、事業を強化することは消費者により良いサービスを提供することに繋がります。長期的に見れば、IT大手各社にとっても消費者にとっても、悪いこととは限らないかも知れません。

まとめ

 政府による管理監督の強化によって、金融、教育と際限なく事業範囲を拡大し、シェア総取りを目指してきた中国のIT大手各社は、本業回帰と縮小の道を歩むことになっているようです。

 ただし、これが「中国政府による弾圧」という見方には、あまり賛同していません。私的独占の禁止についても割とやりたい放題、阿里巴巴と美団の例も「そりゃ違法でしょ」という感じなので、「これまでザルだったのが、ちゃんと取り締まるようになった」感があります。

 モバイル・インターネットユーザー数の頭打ちという、パイの拡大が見込めなくなった段階では、過当競争から不正競争へ陥る危険もあることから、このタイミングで管理監督を強化したのは、ある程度理解できます。

 とはいえ、短期的にはとにかく景気が悪いと困ることには違いないので、「健全な発展」が進んでいくことを願っています。