弊誌はアフィリエイト広告を利用しています。

AQUOS R9 pro レビュー。怪物カメラスマホ

 シャープの旗艦となるAndroidスマートフォン「AQUOS R9 pro」を一定期間お借りしたのでレビューします。

 本機はSnapdragon 8s Gen 3を搭載したハイエンドモデル。処理性能は最新ハイエンドとしてはやや控えめですが、ISP/DSP性能はSnapdragon 8 Gen 3水準という特徴的なSoCです。カメラ特化の本機の特性に応じた部品の採用となっています。

 筆者は最近まで常用していたカメラスマホがあります。それがXiaomi 14 Ultraでした。メインに1型撮像素子を搭載したLeica画質のカメラスマホです。とはいえ自分が一番使っていたのはメインカメラではなく、中間望遠でした。このカメラらしさのある画角、使っていてすごく楽しいんですよね。

 Xiaomi 14 Ultraの中間望遠は1/2.52型と豆粒サイズの撮像素子ではありますが、レンズ側のF値が高く集光量を確保、13 Ultraから撮像素子を継承することで画質処理を熟成させたためか、案外使っていて楽しいと感じていました。特にLeica提携スマホの写り、画作りは素晴らしいものがあるため、尚更でした。

 より大きな撮像素子の望遠カメラをXiaomiが出してくれればな……、そんな時に登場してくれたのが、Leica監修カメラを備えるAQUOS R9 proでした。

 本機の65mmは1/1.56型という、望遠としては極めて大型の撮像素子を搭載します。Xiaomi 14 Ultraは1/2.52型で豆粒なんて書きましたけど、Galaxy S24 UltraやXperia 1 VIは1/3.5型、Galaxy S24は1/3.94型という超極小サイズですからね……。

 そんなわけで、今回大注目、とにかくデカい撮像素子の65mmを中心に撮影しました。以下、作例を掲載します。

 「うわ、スマホのJPGでこの質感出ちゃうんだ……」と驚嘆する画。抽象的な被写体の質感表現を得意とするSharp Leicaらしい写りが健在で、デジタルズームではなく光学望遠で、より高次元に楽しめるということ。AQUOS R9の時にはマニュアルでこれに近い画を撮った記憶がありましたが、オートでサクッと撮れました。

 こちらは逆光でも秋の都市の情景を柔らかく撮れていました。

 光、陰影のメリハリがあると映える、色があえて制限された場面。10倍ズームですが、白黒の伝統的なLeicaらしさを感じる良好な画作り。解像感を考えると5倍ぐらいの方がいいかな。

10倍ズーム

5倍ズーム

 東京駅での作例。

 夜の新宿を散歩してみました。楽しいです。適度に遠近を圧縮して一枚に収められるのがこの画角の真骨頂です。

 こちらは猥雑な街のネオンの映り込む公衆電話というレトロフューチャーを主題にして捉えた一枚ですが、「この公衆電話は最新型だ!」ということで一部界隈で話題になりました。

 高いポテンシャルを活かしてRAWで撮影し、サクッと現像するのも楽しいです。こちらも65mm。

 ただ注意したいのは、スマホの望遠カメラの枠内では素晴らしいものの、やはりメインカメラと比べれば当然ながら光学性能は劣るので、たとえば夜の都市を手持ちで撮るとなると、解像感が足りないことになります。解像感の甘さが絶妙な味を出してくれるシチュエーションも多いですが、ディテールを求められる都市風景の現像時にはシャープネスを効かせるなど少し工夫すると、より良くなります。これはスマホカメラ全般に言えることですね。厳しい状況下では賢く画像を処理できるJPGがあくまで本義だと言えます。

 さて、本機の最大の魅力がシャッターボタンの搭載です。実際にデジタルカメラで使われている部品を搭載しており、半押し・押し込みの心地よさに至るまで上質。AQUOSのハプティクス系は酷かったですが、R9 proにおいては前進も見られ、特にこの「シャッターボタン押し込みでのカメラ即時起動時のフィードバック」の感触は、極上。シャッターボタンの使い心地は、ハードウェア面においては特段にこだわっているであろうことが伺えます。

 また、音量ボタンを露出変更に割り当てることも可能なのが嬉しいですね。このあたりの制御関連は競合他社に圧倒的な優位だと思います。

 ちょうど筆者は「Xiaomi 14 Ultraはカメラキットを装着すると、シャッターボタンと露出調節ダイヤルがついて便利なんだけど、重たくてデカいんだよな……しかも使いすぎて電源入らなくなったし」という状況だったので、ケースなしの身軽な状態でシャッターボタンと露出をハードウェア的に使えるAQUOS R9 proは特段に素晴らしいと感じています。

 Xperiaのシャッターボタンは流石に長らく搭載してきていて熟成されています。報道カメラマンにも訴求する独特の地位のXperiaの命題である「速写性」に適合したフェザータッチなど、完成度も高いと思います。一方で、撮影を楽しみ、景色をバッチリ撮れる現在のAQUOSの性質には、十分に見合ったシャッターボタンであると思います。初号機としては大変素晴らしい出来栄えです。

 とはいえ、実のところシャッターボタンをシャッターを切る瞬間に利用する機会は、筆者がそれほど多くはありません。なぜなら、シャッターボタンを筐体に押し込むという行為は、ブレを生むからです。とにかく感度高めでシャッタースピード短く、めまぐるしく変わる状況や動き回る被写体を追って撮るようなスタイルが中心の人にとっては、シャッターボタンは非常に便利な存在である一方、じっくりと腰を据えて撮影する人にとっては、画面上のシャッターボタンを触る方が有利ということもあるのです。このため、筆者は取材中はシャッターボタン、景色を切り取る時は画面上のソフトウェアのボタン、という具合に使い分けることが多いです。

 しかし、スマホ本体を「高い位置」や「低い位置」に保持して撮影したいシチュエーションではどうでしょう。ファインダーとなる画面をほとんど覗けないので、一般的なスマートフォンでは「起動に難儀」「画面が見れない以上、画面上のソフトウェアシャッターボタンも押すのに失敗する」という状況に陥ります。そんな角度や状況でも、AQUOS R9 proなら物理シャッターボタンで対応できるというわけです。

 そんなわけで撮ってみたのはこちら。新宿歌舞伎町の有名なネオン。赤信号で人が立ち止まり、タクシーが行き交うところを65mm望遠で狙って、マニュアルモード(RAW保存設定)で低ISOと少し長めのシャッターで連写。手ブレ発生も覚悟する状況なので、枚数多めに撮っておきます。帰りの電車で、AQUOS R9 proに入れたAdobe Lightroom Mobileアプリにて、狙い通り、いや狙いの少し斜め上の面白い一枚を探し、フィルムカメラ風に現像しました。やはり現像、楽しいです。

 現像で処理性能が重要になるのは、複数枚の写真に対して同時に現像をかけて出力する場合です。AQUOS R9 proで1枚を出力する際に重くて時間が掛かるということは全くありませんでした。

 ちなみに現像でいうと、メインカメラが一番楽しいと思います。メインとなる23mmは、F値1.8の明るいレンズに約1型のコンデジ級撮像素子という圧倒的な光学性能と描写力を備えているため、スマホのRAWとしては現像耐性も高いです。

 厳密な比較では全然ないですが、現像耐性の差の一端が伺えると思います。13mmは光学的に貧相なので画質処理の必要性が最も高い画角で、課題でしょう。

上:23mm, 下:13mm

 もっと光の線を長くしたい!そんな場合は、露光時間が必要です。その場合は三脚やNDフィルターが必要になるでしょう。特に23mmはレンズも明るいですから尚更ですね。AQUOS R9 proは保護ケース・カメラキットなしでもフィルター対応可能なのが素晴らしいです。ぜひ検討してみて下さい。筆者はまだ試せていませんが、「明るすぎる都市夜景(渋谷交差点)」などで、様々な場面でフィルターの必要性を感じたので、この機種を購入して届いたら使うと思います。

 ちなみに、そんな渋谷の中心でなかったら案外フィルターなしでも撮影できたりします。三脚さえも不要です。

 まずマニュアルモード(RAW保存設定)で、スマホを地面すれすれに配置します。そして両手の指を地面との間に挟み、右手の親指を半押しから気合い入れて筐体不動で垂直に押し込むイメージ。これだと三脚なし・23mmでも1秒近くの露光がいけたりします。身軽な装備や、不意の撮影衝動に駆られた時でも気軽に楽しめるので、このテクを頭の片隅に置いておいて下さい。 

 レンズフレアはうまく作品に落とし込んでいきたいところです。

 65mmはバシっとキマれば流石の画作りだし、状況によってはもう少し解像感や、手ブレ対策を入れ込む必要があるよなという所感。久々の望遠挑戦の割には、都市夜景はその点しっかり作り込まれています。

3倍

6倍ズーム

 中間望遠までのカメラ且つ夜景なので仕方ないですが12倍、20倍は手ブレしやすすぎるのもあっていまひとつ。

12倍

20倍

10倍ズーム。望遠のない従来機種でこのロケーションでこの画角、AQUOSのズームが得意な抽象的な被写体でもなくディテールを要することもあって酷かったが、ちゃんと普通に撮れるようになっており実用性が高まっている。

 というわけで65mmを中心に紹介してきましたが、みなさんお気付きの通り、肝心のメインカメラである23mmの画質は抜群。光学手ブレ補正を搭載したことで撮影失敗も減少。最強になりました。以下、23mm。

ウォーターマークの表示項目は選択可能なほか、任意の文字を入れることもできる。

 飯撮りもよく撮れます。公開市場版は忌まわしいマナーのない「シャッター音強制」もなく、普通に消せるのでカメラスマホが欲しい人にはイチオシです。むしろ消費者が積極的に選択すべきです。

 飯撮りは1型撮像素子の高画質で、使いやすくなった23mmなので1倍でもよし。

 個人的には2倍が一番使いやすいです。しかしAQUOSのズーム調節ツマミ、1倍の次が3倍になってて、2倍が無いのが謎です。普通に利用頻度高いので2倍も欲しい。

2倍

 接写時には超広角に自動的に切り替わります。便利ですが、専用機のカメラに慣れた人には気持ち悪い挙動でもあります。これはカメラのプレビュー画面横の花のマークを押せばオフにできます。iPhoneだとこの辺のUIがおかしいのですが、AQUOS R9 proは使いやすいです。

 AQUOS R9 proはISP性能は高いSoCを搭載しているので、光学的に無理のある倍率でない限り、しっかり画質処理を入れ込んでいる場合は真価を発揮できていることが多いです。さて、それ以外の性能については、ベンチマーク結果を以下にまとめておきます。

ベンチマーク スコア FPS
AnTuTu 10.3.9 1,448,044
Steel Nomad Light 1,031 7.64
Solar Bay 5,053 19.21
Wild Life Extreme Unlimited 2,950 17.67
PCMark 16,047
GeekBench 6 CPU Single 1,979
GeekBench 6 CPU Multi 5,246
GeekBench 6 GPU 8,739

 AQUOSの課題である熱ダレは、AQUOS R8 proが放熱カメラリンクを搭載してもなお、完全な解消はできていません。Snapdragon 7+ Gen 3を搭載し、放熱機構を強化したAQUOS R9でさえ、3DMarkの連続テストにおけるパフォーマンス持続率は、Wild Life Extreme Stress Testで58.4%、Steel Nomad Light Stress Testで47.4%となっており、放熱性にはまだ課題が残されていました。

 この点、AQUOS R9 proはWild Life Extreme Stress Testは77.5%、Steel Nomad Light Stress Testで70.4%と高い持続性を記録。冷却性能の劇的な底上げを実現していることが伺えます。ゲーム時のパフォーマンス低下は、AQUOSに対するユーザーにとっての大きな不満や懸念事項であったため、今回の改善はかなりの朗報と言えるでしょう。また、夏場の長時間撮影や、高画質での長回し録画といったユーザーのニーズにもより確実に応えてくれそうです。

 AQUOSの課題といえば音響面で、スピーカーの品質です。AQUOSが音が良いとか言われても、多くの機種ではさっぱり理解できませんでした。

 しかしAQUOS R9 proは打って変わって、広い音場と優れた解像感といった高次元。明らかにフィーリングが変わりました。全体的に高音質ですが、若干ドンシャリ。高音域は低音域が特徴です。量感やベースの存在感に優れており楽しく聴けます。

 箱鳴りもほとんどしておらず、ボックススピーカー構造の採用で、音のパワーが筐体に吸われて音質を損なわないよう設計面からの努力が反映されています。

 たとえば『負けヒロインが多すぎる!』エンディングテーマ『LOVE2000』をAQUOS R9 proで鳴らすと、音の流れている位置がわかり、Lから流れるベース・低音、Rから流れる高音が分離、音像定位は向上しているように感じます。

 この点、おそらくAQUOS同様、一流というよりかは1.5線級と見做されるがオーディオビジュアルに特徴を持つ機体として、ZTEのnubia Z60 Ultraを比較用に選定。nubia Z60 Ultraで同曲を再生すると、音場や音量にこそ余裕があり、定位こそまだあるものの、各音の伸びが制限される印象があります。特に低音は余韻を欠き、場面によっては飽和し、各音が埋もれる印象ます。これに対してR9 proの場合は、より音圧が強く音像も比較的はっきりしており、信号対雑音(S/N)比の高さを感じます。

 ちなみにAQUOS R9 proの音響設定のデフォルトとなっている「ダイナミックモード」の場合、基本的に音楽用プロファイルでの再生かと思いますが、動画視聴の場合は映画用プロファイルとなり、より音が強調されます。映像作品の視聴においては好ましいものの、無理にS/N比を上げているような印象を受け、歯擦音が鋭くなるなど悪影響もあって音楽鑑賞においては足を引っ張ることから、たとえばMVをYouTubeで視聴する場合などにおいては手動での切り替えを推奨します。

 さらに価格的に同クラス帯且つ、一流メーカーのハイエンド、Xiaomi 14 Ultraと比較しました。高音域は14 Ultraに軍配が上がりそうですが、R9 proのどっしり構えた低音、沈んだ重低音の心地の良い響きと比べると、Xiaomiの低音域は浮足立ったようにやや明るく感じます。『カウボーイビバップ』の『Tank』を流すと、特にXiaomi 14 Ultraの低音がジャギってカサついてるところを、AQUOS R9 proの方が健闘していることがわかるのではないかと思います。

 これらはいずれも同程度の音量にして比較を行ってきました。スピーカー最大音量はiPhone 16 Proの7割程度。あくまで、従来明らかに苦手であった音質の洗練を目的とした機体が本機であるという位置付けが伺えます。とはいえ、シャワーにはギリギリ負けない程度なので、十分かなとも思います。

 音質的にはAQUOS R9 proがやや上回るだろうと感じるところ、しかし最大音量はXiaomi 14 Ultraがさらに上回るため、日常的な使い勝手を含めた総合力で言えばXiaomi 14 Ultraが選択されるかもしれません。ただ「大差をつけられて敗北」という惨状だったAQUOS Rシリーズの平均値からすれば、本機は立派に他社の廉価ハイエンドに勝り、他社の同クラスのカメラフォンに伍を成せる水準となっているだけ飛躍的な進歩です。「AQUOSは音が悪い」を完全に過去のものにした、本機の音響エンジニアに最大限の賛辞を送りたいです。

 さらに音質を磨き上げて高みを目指しつつ、「最大音量向上でシャワー浴中も大満足で楽しめる」という特徴を付加すれば、日常的な使い勝手を含めた総合力においても優位性を獲得できるでしょう。Xiaomi 14 Ultraのレザー、水場で使用することによる質感劣化も気になりますしね。

そもそも風呂での利用に言及するメーカーは珍しい。お風呂ではよく注意して使うよう案内しているAQUOS R9 pro。(出典:SHARP

 ちなみに蛇足ですが、単に音だけで言えばiPhone Pro Maxのさらに解像度高く、音の繋がりがより自然な美音は別格の品位であり、アコースティックな曲でもピアノの音は艶めかしく、ジンバルの音がカサつくこともありません。

 個人的に本当に惜しいと思ったのがハプティクスの踏み込みの甘さで、確かに従来シリーズの水準を考えれば、シャッターボタンを押し込んだ時のフィードバックも上手いので、より良い部品を使うようになってきているのかなと思いますが、振動で画面が揺れる時に発する軽い音が耳障りです。身体的触覚の意味でいえば十分なのですが、もう少し研究が必要だと思います。

 解錠だけではなく登録も快適な指紋認証。範囲が広い上に複数の指の登録も迅速に終えられるのは大きな強みです。様々な独自機能も健在。さらにオートスクロールやエモパーなどの尖った独自機能はデフォルトオフながらもしっかり備わっているので、従来のファンも新規利用者も快適に使えると思います。

 総評として、ユーザーの長年の不満を一挙に解決し、そしてR6以降の長所であった1型撮像素子を継承し、望遠の高いポテンシャルを示した素晴らしい機種だと思います。

 望遠と超広角の画質処理にまだ課題は残っていますが、ピーキーすぎる荒馬デジカメ用撮像素子を、後のアップデートでいなしたAQUOS R6の例を経験している筆者は、伸びしろ余地も含めて成長を楽しめると感じたので、本機は購入します。

NTT docomoの最新端末をチェック [AD]
ドコモオンラインショップ
IIJmioを契約する [AD]
IIJmio
すまほん!!を購読しませんか?

Twitterでも最新更新を配信・通知しています

フォローする 再度表示しない