中国とのビジネスに必須の「微信(WeChat)」
米国やインドで「中国アプリ禁止」の動きが進んでいるのは、各社報道でご存知の方も多いかと思います。日本でも自民党がTikTok禁止を検討していますが、中国関係者が今、最も心配しているのは「微信(WeChat)が使えなくなったら話にならない」問題。
というのも、まず中国ではプライベートであろうが仕事であろうが、連絡手段は全てWeChat。同僚との業務連絡、ファイル共有はもちろんのこと、日本ではメールでやり取りするような取引先とのやりとりも、普通はWeChatを使用します。
更に、中国ではLINEが政府にシャットアウトされており、基本的に使えない(まあもともとユーザーほぼいませんでしたが)ため、こちらの都合に合わせて中国側に「国際的なサービスを使ってもらう」ということは原則できません。
よって、とくに中国専門で商売しているわけでなくても、なにか大きい取引、プロジェクトを中国とやったことのある担当者ですと、仕事用にWeChatアプリをインストールしていたりすることも、珍しくありません。
私は「中国企業側の日本人」として仕事をすることもありますが、日本企業の担当者に「WeChatアカウントありますか?」と聞いて「ありますよ」と答えが返ってくると、「あ、この人は中国企業案件慣れてるな」と、少し安心します。
と、いうわけで、「WeChat禁止」というのは対中ビジネス上、「ふざけんなよスマホがただのネット検索用端末になるだろ」というレベルの事件なわけですが、先日国境付近で中国と小競り合いをして関係が険悪になっているインドがWeChatの使用を封じ、現地の中国人や中国関係インド人がパニックに陥っていると、中国「志象網」が伝えました。
インド人「中国50社と音信不通になった」
6月29日、インド政府は59アプリの禁止を発表、WeChatを含む多数のアプリがアプリストアから削除されたものの、既にダウンロードされたアプリは使用可能だったのが、7月25日から、多くのインド国内ユーザーはWeChatからログアウトされ、使用できない状況に。
まず、中国商人。インド・バンガロールでEC業を営んでいる徐亮さんですが、ここ半年は苦労続きで、コロナ騒動の次は反中気運が高まり、販売状況は惨憺たるもの。
とりわけこの三日間は眠れなくなったそうで、その原因は、7月25日から徐さんのWeChatアプリはメッセージを受信できるものの、返信が送信できなくなり、「口を塞がれたよう」だと言います。
次に、インド人。WeChatはインドではユーザー数は多くないものの、利用者は多かれ少なくとも中国と関係のある人で、大部分は商売人だそうです。日本と同じで、早い話が「中国人と商売するのに使っている」ということですね。
雑貨のメッカである浙江省・義烏とムンバイを頻繁に行き来するというインドの貿易商人は、取引先50社ほどがこれにより中国のサプライヤーと「音信不通になった」と言います。また、中印衝突により、義烏を放棄して他の国を当たらないといけないのではとの危惧も広がっているとか。
中国とアジア・アフリカなどの発展途上国の両方に行ったことがある人はお気づきと思いますが、中国より途上国の方が所得水準は低い一方で、日用品の価格は概ね中国の方が安いです。なんとなれば、大抵の雑貨は中国で作っているからです。
なお、どういうわけか、たまにメッセージを発信出来る場合もあるそうです。
7月28日以降、VPNを使用していなくてもWeChatを使用できたというユーザーもいれば、VPNを起動させていてもWeChatにログインできたというユーザーもあり、「インドの謎」になっているといいます。
中国人「WeChatに頼りすぎた」
さて、前出のEC業者徐亮ですが、「我々は日常生活で微信に頼り過ぎではないか?微信で問題が発生したら、どうやって人と連絡をとればいいのか?」という教訓を得たと言います。
なお、駐中インド大使館では、オンライン授業に活用されたため中国全土のキッズたちから怒りの☆1評価を食らった釘釘でライブイベントを実施したとか。テンセントはダメでもアリババはいいんですかね。
総評
以上、「ガチで中国アプリが使えなくなった」、インドでのお話でした。先にも書いたとおり、そもそも中国ではLINEやFacebook、TwitterがVPNかまさないと使えないので、チャットアプリでの連絡が不可能になってしまいます。
よくよく考えれば、十数年前まではスマホもなかったので「そういうもの」だったのですが、今となってはちょっと考えられないレベルの不便と感じてしまいますね。
正直なところTikTokは別に使えなくなっても個人的には困らないのですが、「WeChatだけは勘弁して」と思います。