さよならAndroid?サムスンが将来的にAndroidから「フクシア」OSに乗り換えるとの噂 すまほん!!

 サムスン電子が製造・販売する世界シェアトップのスマートフォン「Galaxy」シリーズのほぼ全ての端末では、サムスンによって独自カスタマイズが施されたAndroidが実行されています。しかし、サムスンは将来的に、新たなOSに乗り換える可能性があるようです。

 リーカーのDohyun Kim氏は、自身のTwitter上に、サムスンがAndroidから離れることを示唆する内容をツイート。新たに、「Fuchsia」と呼ばれるOSへ将来的に移行する可能性があるとのこと。なお、この投稿には、著名リーカーのIce universe氏も「Yes」と反応しており、より信憑性の高い情報であるようです。

 なお、このOSの日本語での正しい読み方は不明です。英語発音では「フューシャ」、日本語では「フクシア」や「フクシャ」と読むようです。本記事内の日本語表記では、一番執筆しやすい「フクシア」に暫定統一しています。

「フクシア」の概要

  Fuchsia OSの歴史は、約5年前に遡り、Googleが2016年にGitHub上で新プロジェクトとして発表されたことから始まります。

 公開の際、Googleが公式で告知することはなかったため、多くのメディアが将来Androidと置き換わるOSなのではないかと予測。その後の調査で、このOSがスマートフォンやタブレット・パソコンや、家電製品などの組み込みデバイスまで幅広いデバイスで動作可能なものであることが判明しました。

(画像出典:9to5Google)

 まず、この「フクシア」がAndroidと根本的に異なるのは、ハードウェアとソフトウェア間の情報伝達や処理を仲介するカーネル。いわば、OSの中心部分です。

 Androidでは、Linuxカーネルを採用しているのに対し、フクシアはGoogle自社開発のZirconを採用しています。

 現在、一番目立って「フクシア」OSが採用されているデバイスは、Googleのスマートディスプレイ「Nest Hub」です。初代Nest Hubでは、2021年5月にアップデートが行われ、Cast OSからFuchsia OSに置き換えられました。Googleが発売しているデバイスで「フクシア」が採用されたのは初めてで、この採用によってさらにフクシアに関する噂が広まりました。

フクシアのアプリ開発キット「Flutter」

 「フクシア」のアプリ開発には、GoogleのFlutterと呼ばれるソフトウェア開発キット(SDK)が使用されます。このFlutterの一番の特徴は、一つの言語で記述されたプログラムで、iOS・Android等の異なるOSに対応するアプリを開発できる点。

 現在のモバイル向けアプリケーション開発には2つのタイプがあり、一つはネイティブ開発、もう一方はクロスプラットフォーム開発と呼ばれるもの。ネイティブ開発では、iOS・Androidそれぞれの環境に最適化された言語でアプリ開発を行い、最近はiOSではSwift、AndroidではKotlinといった言語がよく使用されます。そのため、iOS・Android両方のアプリをネイティブ開発するには2つの言語を習得する必要があります。一方のクロスプラットフォーム開発では、一つの言語で双方のOSに対応したアプリを作成可能。Flutterは、後者のクラスプラットフォーム開発にあたるSDKです。

 そのため、Flutterを利用すれば、「Dart」言語一つで多くのデバイスで利用可能なアプリケーションの開発が可能です。クロスプラットフォーム開発だけに視点を絞れば、Flutterは現在最も使用されているものと言っても過言ではありません。実際、Google検索では、他のクロスプラットフォーム開発対応SDKと比較して、Flutterに関する検索が多くなっているようです。

 ただし、クロスプラットフォーム開発にはもちろんデメリットも。それぞれのOSに合うように途中で変換されるためパフォーマンスが落ちてしまいます。ウクライナのソフトウェア開発会社が行った、Androidネイティブ・iOSネイティブ・大手クロスプラットフォーム開発キット2つを比較した実験では、パフォーマンスやCPU使用率、実行メモリ使用量に差が見られることがわかります。なお、実験データは2020年6月のもの。

 フクシアでは、この「Flutter」で開発したアプリケーションがネイティブで動作します。そのため、現在iOS・Androidアプリ向けにこのSDKを利用して開発を行なっている開発者は、特に開発環境を変更することなくフクシア向けのアプリをリリースできるほか、より高いパフォーマンスを提供できるようになります。

 筆者は、この記事の執筆をきっかけに、Flutterを少し勉強。簡単なプログラムを書いてみました。プログラムの変更が瞬時にUIに反映される「Hot Reload」にデフォルトで対応している点がとても便利だと感じました。

開発の一例。すまほん!!専用リーダーを作れたら楽しそう。

Androidから「フクシア」へ段階的に移行?

 Dohyun Kim氏は、自身のツイート内で「サムスンがこのOSを採用するまでに数年かかる」としており、今後発表されるデバイスですぐにFuchsiaへ移行されるわけではないとのこと。

 これを伝えたSamMobileは、サムスン既にFuchsia OSの開発に関与している可能性があるとした上で、今後競合他社がFuchsia OSの採用を決定した場合には、サムスンは比較的優位に立つと予測しています。

サムスンの独自OSは昔にも

 サムスンはこのOSの開発に関わっている可能性があるということですが、同社は以前、共同開発OS「Tizen」で苦い経験をしています。

 Tizenは、Linux Foundation主導の元、サムスンやモトローラといった外国企業に加え、ドコモやすでにモバイル事業を撤退済みのNEC、パナソニックといった日本企業などが開発に参加した、LinuxベースのOSです。

 このOSの一番の特徴は、なんといってもアプリの開発言語がHTMLベースである点。現在この世界に存在するほぼ全てのWebサイトの元を辿れば、基本となる部分はHTML言語で記述されており、このすまほん!!もベース部分はHTMLで書かれています。つまり、基本的なWebクリエイターであれば、Tizenで動くアプリケーションを作りやすいということ。また、ユーザーもPCやタブレット、スマートフォンなどの端末に依存せず、ほぼ同じユーザーエクスペリエンスを体験できるというメリットがあります。

 一見すれば画期的にも見えるこのOSですが、最終的にはほぼ空気のような存在になってしまいます。NECやパナソニックは携帯電話事業から撤退。ドコモも、当初予定していたTizen搭載スマートフォンの国内発売を延期し、結局Tizen搭載スマホが発表されることはありませんでした。

 最終的に、直近ほぼ全てのTizen搭載製品はサムスン製。Tizen搭載スマートフォン「Galaxy Z」シリーズを発売したものの、世界でのシェア2017年には0%に。最近では、同社のスマートフォンに搭載された例もほぼなく、Galaxy Watchシリーズやサムスン製のテレビに搭載されるのみとなっていました。

 そんな中、2021年の「Galaxy Watch4」シリーズの発表前に、Tizen OSはWear OS by Googleと統合。先日には、Tizen搭載サムスン製スマートフォン用向けのアプリストア「Tizen Store」もサービスを終了したことが判明しており、Tizenは闇へと消えていっています。詳しくはこちらの記事。

Androidの今後

 現実的に考えて、Fuchsia OSを採用したスマートフォンが実際に発表されるのはまだ先であることは明らかです。また、世界で初めでFuchsia OSを搭載したスマートフォンを発表するのは、Googleかサムスンであることも予想できます。

 Googleが本格的にAndroidからFuchsiaへの移行を開始すれば、Androidのサポートは徐々に縮小していく可能性もあるため、多くのメーカーもFuchsia OSへ移行するはずです。ただ、Androidの開発も継続した場合は、一旦は様子見するメーカーが一定数いることも想像できます。

まとめ

 多くのエンジニアを確保できる企業では、それぞれの言語での開発に多くの人員を割けるほか、最新OSへの対応やパフォーマンスの観点などから、ネイティブ開発を行なっている場合も少なくありません。

 今後どれくらいのデバイスに搭載され、どのくらいのユーザーが使用し、どのような特徴やバグがあるのか全くわからない状況で、新しいOSへの開発環境を整えソフトウェア開発を行うのは、多くの資金をかけてアプリを作成する開発者にとって非常にリスクが高いこと。これは、サムスンもTizenの失敗で嫌というほどわかっていることでしょう。

 ましてや、現在のモバイル向けOSは完全にAndroidかiOSかという2択の時代。双方でネイティブ開発を行なっている開発者にとっては、開発環境も言語も全く違う、ユーザー数もそこまでいない新たなOS向けにアプリを投入したところでメリットがありません。

 よっぽどのことがない限り、Android・iOSの2強状況は続くと予想していますが、この状況で新たなOSを投入し成功させるためには、「Androidにはない決定的なメリット」と「Androidでできることが新たなOSでもできる」、この2つのポイントが不可欠であると考えます。

 「フクシア」では、Androidアプリ・Linuxアプリをネイティブで実行できるとの情報もあり、もしAndroidアプリが本当に動作するのであれば、フクシアにとっては大きな強みとなると予想できます。

 「フクシア」に関する詳細情報については、まだ明らかになっていない部分も多いのが現状です。今後の発表で、このOSの全体像が徐々に明らかになってくるとみられますが、果たして「Androidに代わる新たなOS」として成功を収めることはできるのか。もしくは、「第二のTizen」となってしまうのか。今後の情報に注目が集まっています。