
シャープ株式会社は2025年10月31日、新型の軽量VRヘッドセット「クロステラVR1(XROSSTELLA VR1)」を発表しました。
本機は2023年にCESに参考展示したモデルの基本を踏襲しつつ、ついに正式な製品名を冠して正式発表した形。想定市場は国内で、2026年度中商用化を目指す方針です。価格は現時点では決まっていないものの約15万円程度の見込み。
有線接続のSteamVR対応HMDでありながら、内蔵カメラを用いたインサイドアウト方式6DoFトラッキングに対応した198g軽量HMDなので、「ライトハウス環境とベースステーションいらず、こういうの待ってました!」とVRユーザーが唸る仕様となっています。ベースステーション、何気に手に入りにくいですしね。
中央のカメラはパススルー(装着して利用中に外の視界を見るモード)用、その左右のカメラはインサイドアウト用です。社内検証では、2個のカメラでもゲームは可能との結果だそう。

マイクも内蔵。ケーブルの取り出し口はツルの先などではなく、前方部寄りに配置されているので、ケーブルに引っ張られてバランスが悪くなりにくい配置となっています。

様々な選択肢の中から、あえて有線接続でのPC VRを選んだ理由は、現時点で体験できるコンテンツが豊富であるため。たしかに、高性能なPCを要するとはいえ、世界最強のゲームプラットフォームであるSteamVRが使えるのは圧倒的な優位性ですよね。

この写真で端末上部に見える10個の穴は排熱口
また、競合他社のSteamVR対応軽量HMDへの優位性としては、単に軽いだけではなく付け外しがしやすい仕様により、隙間時間でも気軽に使える点を挙げました。ちなみに筆者が使っているBigScreen Beyondは確かに軽いものの、ストラップの付け外しに少々難儀します。

筆者が愛用する超小型軽量BigScreen Beyondと比較すると少し大きく感じるものの、BigScreen Beyondは紐状のストラップを外した状態なのに対して、VR1は頑丈そうなツルにスピーカー内蔵、視力調節ダイヤルなど、機能てんこ盛りなので、比較はあくまで参考までに

気軽に楽しむ際はそのまま眼鏡の要領で、そしてよりアクティブに動くゲーム体験などではツルの後方にベルトを足すことで固定といった使い分けも想定
PC以外の接続先としては、クラウドファンディング終了後に届けるタイミングで、まずは動作保証も考えてAQUOSスマートフォンに対応予定。スマホとの接続展示もAQUOS sense10でした。
スマホとの接続時はDP Altでスマホの画面をそのまま写します。現時点では、暗い背景に、大きなスマホ画面が表示される形式です。スマホからの電力供給では電池消費の問題もあるので実現するかは不明ですが、パススルーによって周囲の景色を取り込むことも検討はしているとのこと。
クロステラVR1は日常的な利用はもちろん、SteamVRを用いてのVRChatも想定します。

コントローラーもインサイドアウト方式のため、VR HMD前方のカメラで見渡せる範囲を超えて手とコントローラーが後ろに行った場合、IMUで推定して低精度で継続、範囲内に戻ったらカメラでのトラッキングを再開
展示では寝転がって、天井を向いても横を向いても使うことができました。

その気になれば「VR睡眠」も可能と見られますが、寝相が悪い時の機体への圧力を考えると、あくまで自己責任で。柔らかい枕を用意して十分注意して臨みたいところ。
視野角は90度、片眼2160×2160ドット、方式はシャープらしく液晶を採用。個人的には暗い夜空やホラーワールドなどの場面で効力を発揮するOLEDを搭載して欲しかったところではありますが、パネルコストが本体価格に転嫁されることを考えると一概にどちらがいいとは言い切れないところですね。
また、視度調節機能も採用しているので、法人向け用途や、視力を矯正している個人利用者にとっては嬉しい部分です。メガネを外して利用できます。もちろん左右独立して視力をダイヤルで調節できるので、左右の視力が異なる人でも使えます。

最大90Hzリフレッシュレートなのは、「VRChatで現実的に運用するのに必要十分なリフレッシュレートで、よくわかってるなあ」というのが率直な感想です。パンケーキレンズによって高精細な映像表示を謳います。
なお展示機で試せたのは主にVRChatでしたが、母艦となるPC側の問題で、HMDへの出力解像度を制限していたため、真の画質は堪能できませんでした。また機会を改めて試してみたいですね。
スピーカーはテンプルの前方部分に内蔵。筆者の使っているBigScreen Beyondは確かに軽量ですが、(別売りのスピーカー内蔵の大きなストラップを装着しない限り、デフォルトでは)スピーカー非搭載なので、イヤホンやヘッドフォンを別途装着する必要があります。そうした手間なく使えるのが本機の美点と言えそうです。

丸で囲った部分がスピーカー、左右に配置
VRの市場は各社調査で伸びていくとのデータが出ており、そうなるとシャープも分析。負担なく着脱できるVR HMDで裾野を広げ、サービス・コンテンツが増え、人口が増えるという好循環を見込みます。
クロステラVR1はGREEN FUNDINGにて11月下旬以降に出資募集を開始予定。ぜひ成功して欲しいですね。



















