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【ザリガニ飼育】中国、地方行政がOpenClaw起業を奨励?

 「ザリガニ飼育」が行政用語?

 深セン市竜崗区が、オープンソースAIエージェント「OpenClaw」の開発者とOPC(AIを活用して一人で企業機能を回す起業家)を対象にした支援案を公示しました。正式名称は「深圳市龙岗区支持OpenClaw&OPC发展的若干措施(征求意见稿)」で、通称は「龍蝦十条」。最高1000万元の株式投資支援を含む手厚い内容ですが、すでに施行された制度ではなく、3月7日から4月6日まで意見を募る草案の段階です。

 竜崗区の狙いは明快で、AIエージェント開発者とOPCを呼び込み、「零成本启动(ゼロコスト起業)」を掲げて創業拠点になろうとしています。支援メニューは多岐にわたり、無料のOpenClaw配備サービス、脱敏済み公共データの開放、データ治理や標注サービスへの50%優遇、AI NAS「龍蝦盒子」への30%補助、OpenClaw系ツール導入への40%補助、認定企業への3カ月無料算力、そして条件を満たす種子期OPC案件への最高1000万元の株式投資支援まで並びます。なお、無料になるのは「オフィス」ではなく「最長2カ月の宿泊」で、オフィスには別途最長18カ月の優遇措置が用意されているとのことです。

 支援案の中心に据えられたOpenClawとは何か。チャットアプリ経由で指示を出し、受信箱の整理やメール送信、予定管理などをこなすオープンソースのAIアシスタントだと公式は謳います。赤いザリガニのようなアイコンから、中国のネットでは「養龍蝦(ザリガニ飼育)」という俗称が広がりました。

 むしろ目を引くのは、ネットスラングが行政の支援パッケージの通称にまで入り込んだという事実でしょう。人民網日本のX投稿でも「ザリガニ飼育」と表現されています。

 ただし、支援案には細かい条件もあります。AIGCモデル呼び出し費用の補助は、区内で一定条件を満たすAIGC企業が国内主要マルチモーダル大規模モデルを利用する場合に限られます。最高200万元の支援対象も、単なるコード貢献だけではなく、国際的な主流コミュニティへの重要コード貢献や、竜崗区の優位産業向け技能パッケージの公開、具身智能デバイス(物理的な体を持ったAIロボ)と連携するアプリ開発まで含む幅広い枠組みです。つまり「AIに補助金を出す」という単純な話ではなく、開発・導入・実証・居住・資金調達までを一体化してOPCを産業単位として育てようとする仕組みだといえます。

 こうした動きは竜崗区だけにとどまりません。3月9日には無錫高新区も「養龍蝦12条」の意見募集稿を公表し、OpenClawを製造業へ組み込む方向で最大500万元規模の支援策を公表。上海でも3月27日から29日に開かれる全球開発者先鋒大会でOpenClawハッカソンなどの関連企画が組まれています。補助金とイベントでは性質が異なりますが、中国の複数の都市がAIエージェントをめぐる主導権争いに踏み込み始めたことは確かです。

 なお、OpenClawはPC上で強力な権限を持てるAIエージェントであることから、スキル拡張経由の汚染、設定ミスによる公開、APIキー漏洩、プロンプト注入での乗っ取りなど、様々なリスクを抱えます「セキュリティ上の悪夢」「完全に安全な設定は存在しない」と指摘されるほど極めて危険性が高いですから、行政が奨励するとはとんでもない話に聞こえます。

 実際、工業情報化部系のネット安全情報共有プラットフォームは3月8日、OpenClawについて、デフォルト設定や不適切な設定のままだとネット攻撃や情報漏えいにつながる高い安全リスクがあると警告。地方政府が支援案を公示したのと同時期に中央の安全当局が警鐘を鳴らしているわけです。中国当局がAIエージェントを、熱狂と警戒の両方を抱えたまま受け入れ始めた転換点として注視すべき動きだといえます。

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