今年4月、「若者はなぜスマホを買い換えないのか」との記事が中国語SNS、Weiboでバズり、閲覧数4.1億を記録。Counterpointのデータによると中国スマホユーザーの平均買い換え周期は31カ月となり、このデータを裏付ける形に。なお、2017年は22カ月でした。
これはスマホ市場全体にも影響が出ています。2022年第1四半期、グローバルスマホ市場の出荷台数は前年比11%減、中国市場は同じく18%減となりました。2017~2022年、グローバルと中国市場のスマホ出荷台数は4年連続で減少しているとの統計もあります。
「スマホ市場の冷え込み」はいつまで続くのか、各メーカーはどのような対策を立てているのでしょうか?中国「鳳凰網科技」の論評からご紹介します。
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5Gへの反応もイマイチ
2017年、スマホ市場に減少が発生したとき、スマホ製品のイノベーションがボトルネックに入った一方で価格が上昇し続けたことで、市場が基本的に飽和する状況の中でユーザーの需要が弱くなっていっているとの現象は、既に現れ始めていました。
基本的な情勢は4年前から変化なく、スマホ業界は倒産、撤退の波が2018年から始まり、スマホ業界は後半戦に入り、トップ集団の情勢も落ち着いてきています。製品面で、中国スマホメーカーは市場と利益確保のためにハイエンド路線に入り、折りたたみディスプレイ、半導体チップ開発、撮影録画、急速充電技術などに力を入れましたが、依然として市場を盛り上げるほどのインパクトはありません。
「買い換え周期の低潮期にある」と話すのは、深圳で携帯電話販売店を経営して10年になるという黄鵬。2014年頃、携帯電話市場は物理キーモデルからスマホへの転換期にあり、2017年には3Gから4Gへの買換えがほぼ完了、2019年に4Gから5Gへの行進が始まったものの、今日に至るまで、コンシューマーユーザーにとって5Gの存在感はあまり強くないのだとか。
「折りたたみディスプレイ」もメーカーが期待するほどにはウケない
中国スマホメーカー各社はハイエンド化のために、次々と折りたたみディスプレイスマホを投入。今年4月も、vivo X Fold、Mate Xs 2がリリースされています。
ところが、メーカーが熱を上げているのに対してユーザーは冷ややか。「タブレットでよくない?」「代替不可能性がない」「値段が下がってきたとはいえまだ高い」といった声が多いようです。前出黄鵬は「折りたたみスマホは実際の意義よりも戦略的意義の方が大きい」といいます。
ほかにも、ユーザーがスマホを選ぶ際に注目するポイントとして「カメラ機能」、「ディスプレイリフレッシュレート」、「バッテリーもち」、「スペック」、「デザイン」の5つがあり、いずれも各メーカー力を入れているところ。
カメラ機能では画素数狭小、レンズの数競争、イメージセンサー競争、画像競争競争、処理チップ競争を繰り広げてきました。200W有線高速充電も既に実用化され、120W急速充電は中国メーカーだと標準装備に。
半導体チップでも、小米、vivo、OPPO、いずれも昨年自社開発のチップを発表。ただし、いずれも画像情報処理のチップで、難度のより高いSoCではありません。
華為の麒麟が制限を受けてから、中国メーカーのフラッグシップモデルはいずれもスナドラを使用していますが、発熱問題などパフォーマンスがあまりよくなく、スマホメーカー側にもこれといって有効な対策が打てていない状況。
小規模ブランドは「身売り先がみつかれば御の字」の惨状
中国スマホ市場のプレイヤーも、2018年以降相当少なくなってきました。金立撤退、錘子破産、楽視もいなくなり、一加はOPPOへ出戻り。黑鲨はテンセントに買収されてからはVR/ARを作るようになり、魅族も吉利に買収されたと伝えられています。
小規模ブランドはコストが高く、規模も技術の強みもないので、生存が難しい情勢。今や、小規模ブランドは買い手が付けば御の字という有様で、シェア上位に颯爽と躍り出るダークホースを見ることはもう難しいでしょう。
「スマホ市場は大衆市場であり、細分化ブランドは存在が難しい。結局はシェア上位の鼎立になる」との意見も。華為がチップ供給制限を受けたことで市場シェアを失ったのが、ここ数年で最大の変化となっています。
5大メーカーは中国勢の台数減目立つ
国際市場ではサムスン、アップル、シャオミ、OPPO、vivoが5大メーカーで、季節周期性の影響を受けて例えば2021年第2四半期にはシャオミがグローバル第2位にふっと浮上したような四半期ごとの順位には変動があるにせよ、基本的には安定しています。
ところが、スマホ市場全体が頭打ちの中、各社いろいろ手は尽くしてはいるものの、厳しい情勢が続きます。今年第1四半期の出荷台数を見ると、アップルは前年同期比2.2%増、サムスンは横ばいを維持したものの、小米、OPPO、vivoはいずれも15%以上の減少。
中国国内市場に目を向けると、回復期にある栄耀が上昇気流に乗っているほかは、OPPO、vivoともに前年同期比30%以上の減少という凄まじい数字になっています。
天風国際アナリスト郭明錤によると、中国の主要Androidスマホブランドは既に1.7億台の注文を削減し、これは今年の出荷計画の1/5に当たります。
黄鵬の観察によれば、深圳の身の回りのスマホ店では、今年第1四半期の販売台数はこれまでより3割程度少ないようです。
スマホの関連サプライヤーも、転換を模索し始めています。「スマホの受注比重が高ければ高いほど頭が痛い」と第一手機(携帯電話)界研究院院長孫燕飚は指摘します。舜宇光学、欧菲光といったサプライヤーは、重心をスマホ事業からスマート自動車や新事業へ映していくと発表しているとのこと。
孫燕飚によれば、「今の業界の共通認識として、今後三年間のスマホ市場は、消費がヘタヘタな状態になるだろう」といいます。
悲観的な市場予測、中国スマホメーカーの対応
中国スマホメーカーの基本戦略は、基本的に同じようなもの。製品の方向性としては、ハイエンド志向。市場はグローバル展開。この基礎の上に、その他の製品や新事業を展開するというもの。
今後もミドルレンジ・ローエンド市場が血みどろの殺し合いになるのは変化がないため、高単価のハイエンド市場をとりにいかなければ儲けが出ない情勢。この路線で取り組んでいることといえば、折りたたみディスプレイ、チップ開発、撮影機能更新が重点ですが、昨年の情勢からみると捗々しくない様子。
IoTエコシステムも新機軸として期待されているところですが、2017年にスマホ市場が縮小したときに各メーカー試しており、新たなストーリーとはいい難いところ。スマホメーカーは次々と電気自動車に参入しており、その代表がシャオミと華為です。
孫燕飚によると、多くの華為スマホ販売店は、華為が自動車業務に転換したのを見て事業を続けるべきか悩んでいるとのこと。シャオミが自動車製造をやるといい出してもう1年余りになりますが、公式発表によれば量産化は2024年になるそうです。
スマホメーカー各社の試行錯誤はいまだ継続中ですが、画期的なイノベーションなくして爆発的な成長は難しいところ。次の画期的なハードウェアがどうすれば出てくるかは、まだ見えていません。
店をはじめてから10年の黄鵬は、最盛期には8店舗を運営していましたが、今では1店舗を残すのみ。「今が踏ん張りどころ」との思いは、業界関係者の態度を代表しているのかもしれません。
総評
3G→4Gのような、誰もが買い替えを検討するような画期的変化に乏しく、主要メーカーすら押し並べて苦戦しているスマホ業界。
「いままでできなかったこれができる!」「こんなに便利なら今すぐ欲しい!」みたいな製品が出てくるまでは、「ユーザーの買い替え周期=バッテリーの限界」のような市況が続きそうです。