
喧嘩相手と、まさかの握手。
Anthropicとトランプ政権の関係に、意外な雪解けの兆しが見えてきました。TechCrunchが伝えています。
4月17日、Anthropic CEOのダリオ・アモデイが、ベッセント財務長官とワイルズ大統領首席補佐官らとホワイトハウスで会談しました。ホワイトハウスはこの会合を「生産的で建設的」な「初顔合わせ」と評価。AIの安全性やサイバーセキュリティ、AI競争における米国のリーダーシップについて話し合ったとのことです。
そもそもの発端は、2月末に表面化した契約交渉の決裂です。米国防総省は3月上旬、Anthropicを「サプライチェーンリスク」に指定しました。原因は、Anthropicが自社AIの利用に安全性の制約を設けていたこと。完全自律型兵器や米国内の大規模監視には使わせない、というラインを譲らなかったんですね。
一方、国防総省側は、契約企業が合法的な使用を制限して軍の指揮命令系統に入り込むことは認められない、という趣旨の立場を示し、交渉が決裂しました。
サプライチェーンリスク指定とは、平たく言えば政府調達上の強い排除措置です。通常は外国の諜報機関やテロ組織、外国の敵対者などを念頭に置く枠組みで、米国企業が公開指定されるのは極めて異例。イメージとしては、政府から「おまえの技術は危険だから調達から外す」と宣告されたようなものです。
Anthropicは3月に「不当な報復だ」として連邦裁判所に提訴。サンフランシスコの連邦地裁判事リタ・リンは3月26日に仮差止命令を出し、指定と連邦機関の使用停止指示を一時的に止めました。なお、4月8日にはワシントンD.C.の連邦控訴裁が、別件で指定の一時停止を求めたAnthropicの申立てを退けています。ただし、これは最終判断ではなく、法廷闘争はまだ続いています。
しかし面白いのが、政権内部の温度差です。政権筋はAxiosに対し「国防総省以外のすべての機関がAnthropicの技術を使いたがっている」と語っています。実際、ベッセント財務長官とパウエルFRB議長は大手銀行のCEOを招集して、Anthropicの新モデル「Mythos」がもたらすサイバーリスクを警告したうえで、脆弱性検出への活用を促しました。JPモルガンやゴールドマン・サックス、シティグループなどがすでに内部テストに参加しているとBloombergが伝えています。Mythosはソフトウェアの脆弱性を発見し、悪用コードを組み立てる能力が突出していて、Anthropic自身も一般提供はしない方針を示しているほどなんです。
そういえば、この騒動の裏でOpenAIがペンタゴンとの契約を発表したんですが、消費者から反発を浴びまして。その後、AnthropicのClaudeが米App Storeの無料アプリランキングで1位に浮上するという皮肉な展開になっています。倫理を貫いたら人気が出た、というわけです。
ペンタゴンとは法廷で争いつつ、財務省やFRBとは握手する。「安全性」を理由に調達上のリスク指定を受けた企業が、まさにその安全性を重視する姿勢やサイバー能力の高さゆえに他の政府機関から注目されるという、なんとも皮肉な構図です。AI企業と政府の力学は、もはや「敵か味方か」では割り切れないところまで来ているのかもしれません。

















