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ソフトバンクの「契約拒否」訴訟、一審は原告敗訴。

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 国内ブログ「口だけは達者なトーシローのblog」を開設しているユーザーが、ソフトバンクモバイルに対して本人訴訟を起こしたのは以前お伝えした通り。

 このユーザーはソフトバンクのみまもりケータイを5回線契約後、短期解約した後、再度ソフトバンクを契約しようとした際、ソフトバンクから「総合的判断」という理由で、契約を拒否されました。

 しかし電気通信事業法では、SoftBank含む認定キャリアに公益事業特権を付与する代わりに、電気通信役務の提供が義務付けられています。電気通信事業法121条によれば、料金滞納といった正当な理由がない限り、キャリアは契約に応じる義務があります。

 これについて簡易裁判所の判決は以下の通り。

(3)以上のことから、原告が平成26年3月に被告との間で5回線分の回線契約を結んだ目的は、KDDI及びドコモが展開するキャンペーン適用資格である被告の契約者たる地位を取得するためであったことが推認できるのであって、当時、原告には被告から電気通信サービスを適切に利用する意思はなかったと評価できる。  原告は適切に利用する意思があったと主張するが、これを認めることはできない。

電気通信事業法第121条第1項に規定される同認定電気通信事業者が電気通信役務の提供を拒むことができる正当な理由がある場合とは、申し込みを承諾することにより電気通信事業者の利益を不当に害する場合が該当する。
 そして、電気通信サービスを適切に利用する意思を有しない者の申し込みに対して、電気通信事業者に承諾義務を課すことによって、電気通信事業者の事務処理を煩わせるおそれのある場合も含まれる。

(2)被告が本件契約を拒絶したのは、上記のとおり、原告が被告から電気通信サービスの提供を受ける意思がないにもかかわらず、5回線の契約を結びわずか5日後ないし13日後にすべての回線を解約し、被告の事務処理手続きを煩わせた平成26年3月から8ヶ月程度しか経っていない同年11月に行われたものである。
 かかる事情を考慮した結果、平成26年11月時点において、被告が原告に対して、電気通信サービスの提供を受ける意思を有してはいないと判断したことは合理的であって、本件契約拒否の拒絶には正当な理由があったものと評価できるので、本件契約拒否が、被告にとって不可避ではなかった旨及び過剰措置であったとの原告の主張は認めることはできない。

 つまりキャッシュバック目的で契約して回線を即解約した場合、今後の契約を(8ヶ月程度の期間を空けたとしても)、理由の開示なく拒否してもよいという判決が示されたことになります。

 今回のケースだけを考えると、さすがに原告の解約があまりにも短期間過ぎたのではないかとも言えます。しかし他方、iPhoneを半年以上利用した上で解約したユーザーが、再びSoftBankを契約しようとした際に「総合的判断」により契約拒否を受けるといったケースも報告されており、決して一般ユーザーも無関係の話とは言えません。

 私が判決文で最も違和感を感じたのは、電気通信事業法第121条の「(契約を拒否できる)正当な理由」に、「電気通信事業者の事務処理を煩わせるおそれのある場合」を含めた部分です。なぜなら、そのような事務処理について、既に通信キャリアは「事務手数料」「解除料金」といった形で金銭的に補填しているからです。原告やユーザーは、払うべきものを払って解約しているわけです。

 さらに、NTT docomoの例を挙げると、MNP転出手数料が通常2000円のところ、2in1サービスのBナンバーなど「端末購入を伴わない新規契約」で作った回線を短期解約してMNPする場合、手数料を5000円に値上げしています。短期解約の「煩わしい事務処理」を、金銭で補う方法が存在するということです。また、同じくドコモは、ユーザーの過去の履歴に傷がある場合でも、ユーザーが「預託金」を預けることで、通信契約を拒否せずに応じる例もあります。

 つまりSoftBank側の制度上の不備・至らない部分を、ユーザーに「総合的判断」として押し付けているとも言えます。国民の資産たる電波を、国から特権的に認可される条件として、ソフトバンクには通信サービスを提供する義務が課せられています。そして事務処理を煩わせられる場合について金銭で補填し、義務を履行する方法も存在するのにも関わらず、それを怠り、義務を放棄して「総合的判断」で誤魔化すのは、通信事業者の姿勢として大いに問題があります。

 もちろん料金滞納・不正契約・犯罪利用は撲滅すべきですが、最低限、法律に基づいて契約には応じるべきだと思います。今回はあくまで簡易裁判所での判決に過ぎず、原告は控訴予定。地方裁判所での展開も注意深く見守りたいところです。

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