Nothing Phone (3)を一定期間お借りしたのでレビューします。国内価格は12GB/256GBが12万4800円から。
見た目が奇抜で、カメラ位置も一見、意味不明に見えます。
ただ背面を縦方向で眺めていると、少しだけ腑に落ちます。まず右上の円型画面で注目を引いて、目線を左に遷移させ、端すぎるカメラがコーナーで下に誘導、そこから右に遷移して、下のグリッドにこぼれ落ちる、つまり芸術作品の視線誘導のような概念を感じました。
その後はどういった意図があるのか筆者にはまだ掴めていませんが、左下の列のグラデーションや、各パーツなど、色々眺めて考えてしまいます。この消費社会の現代、すぐに咀嚼できないわかりにくいものは、ときには時代を超える耐性に繋がることがあります。そうしてぼんやり見ていると、もしかすると良いデザインなのかな、まだわからないな、と思索にふけることができます。
とはいえ工業製品である宿命からは逃れられません。背面に伏せたときに録音できる「Flip to Record」を使うと、赤いドットが。スマホの背面に装着できるボイスレコーダーなんてものも出てきている昨今、ちゃんと流行を抑えています。
半透明の背面パネルに、円形の「Glyphマトリックス」というドット表示の「ミニ画面」が背面に鎮座します。ドットは489個のマイクロLEDで構成されており、少し懐かしさを感じます。
ここに時刻や通知アイコン、充電進行、ちょっとしたアニメーションまで表示できます。無意味な装飾品ばかりではなく、機能美も兼ね備えているのが良いなと感じます。
ボディは角張りすぎず、エッジの厚みは前面で1.87mmに統一。標準で画面保護フィルムが貼付済み。
厚みは標準的です。
画面は6.67インチのフレキシブルAMOLED。
解像度は1260×2800の1.5K。輝度はHDRピークで最大4500ニト。屋外全白輝度はそこまで出ませんが、かなり明るく、直射日光下でも視認性を確保。リフレッシュレートは30〜120Hzの可変駆動で、省電力性と滑らかさを両立。
SoCはQualcomm Snapdragon 8s Gen 4。最新最上位の8 Elite系ではないものの、日常利用には十分な性能です。UFS 4.0ストレージとLPDDR5Xメモリの組み合わせで、12GB/256GBと16GB/512GBの2構成を用意します。全体としてキビキビしており、ほとんどの人は最上位SoCでなくとも十分に感じると思いますが、唯一、XメインTLでスクロール終端でごくわずかなコマ落ちあり。ベンチマークスコアは以下の通り。
- AnTuTu v10.5.2:191万5358点
- 3DMark Wild Life Extreme Stress Test: Best 4264, lowest 2814, 66%
- 3DMark Steel Nomad Light:1677, 12.43fps
- 3DMark Solar Bay:7612, 28.95fps
- Work 3.0 performance:13977
- Geekbench 6 CPU: Single 2141, Multi 6823
- Geekbench 6 GPU(OpenCL):13385
画面内指紋認証はやや下寄りなので好みがわかれると思います。大型なのでもう少し上だと嬉しいですね。手を洗った後に少し濡れてるかな、という状態でも認識し、解錠は快適です。
バッテリーは高密度のシリコンカーボン採用で5150mAh。有線65W・無線15W・リバース給電にも対応します。1時間弱で満充電です。有線充電65W充電の頼もしさは日々の満足度を確実に上げてくれます。やはり30W以下は物足りないですね。
カメラは5000万画素×3の構成。メインは1/1.3インチ・F1.68・OIS、望遠はペリスコープ式3倍・OIS、超広角は114度。
日中の解像感は良好。
メインカメラは照度が少し落ちた程度なら問題なし。東京駅のぽすくまのディテールも撮れています。
望遠も実用性があります。6倍以上はちょっと厳しいですが、日常的に使う範囲では十分撮れます。
Nothingの機種のカメラをガッツリ試したのは、主に廉価モデルで、このため凡庸でまだ努力不足の印象も少しありました。ただ、やはり久々の準ハイエンド・フラッグシップモデルだけあって気合が入っています。
超広角は周辺描写や精細感、低照度時に課題を感じる場面もあるものの、日中屋外では満足の行く作例を撮れることも多かったです。これは空と雲、光の質感はよく撮れたと思います。
廉価モデルはご飯が美味しそうに撮れず、適宜、自動色調節をオンにするなど、微妙な調整が必要になるのが煩わしかったです。本機は特に操作せずとも良い感じの色味で撮れるのが好印象です。
打率は上がりましたが、もちろん自動色調節を切り替えてもok、好みに応じて設定しましょう。以下、左が自動色調節オフ、右がオン。
超広角は低照度では薄まった印象があるのと、フレアがよく出る傾向。フレアはレンズの味でもあるので、うまく作品に落とし込みたいところ。
望遠の都市夜景もよく撮れています。
都市夜景はよく健闘していると思います。

超広角

2倍

3倍

6倍
夜景で近くに無理な光源があっても粘ってくれるので、準ハイエンドSoCのISPに相応の仕事はさせていると思います。価格帯相応の水準のカメラを持っていると思います。
出荷時はAndroid 15ベースの「Nothing OS 3.5」。
思いつきを第二の記憶にする挑戦「Essential Space」も引き続き対応。Nothingらしい独特の通知音、モノトーン×ドット絵、フォントによって独自の世界観を構築。さらに電源切って充電中の細かい部分まで、よく作り込もうと努力が伺えます。Nothing製品を使う醍醐味はこういうところにあると思います。
ハプティックフィードバックも良好だと感じます。機種によっては画面上部に行くほどバイブの感触が露骨に弱々しく、安っぽくなる場合もあるのですが、ほぼ均一なフィードバックがかえってくるので違和感もありません。
スピーカー音質は、全域フラットに近く、あえて言えば低音が少しだけ弱い傾向。同社の音響製品、ちょうどNothing Headphone (1)のような原音忠実指向に近いと感じました。最大音量はかなり大きく、使いやすいです。それでいて箱鳴りは抑えており、音響設計にも努力のあとが伺えます。デジタル感のある不自然な増幅の感触は少なく、音の繋ぎ目が滑らかなのに好感を持ちました。女性ボーカルの高域の歯擦音が少し気になりましたが、全般的に、この価格帯相応以上の実力があるのではないかと感じました。
なお、Nothing Headphone (1)との利用時にはLDAC接続やChatGPTが利用できるので、こちらもあわせて利用すると楽しいはずです。
アップデート保証はOS 5回・セキュリティ7年とNothing史上最長。長く使いたい人に嬉しいですね。
筐体はIP68相当の防水防塵に対応し、指紋・顔認証の両方を備えます。日本向けにはしっかりFeliCa(おサイフケータイ)対応。Wi‑Fi 7やBluetooth 6.0もサポートします。
項目 | Nothing Phone (3) |
---|---|
OS | Nothing OS 3.5(Android 15)/Android 16・Nothing OS 4.0は2025年Q3配信予定 |
SoC | Qualcomm Snapdragon 8s Gen 4(SM8735) |
実行メモリ/内蔵ストレージ | 12GB/256GB、16GB/512GB(LPDDR5X/UFS4.0) |
画面 | 6.67インチ AMOLED(1260×2800)、120Hz(30〜120Hz可変/LTPO非対応)、最大4500ニト、約1000Hzタッチ、前面Gorilla Glass 7i |
背面カメラ | 5000万画素(F1.68・1/1.3型・OIS)+5000万画素望遠(3倍光学・OIS)+5000万画素超広角(114°)/全カメラ4K60 |
前面カメラ | 5000万画素、4K60 |
電池 | 5150mAh(シリコンカーボン)、65W有線、15Wワイヤレス、リバース充電対応 |
寸法・重量 | 160.60×75.59×8.99mm・218g |
防水防塵 | IP68 |
生体認証 | 画面内指紋/顔認証(簡易) |
FeliCa | 対応(日本モデル) |
通信 | 5G/Wi‑Fi 7、デュアルnanoSIM+eSIM |
その他 | 背面小型画面、赤色録画インジケータ、背面ゴリラガラスVictus |
高いデザイン性に価格相応の水準のカメラをしっかり搭載、満足度の高い一台だと思います。特に背面ディスプレイは一時期他社にも例がありましたが、「載せれるから載せてみた」的な安直な飛び道具だった印象は拭えません。美的才覚のある稀有なメーカーがデザインにしっかり落とし込んだことは意義があり、この挑戦を支持したいです。高級腕時計のように身につける芸術品として、しかし実用性も忘れない、本機は検討候補に入れて損はないと思います。