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HTCが日本では売れない理由。

 台湾HTCが発表するところによると、2011年10~12月期決算は売上高が前年同期比2%減で、前期比25%減の約2600億円となり、最終利益は同26%減(同41%減)の約280億円と、09年10~12月期以来2年ぶりの減収減益となったことが明らかとなった。

 HTCはWindowsMobileからAndroidへとシフトし、スマートフォン市場を牽引してきたが、サムスンのシェア拡大競争に劣勢であることが響いた形だ。

 なぜHTCが日本で受けないのだろうか、ふと疑問が浮かぶ。

 確かにヘビーユーザーからすれば、本来ならばHTC製と言えば高嶺の花で、海外製の高性能スマートフォンの代名詞だった。

 しかしながら、携帯電話屋の売場を見渡してみて欲しい。WiMAX搭載を謳ったHTC EVOはすぐに安売り状態で、今やEVO 3Dもあっという間にMNP0円になるなど、とても「高嶺の花」と呼ぶには似つかわしくない状況。HTC Desire HDも一括特価で売られる光景が多く見られた。

 やはりHTC製スマートフォンが日本人向けではない、というこの一言に尽きるのではないだろうか。

 デザインもどちらかというとストイックで、重さも重量級、お世辞にも大衆受けしそうなデザインではない。HTC Senseも決して使いづらいというほどではないが、どこか日本人のセンスとは相容れない。そう、ミーハーな層にはとても売れそうにないのである。

 こうした点はいくつも挙げられるが、単純にHTCが欧米諸国の市場を重視した製品展開をしており、日本で本気の勝負するつもりではないのではないか。日本市場をマーケティングの対象外としてプロダクトを進めているがゆえに日本では受けないという、簡単な話とも思える。

 しかし、サムスンはGalaxyS2でワンセグに対応し、LG電子はOptimus L-01Dでおサイフケータイに対応するなど、日本市場向けの機能を搭載するようローカライズに努めている。実際、販売ランキング上でもサムスンは上位で、L-01Dも健闘を見せている。SonyEricssonも周知の通り、日本向けの機能をひと通り抑えたXperia acroを投入して大きなヒットを飛ばした。

 以前はHTCもそうした日本向けの機能を追加するローカライズは「検討はしている」との話もあったが、今やそんな気配はなく、値段しか見ていない一部消費者にしか訴求できていない。

 とはいえ、従来であれば、こうした点はそこまで問題視はされなかった。本来、スペックのみを求めるマニア層から絶大な支持を受けていたからだ。

 というのも、HTCといえばデザインなど度外視で、とにかく最新OS、最強スペックで製品を投入し、ソフトウェア面はカスタムROMなどの「改造」を行うユーザーがコミュニティを活気づけるというスパイラルが、確かに存在していた。スマートフォンの海外最大のハックコミュニティである「xdaデベロッパーズ」自体、そもそもHTC端末であるBlue Angel XDAをより使いやすくするために誕生したという経緯がある。

 しかしながら、現在はそうでもない。HTCがブートローダーのロックを頑強にし、コアなファンを締め出すなど迷走を始める一方、ソニエリは多くの開発者を得て、現在は最新OSを常にリリースし、改造やカスタムROMも豊富だ。サムスンもGoogleのフラッグシップであるNexusを製造する地位をHTCから奪い、さらにスペック面でもHTCよりも優位に立っている。他の海外メーカーもスペック競争に励んでおり、もはやHTCを支えるアイデンティティが、激しい競争の末、揺らいでいる。本来ならばHTCがいるべきポジションに、見事に他のメーカーが居座っているのだ。

 こうした流れもあって、HTCが、特に国内市場において、あまり支持されなくなったと言える。HTCのハイエンドが積極的に投入されるわけでもなく、EVOは既に鮮度が落ちてからの発売だったともなれば、尚更だろう。

 KDDIの戦略上、HTC端末は単純に「増大するトラフィックを受け流すべく、WiMAX通信を使わせるための端末」に過ぎないのではないか。単なる高速通信と、(MNP純増数を稼ぐための施策で)異常に安くなったゆえに投げ売りされる、そういう役割しか日本市場でHTC端末は担っていないのだ。

 こうした現状も、docomoからも供給され、全社からHTCが販売されれば風向きも変わりそうとも思えるが、かつてHTCはWindowsMobileの時代にはdocomoを含めて全社に端末を供給していたのだ。だが、もちろんiPhoneに押されていた時期でもあり、鳴かず飛ばずで、終わってしまった。Android1.5を搭載したマニアックなHT-03Aもdocomoから発売はされたが、これも例に漏れず不良在庫の山であったとか。DesireやDesire HDは普通に使えた良機であったが、その時点ではSoftBank一社からしか供給されないような状態になっていた。

 元からあまり日本人向けではないことに加えて、キャリアの戦略上の位置付けや、タイミングの悪さも加わって、今のHTCの風向きの悪さが生まれている。

 これだけは言っておくが、HTCの作る製品が悪いということは、決してない。

 ソフトウェア面のサクサク感や、金属を多用した筐体の質感、裏蓋を開けた時にも感じられる高級感など、オーナーの所有欲を大いに満たしてくれる点は、多くのファンがいることも頷ける。こうしたモノづくりは評価されて然るべきではないだろうか。

 HTCは、決してHTCらしい良さを見失わず、日本市場で消費者に価値を正当に認められるよう戦って欲しいと、切に願うばかりだ。

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