弊誌はアフィリエイト広告を利用しています。

「ツートップ戦略」考:ドコモの事実上の「ワントップ」に躍り出た「XPERIA A SO-04E」は一体どういう機種か?

ツートップ戦略を考える

 NTTドコモの2013年の夏モデルといえば、何かとツートップ戦略が話題です。これは看板機種であるXPERIAとGALAXYを並べて、販促費を集中、価格面でも差別して売っていこうとするドコモの新しい作戦です。

 多くの機種が最新のAndroid 4.2で、FullHD解像度を備える、非常に強力な布陣を構えていたドコモの夏モデル。そんな中、Android4.1で、HD解像度という、明らかにスペックで劣っていたのが「XPERIA A(エース) SO-04E」です。ハイスペックなグローバルモデルである「GALAXY S4 SC-04E」とのツートップだなんて、「XPERIA Aでは力不足ではないか?」とまで囁かれていました。

 しかし蓋を開けてみると、XPERIA Aの売上はGALAXY S4の2倍となる、110万台を突破していたことが明らかとなっています。とてつもない販売数です。売上だけなら、もはや「ワントップ」とも言える一人勝ち状態。

 一体、なぜXPERIA Aはここまで売れているのでしょうか。

必ずしもXPERIA Zより優れているとは言えない

 「XPERIA Z SO-02E」と比べると、Snapdragon S4 クアッドコアで実行用メモリ2GBなど、スペックはほぼ据え置き。筐体サイズ、画面サイズおよび解像度がその差異となります。ディスプレイは、Zは5インチ、Aは4.6インチ。厚みは、Zに比して増加しています。

 Zより進化した機種、というわけではないのです。むしろ、廉価版と見たほうが適切でしょう。

 ただし、このハードウェアがワンランク、小柄になったというのは、必ずしも悪いことばかりではありません。5インチのXPERIA Zは、手の小さな自分が片手操作をするには、わりとギリギリのサイズだと思います。画面の端のオブジェクトをタップする時、少しだけ気合が必要です。しかし、4.6インチのXPERIA Aでは、そのようなことはありません。ギリギリどころか、余裕さえあります。逆に厚みのおかげでホールド感は増しているように感じます。片手操作は大変しやすいと思います。スマートフォンの巨大化の波の渦中にある夏モデルの中でも、際立って扱いやすいです。

 また、便利な進化としては、Zにはなかったカメラの物理シャッターキーが、XPERIA Aでは追加されていることが大きいと感じます。画面を消灯した状態から、カメラキー長押しで、いきなりカメラを起動することができます。取り回しのしやすい小柄なボディで、さっと撮れるので、シャッターチャンスを逃しません。

 また、SONYが主に海外の顧客に向けて宣伝しているように、防水防塵を活かし、「水中でシャッターキーを押せる」といったメリットもあります。

 国内市場にしかない国内メーカーの機種では、サードパーティー製品が不足しがちですが、本機種は「XPERIA ZR」の名称で、グローバル市場にも出ているだけあって、SPIGEN SGPのガラスフィルムなどが出ているのも個人的には使いやすいと感じるところ。

 また、細かい点ではありますが、充電の蓋が後ろに回転してくれるおかげで、蓋と充電ケーブルが干渉することが少ないです。干渉して蓋がねじれていると、防水性の維持が不安になるからです。どちらも卓上ホルダに対応していますが、出先でmicroUSBを接続したくなるシチュエーションはやはりあるので、この点も重視したいところです。

(左:XPERIA Z, 右:XPERIA A)

「ツートップ」で、選ばれたのは「持ちやすさ」だった

 何かと叩かれる「ツートップ戦略」ですが、「販売のしやすさ」は大きいのではと思います。

 従来、GALAXYは「NEXTシリーズ」、XPERIAはSXやAXといった普及用機種は「withシリーズ」に位置づけられていました。コンパクト、普及機、白や黒だけではない馴染みやすいカラーバリエーション。それが「withシリーズ」でした。

 単純に考えると、ツートップとは、要するに前期まで存在した区分「NEXTシリーズ」と「withシリーズ」の、それぞれの最もよいブランドを挙げたに過ぎないでしょう。販売現場のセールストークはしやすいのではと推測します。(翻って、他のメーカーの機種を販売しなければならない時には、逆風でしょうが)

 「ツートップ戦略」とは、つまりスマートフォンとして一番いいのはこれ(GALAXY)ですよ、これまでのケータイユーザーさんにも扱いやすい機種はこれ(XPERIA)ですよ、という売り方です。「こんなにたくさんあります」より、「おすすめはこの2つです」というクエスチョンの方が、薦める方も薦められる方もわかりやすいでしょう。お客さんをヒアリングして、どちらも合わなければ、他のラインナップを適切に薦めれば、購入へと繋げられるでしょう。

 この成果は実際の購入者層の傾向にもあらわれており、GALAXY S4の購入者の半数がスマホからの買い替えで、XPERIA Aの購入者の62%がフィーチャーフォンからの買い替えでした。(ITmedia Mobile

 現在、アーリーアダプターはとっくにスマートフォンを買っていて、ごくごく普通のお客さんが、なんとなくスマートフォンを購入している時期にあります。より大きなパイを狙った位置付けの機種がXPERIA Aです。OSバージョンやスペックは気にしない層が買っています。多少値段は高くても、月々の割引が大きければよくて、機種を一括ではなく分割購入していく普通のお客さんたちです。

 となれば、重視されるのは、店頭で機種のモックを手にとって、普段持ち歩くケータイとして、持ちやすいか、そして使いやすそうか?そんな点でしょう。

 大画面のスマートフォンばかりで敬遠されがちな昨今、4インチ台のスマートフォンは、フィーチャーフォンの延長を求める一般ユーザーには貴重です。OSやスペックなんて、言われてもわかりません。解像度という単語が何なのかさえもよくわかっていません。でも、ミントやピンクもまじえたカラーバリエーションは素敵。ドコモも店員さんもおすすめだから、安心。

 そんなふうに考えるお客さんたちが買っていった結果が、110万台です。蓋を開けてみたらSONYの一人勝ちだった、というわけです。

実際の使い勝手は「Androidとして」普通

 とにかく角張って持ちづらいとの評価もあったXPERIA Zですが、廉価版のXPERIA Aはここまで持ちやすいジャストサイズに仕上げてきて、そして驚異的な販売台数という結果を出したSONYはよく頑張ったと思います。

 しかし、ではフィーチャーフォンからの誘引の工夫が凝らされているかどうかというと、正直、あまりされてはいないと思います。パナソニックやNECの方がよほど工夫を凝らしているでしょう。(その両社は、携帯事業に関して残念な動きばかりが目につきますが)

 XPERIAシリーズの魅力は、優れたカメラやWalkmanアプリなどのマルチメディアと、SONY製品との連携です。ケータイユーザーから乗り換えましょう、なんて作りは、サイズ以外、特に見当たりません。

 パナソニックの「ELUGA P P-03E」の方が、よほどケータイユーザの誘引を考えています。「One Hand Plus」やホバー機能、「ケータイキー」など、数多くの独自機能を盛り込んでいます。大画面ながらも片手操作のしやすい機種となっており、初心者にもおすすめできる機種です。

 一方、XPERIA Aは、マルチメディアやSONY製品との連携以外の部分は、驚くほどオーソドックスな「Androidスマートフォン」そのものです。非常に標準的なUIで、Android端末の枠を逸脱していません。通知バーのトグルスイッチ、AndroidにありがちなUIを踏襲したホーム画面、Googleが模範的とするバックキー・ホームキー・履歴ボタンの配置のオンスクリーンキー……どれをとっても標準的。SONY独自の作り込みというのは、意外にも控えめです。(X10やCLIEとは大違い)

 この点を考えると、たとえXPERIA Aにケータイユーザーが違和感を持っても、とにかくAを一度使いこなしてしまえば、今後のスマホ選びはラク、という言い方もできるかもしれません。ケータイユーザーの抱く違和感の多くが、Androidスマートフォン全体への違和感となります。Androidとして標準的な機種であるXPERIA Aに一度慣れてしまえば、他の多くのAndroidスマートフォンを次回購入する時には、むしろスムーズに新機種への移行ができるとも言えます。

 そういう意味で、XPERIA Aというのは、ケータイユーザーがケータイを捨てて、スマートフォンに移行する最初の機種としては、最適なのかもしれません。

結論:売上「ワントップ」もやむなし

 多くの一般ユーザーには、今後のことを考えてもおすすめできる、オーソドックスな機種。一方、ファブレット然とした大型スマートフォンに嫌気が差したユーザーにも最適です。なるほど、使ってみて、売れる理由もよくわかります。

 何より、この機種、枯れたスペックで、下手に背伸びしてないだけあって、とにかく不具合も少ないですからね。いくらカタログスペックがよくても、ここで躓いていたらどうしようもありません。

 本機種は、「Androidスマートフォン」として、クセが少なくて、本当にいい機種だと思います。

 

[13:58]一部機種の型番が異なっていた部分の訂正と、文章の加筆を行いました。