富士通が半導体工場をレタス工場に転用したという話題もありましたが、今回はSHARPです。
産経WESTは、SHARPが中東地域に苺を栽培する植物工場事業に乗り出すと報じました。暑い中東では農耕に向かないため食料は輸入品に頼らざるをえず、SHARPはそこに需要があると見ているようです。
SHARPは2009年より大阪府立大との共同研究を、2013年にはアラブ首長国連邦ドバイでの実証実験を開始。とちおとめを3ヶ月で収穫でき、日本で流通する高級イチゴと変わらない品質であったそうです。輸送に使用されるコンテナを植物工場に改造。コンテナの密閉空間内で光源となるのは、SHARP製発光ダイオード。苗の病気を防ぐのはSHARPの「プラズマクラスター」。これによって苺を無農薬で育てられるとしています。苺以外にもレタスなどの野菜にも応用できる可能性を秘めています。
これまで、SHARPは「プラズマクラスター」と称する技術を様々な製品に搭載しています。空気清浄機や掃除機、最近では「蚊取り空気清浄機」や「扇風機」にも搭載しています。
SHARPは「プラズマクラスター」が発生する「イオン」には、「脱臭」「除菌」や「アレルギー物質を分解除去する」などの様々な効能があると主張していますが、誤りです。消費者庁は、研究機関の検証の結果「アレルギー物質を分解除去する効果はない」として、「プラズマクラスター」搭載製品の広告に対し、景品表示法違反で措置命令を出しています。
では今回報じられている内容が間違っているかというとそうとも言えません。イオンではなく、イオンを発生させるために放出するオゾンには、脱臭や除菌の効果は実際にあるからです。本当に工場内に「プラズマクラスター」を置くつもりでしょう。
「プラズマクラスター」は、本来であれば正しく「オゾン発生器」と呼ぶべきです。しかし実態通りに呼んでしまうと、オゾンの有毒なイメージが先行してしまいます。このため、あくまで「プラズマクラスター」のオゾンで得られる効果を、全てイオン由来であると主張することで、疑似科学「マイナスイオン」のブームが作り出した「健康によい」というイメージを消費者に喚起させることができるので、あえてSHARPは不正確な説明を、意図的に行っているのでしょう。効果があるだけ水素水よりはマシですが。
SHARPは現在、買収され鴻海精密工業(Foxconn)傘下で経営再建を進めています。苺栽培事業は早ければ今年10月にも中東の飲食業者向けに開始するそうです。ロボット型携帯電話「ロボホン」など、鴻海傘下になって良くも悪くも面白い事業が開始されつつあり、SHARPから目が離せません。