Technicsの新作TWS、EAH-AZ100を購入したので、レビューします。購入から1ヶ月ほど使用しましたが、TWSの中では、非常に完成度が高く、素晴らしい機種だと感じています。
¥付属品・外観
付属品は、充電ケース、イヤホン本体、USB-Cケーブル、イヤーピース5種類、取扱説明書です。前作EAH-AZ80ではイヤーピースが7種類だったため、数が減ったようです。
充電ケースの上部は、Technicsロゴの刻印とヘアライン加工が施されており、高級感を演出しています。
一方、充電ケースの周囲は、全体的に滑らかな触り心地で、指紋が付きにくいよう工夫されています。
サイズもコンパクトであり、持ち運びにスペースを圧迫しません。また、ワイヤレス充電にも対応しています。
イヤホン本体には、金属とプラスチックが使用されています。Technicsのロゴが刻印された上部にマイクがあり、通話時の音声入力やノイズキャンセリング時の外音取り込みを行います。
音質
本機は、TWSとして初めて磁性流体ドライバーを搭載しています。この技術は、同社の高級イヤホンEAH-TZ700にも採用され、高い評価を得ています。同社によると、このドライバーにより「超低歪再生」を実現し、細部までこだわった生音を再現できるとのことです。
実際に聴いてみた印象としては、音質は全TWSの中でも非常に優れています。コーデックはLC3に設定していますが、4万円弱のTWSでここまで音を鳴らせるのか……と感心しました。音のバランスは、やや低音が強めです。
特に印象的なのは、前作EAH-AZ80から引き継がれた、きらびやかな高音です。ドラムのハイハットの音が非常にリアルに再現され、聴いていて心地良いです。
低音は、重厚な響きというよりは、引き締まった音の印象です。そのため、ベースラインやバスドラムの音をしっかりと聴きたい方に適しています。
また、アプリでイコライザを設定することで、好みの音質に調整できます。アプリによってはイコライザーで音質が劣化することもありますが、Technicsアプリのイコライザーは他の音域を損なうことなく特定の音域を強調できるため、高品質だと感じました。
総じて、本機はロック、ジャズ、オーケストラなど、生楽器の演奏を聴くのに適していると感じました。一方、支えるような重低音が重要なEDM等を聴く場合、やや物足りなさを感じるかもしれません。
一つ注意点として、LC3コーデックを使用するために、LE Audioという設定にする必要がありますが、この設定にすると、マルチポイントが使えなくなります。
ノイズキャンセリング
ノイズキャンセリング性能は、現時点でTWS最高峰のBose QuietComfort Ultra Earbudsを10点とするならば、本機は8~9点といったところでしょう。ノイズキャンセリングの傾向は、Sony WF-1000XM5に近い印象を受けます。
電車の走行音のような低音域の遮音性能は比較的高いと感じます。一方、人の声などの中音域は、遮音がやや弱いと感じました。Bose QuietComfort Ultra Earbudsは、低音域・中音域ともに遮音性能がさらに優れています。
また、Bose QuietComfort Ultra Earbudsは、まるで防音室にいるかのような圧迫感がありますが、本機は圧迫感なく自然に全体の音量を抑える感じです。Boseの圧迫感は、人によっては酔ってしまうほど強く感じる場合があるため、本機の方が好みという方もいるでしょう。
以前のTechnicsアプリでは、ノイズキャンセリングの強度を細かく設定できましたが、現在のバージョンでは、ノイズキャンセリング、オフ、アンビエント(外音取り込み)の3種類のみ選択可能です。
外音取り込みモードは自然で、イヤホンを装着していないかのような感覚です。安っぽさはないので、ながら聴きをしたい方にもおすすめだと感じました。
接続安定性
閑静な住宅街、乗車率150%程度の電車、阪急うめだ本店コンコースという、混雑度の異なる3つの場所で音楽を聴き、接続の安定性を検証しました。コーデックはLC3に設定しています。特に阪急うめだ本店コンコースは、人が密集しており、多くのTWSで接続が途切れやすいエリアとして選びました。

阪急うめだ本店コンコースの様子。人が多く、混線が起きやすそうなエリアであることがわかる。
閑静な住宅街や乗車率150%程度の電車では、時折接続が不安定になることはあるものの、ほとんど途切れることなく音楽を楽しめました。しかし、阪急うめだ本店コンコースでは、音楽が頻繁に途切れ、リスニングに耐えられない状態になりました。Bose QuietComfort Ultra Earbudsでもこのエリアでは途切れることがありますが、聴くに耐えない状態にはなりませんでした。
接続安定性を重視したLC3コーデックでも、混雑したエリアでは音楽を聴けない状態になるため、外出時にLDACなどの高音質コーデックを使用するのは、かなり厳しいと感じました。
装着性
本機のイヤホン重量は実際測定したところ、5.8gでした(公式では5.9g)。前作EAH-AZ80の約7.0gから約1.2g軽量化され、本体もコンパクトになっています。
そのおかげか、装着感は非常に安定しており、装着中に落下する心配はほとんどありません。ランニング中に使ってみましたが、落下しそうな気配はせず、安心して使用できました。
また、耳の痛みの原因になるイヤホン本体の出っ張りも極力抑えられており、それも快適な装着感に貢献していると感じました。実際、約5時間連続で装着してみましたが、耳が痛くなることはありませんでした。
ただし、装着感には個人差があるため、気になる方は試聴することをおすすめします。試聴時に少しでも違和感がある場合は、長時間装着すると痛みを感じる可能性があるため、装着感の判断材料になるでしょう。
総評
正直なところ、6~7万円出せば、さらに高音質なTWSは存在します。しかし、本機の魅力は、音質とノイズキャンセリング性能を高いレベルで両立させながら、4万円弱という価格を実現している点にあると感じます。
以前は、外出時は騒音が気になるため、音質よりもノイズキャンセリング性能を重視していましたが、本機はその考えを覆してくれました。
それほど素晴らしい性能であるだけに、接続の不安定さが残念です。今後のアップデートで改善されることを期待しています。
とはいえ、本機の高音質は、現時点で他のTWSでは代替できない唯一の個性であるため、音質が良く、ノイズキャンセリングも強いTWSが欲しいという方は自信を持っておすすめします。
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