幻の豊臣大坂城、渋谷で見れる。
400年前に消えた幻の城が、渋谷の真ん中で蘇っています。NHKとNHKプロモーションは、VR体験イベント「サムライの見た夢〜幻の豊臣大坂城〜」を2026年5月31日(日)まで、渋谷BEAM 4階のBEAMギャラリーで開催中です。多彩な番組・コンテンツが集う「超NHK ONEフェス」の一環として実現したものです。
VRゴーグルを装着すると目の前に現れるのは、豊臣秀吉が築き、大坂の陣で焼け落ちた豊臣大坂城。現在、私たちが大阪城公園で目にする石垣や堀などは徳川期以後のもので、天守閣は1931年復興の3代目ですが、今回の主役はその地下に埋もれた「もうひとつの城」のほうです。
黄金に輝く城郭、動き出す鎧兜、サムライが畏れた珍獣、そして秀吉が愛した大坂平野の絶景まで、来場者は歩いたり浮遊したりしながら巡れます。大坂冬の陣で備前島から砲撃が放たれる最前線まで体験できる、なかなか攻めた構成です。
コンテンツの主題は「夢と幻」。戦国武将の辞世の句にしばしば登場する「夢幻」という表現と重ね合わせ、本物と作り物の狭間にある体験を目指しました。「もし城が喋れたら?」という問いから始まるストーリーは、戦国時代最後の輝きとしての侍たちが何を思って生きていたのかを、大坂城の化身が語りかけるという構成です。
その「大坂城の化身」の声を担当するのが声優の早見沙織さん。「SPY×FAMILY」のヨル・フォージャーや「鬼滅の刃」の胡蝶しのぶで知られる実力派が、城そのものを演じます。
本イベントの出発点は、NHKが長年の大河ドラマ制作で蓄積してきたCG資産にあります。豊臣大坂城、戦国武将の甲冑、合戦の光景。それらは番組の放送が終われば、アーカイブの奥に眠るだけでした。「この映像資産を視聴者に還元できないか」。その発想が、NHK初のVR体験イベント「SAMURAI’s DREAM」を生みました。
国際共同制作として名を連ねるのは、NHK、NHKプロモーション、NTTドコモ・スタジオ&ライブ、そしてHTCグループのVIVERSEです。ただのVRアトラクションではなく「体験型映像エンターテインメント」と位置づけ。

使用されている3DCGアセットの9割以上が、NHKが過去の大河ドラマや特別番組のために制作してきたものです。大阪城を含め、どんなCG資産があるかを洗い出し、そこからどんなストーリーが作れるかを逆算した、アセット前提の制作ワークフロー。ゲームコンテンツなら城をゼロから作るところですが、NHKには歴史考証を重ねて「築城するように」作り上げてきたCGがあります。その圧倒的なアドバンテージを、VR空間に持ち込んだというわけです。
ただし、テレビ番組用のCGをそのままHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で表示することはできません。VRで快適に動作するようデータを軽量化していく作業が、技術チームにとって最大の格闘だったといいます。
体験形式は「フリーロームVR」。椅子に座ったまま映像を見るのではなく、参加者が実際に歩き回りながら豊臣時代の大坂城を巡ります。いわゆるロケーションベースエンターテインメント(LBE)です。使用するHMDはHTC VIVE Focus Vision。

実際に体験したところ、座っていれば良いのかと思いきや、空間内で、場面の切り替えごとに「歩く」ことが必要な体験となっています。
なぜ歩かせるのか。理由の一つは、VR酔いの軽減だといいます。椅子に座ったまま視界だけが勝手に動くと酔いやすくなります。自分の足で歩くことで、身体の動きと視覚情報が正確に一致し、酔いにくくなります。
LBEコンテンツは近年増えていますが、その多くは「びっくりさせる」方向に振ったものが目立ちます。この作品が一歩引いた落ち着いたトーンなのは意図的です。元が番組だったため、歴史の面白さや謎を掘り下げる「知的冒険」として設計。NHKが培ってきたストーリーテリングの手法をVRに持ち込んだのだそう。
体験後は「黄金の茶室」の再現展示も。

なお、今回HTC VIVE Focus Visionを選定した理由は、タイミングと関係性によるもの。
現存しない城のVR化については、安土城や江戸城のCGアセットも保有しているとの回答。今回は大河ドラマ「豊臣」の放送に合わせたタイミングでの企画であり、他の城のVR化の可能性自体はあるものの、現時点では具体的な計画はないそうです。
インバウンド需要も見据え、日本語に加えて英語と繁体中国語に対応。対象年齢は7歳以上。
体験所要時間はおよそ40分。内訳はVR体験が約25分、装着説明などの準備が約15分です。料金は一般平日2500円、土日祝3000円、中高生1000円、小学生500円で、いずれも税込み。日時指定制で事前購入が推奨。営業時間は10時から21時(最終入館20時30分)。会場は渋谷BEAM 4階「BEAMギャラリー」(東京都渋谷区宇田川町31-2、渋谷駅から徒歩約5分)です。
テレビ局が何十年もかけて積み上げてきたCG資産を、VRという新しい器に注ぎ込む。NHKにしか作れないVR体験が、ここにあります。会期は5月31日まで。滑り込みで予約しておきたいところです。

































