
AI時代に通信インフラの電力消費が膨らむなか、ライバル携帯キャリア二社が、NEDOの研究開発支援を受けて、データセンターと基地局網の消費電力を約40%削減することを目指す技術開発に手を取り合うようです。
KDDIと楽天モバイルは2026年5月15日、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」における開発テーマ「仮想化基地局と計算基盤の同時最適化技術の開発」に採択されたと発表しました。採択日は2026年5月13日。
両社は、データセンターとRAN(無線アクセスネットワーク)の消費電力削減に向けた研究開発を始めます。2030年度までに、通信インフラの性能向上と大幅な省電力化を両立する技術を確立し、研究開発開始時点で普及している製品を用いた場合と比べて、データセンターおよびRANの消費電力を約40%削減することを目指すといいます。
AIとポスト5G時代には、通信網そのものの電力消費が大きな課題になります。AI処理が増えればGPUやデータセンターの電力消費が増え、通信量が増えれば基地局やRAN側の電力消費も増えます。さらに仮想化Open RANやクラウドRANでは、基地局機能をソフトウェアとして汎用サーバー上で動かすため、通信インフラと計算基盤の省電力化は切り離せない問題になっています。
そこでKDDIと楽天モバイルは、KDDIが持つ通信運用やデータセンター運用の知見と、楽天モバイルが持つ仮想化Open RANの商用運用、自社ソフトウェア開発の経験を持ち寄ります。通信品質を落とさず、AIや仮想化RANの処理をうまく分散し、冷却や光ネットワークも含めて電力消費を減らす。今回の研究開発は、そうした「AI時代の通信インフラの省電力化」を狙うものです。
KDDIは、モバイル通信技術の研究開発、商用運用、大規模データセンター運用の知見を持っています。一方で楽天モバイルは、仮想化Open RANベースの大規模商用ネットワークを構築し、クラウドRAN向けソフトウェアやSMO(ネットワーク管理と自動制御の仕組み)を自社開発してきました。
研究開発の軸は、大きく言えば「通信基盤の強化」と「大幅な省電力化」の2つです。両社はこの2つを同時に満たすため、AI処理や仮想化RANの大きな計算負荷を効率よく分散し、電力消費を抑える通信インフラを開発します。
具体的には、GPUクラスタ間のネットワーク設備を光化し、電気処理を減らす仮想化ネットワーク最適化を進めます。トラフィック需要や計算負荷に応じて、通信・計算リソースを最適化する技術も確立する方針です。
RAN側では、AIを使ってリアルタイムのトラフィック変動に応じた電波送信の最適化に取り組みます。モバイルネットワークの品質を維持しつつ、消費電力を下げる狙いです。エッジAI(端末や近い拠点でAI処理する仕組み)や映像圧縮技術を使い、IoTデバイスの通信量と消費電力を減らす取り組みも含みます。
データセンターの冷却も対象です。両社は、空冷設備の効率向上と小型化、IT機器の負荷に応じた冷却制御の最適化を進めます。AI向けGPUの高消費電力化を見据え、TDP3000W級GPUにも対応できる水冷・液浸冷却技術も開発します。
セキュリティ面では、Open RANネットワークの防御強化や、計算基盤のセキュア演算環境の実現を掲げています。セキュリティ関連データ量を減らすことで、消費電力の低減にもつなげる考えです。
NEDO事業に採択されるということは、国の研究開発支援を受けながら技術開発を進めることを意味します。公的資金が入る以上、成果報告や標準化、社会実装を通じて、研究成果が一定程度共有される可能性があります。一方で、実際の商用ネットワークへの組み込み方、運用データ、ソフトウェア実装、特許などは、各社の競争領域として残る部分も大きいとみられます。
つまり今回の取り組みは、KDDIと楽天モバイルだけの閉じた省電力化競争というより、AI時代の通信インフラ全体をどう持続可能にするかという、より公的な側面を持った研究開発とも言えます。
AI技術の進歩の伸びは止まりません。ならば、通信網と計算基盤の兵站である電力をどう抑えるか。時には競合相手との協力も必要というわけです。KDDIと楽天モバイルは、各産業・各業界のビジネスパートナーとも連携し、今回の研究開発の社会実装を進めるとしています。





































