ニューヨークの地下鉄を運営するMTA(Metropolitan Transportation Authority)は、Googleと提携し、地下鉄車両にGoogle Pixelスマートフォンを取り付けるという実験を行っていることが明らかになりました。9to5Googleが伝えています。
ニューヨーク市地下鉄は、公式サイトによれば1日に300万人以上の乗客を運んでいます。この膨大な利用者数を抱える中、人力だけで欠陥を発見・追跡・修理するには限界があり、効率化の余地が残されていました。
WIREDが伝えたところによれば、GoogleとMTAは、線路の欠陥を聴き取りながら他の動きデータを記録するために、地下鉄車両に複数のデバイスを取り付ける共同プロジェクトを立ち上げたとのこと。特筆すべきは、線路の欠陥の検出に専門的な機器ではなく、Google Pixelを用いているという点です。
Google Public Sectorはニューヨーク市地下鉄と協力し、「TrackInspect」というプロジェクト名で既存の市販ハードウェアを使った実験を実施。このプロジェクトが成功すれば、一般的なスマートフォンで、線路システムの修理・保守作業を補完するのに十分なデータを提供できることが実証されます。
Pixelは地下で音声、動き、地理データを収集し、それをAIトレーニングモデルに供給して修理チーム向けにデータを効率的にパッケージ化します。通勤者が当たり前と思っている軋み音や衝突音などが、特定の注意が必要な線路に関する情報として翻訳されるわけです。
人間による検査はまだ必要ですが、目標は異常箇所の検出作業の大部分を自動化することにあります。今回、Pixelで録音されたニューヨーク地下鉄の記録を通じて検出された欠陥の候補のうち92%が、人間の検査員によって欠陥があることの裏付けが取れたとのこと。
TrackInspectプロジェクトは3億3500万件のセンサー読み取りと1200時間の音声を収集し、約200の個別AIモデルのトレーニングに使用されました。
なお、MTAはこの技術をさらに実装し、場合によっては汎用的なデバイスではなく、専用ハードウェアを使用する可能性があるとのこと。日本では乗客を乗せる電車の一部に専用の計測機器を載せ、営業運転を行いながら計測を行うものが増えてきており、それが普及したためにドクターイエローはその役目を終えるのですが、この方法であればより安価に安全性を高めることができそうですね。