
以前にレビューした通り、分割キーボード「Cornix」を使ってきました。
しかし使い始めてからしばらく経つにつれて、日に日に「これにトラックボールが付いていれば……」という思いが強くなってきました。タイピングのたびに手をマウスへ移動するのがやはり面倒なのです。もしトラックボール付きで、全てが1台のキーボード上で完結すれば、もっと効率よく作業や仕事ができるのにと感じていました。
そんなある日、X(旧Twitter)を何気なく眺めていると、思わず目が留まる投稿を見つけました。
【拡散してね】
現在開発中の分割キーボード「SeaGlass」のテスター募集のご案内です!
応募条件を画像にまとめたのでご確認いただき以下フォームから応募お願いします。https://t.co/l17JjWetCc応募期限は12/20(土)とさせていただきます。
そして年内には発送予定です!よろしくお願いします!! pic.twitter.com/bb2HqgNoIY— はま/ Seaside Works (@hama_key) December 5, 2025
投稿の内容は、人差し指で操作するトラックボールを搭載した、非常に個性的な無線分割キーボード「SeaGlass」のテスターを募集するというものです。しかも製品化を見据えて、実際に使った人からの意見を集めているとのことでした。これはもう、応募しない理由がありませんでした。ダメ元で申し込んだところ、運よくテスターに選ばれました。
本記事では、そんな「SeaGlass」の実機をしばらく使ってみて感じた魅力や気になった点を、前回紹介した「Cornix」との比較も交えつつ、詳しく紹介していきます。
SeaGlassの特徴

SeaGlassは、一言でまとめると「分割キーボードにトラックボールを合体させて、マウス操作まで1台でこなしたい」という発想から生まれたキーボードです。左右分割で完全無線式という構成に、人差し指で操作するトラックボールとクリックボタンを組み合わせることで、ホームポジションから手を大きく動かさずに、文字入力とポインタ操作を切り替えられることを狙っています。

キー配列の土台になっているのは、17mmの狭いキーピッチです。一般的なキーボードより一回り詰めたピッチにすることで、全体のサイズを小さく抑えつつ、正方形に近いバランスの筐体デザインを実現しています。このコンパクトさのおかげで、デスク上でも取り回しやすく、左右の本体を肩幅や姿勢に合わせて自由に配置しやすいと感じました。
右手側には、人差し指で転がせるトラックボールと、その周囲に配置されたクリックボタンが載っています。トラックボールでポインタを動かしつつ、クリックも可能です。左右を同時にクリックすることでホイールクリックができます。

左手側には、水平に2つ並んだロータリーエンコーダを配置しています。筆者の個体では、手前側をスクロール操作、奥側を音量調整に割り当てており、トラックボールと組み合わせることでマウスにかなり近い操作感になる構成です。
当初はスクロールさせたときに回転の引っかかりを感じることもありましたが、2週間ほど使い続けた現在ではかなり落ち着いてきており、違和感なく回せるようになりました。今回テスターとして触っている個体では、エンコーダの挙動がまれに不安定になる場面もありましたが、正式版ではこのあたりが改善される予定とのことです。

外観面では、正方形の筐体に自作キーキャップ「SeaCap」を組み合わせた独特の外観が目を引きます。量産キーボードとは明らかに違う雰囲気がありつつ、過度に奇抜になりすぎない、ちょうど良い個性の出し方を目指している印象です。今回のテスター向けロットでは、SeaCapもまだ調整中で、正式版では質感や仕上がりがさらに良くなる予定とのことです。

内部には小型のBLE対応マイコンボード「XIAO BLE」が使われており、コンパクトな筐体の中に無線機能をまとめています。一般的なワイヤレスキーボードと同じように、ケーブルなしでパソコンやタブレットと接続して使えることを前提にした設計です。
背面にも工夫があります。ゴム足の位置をあえて少しずらして配置してあり、左右の本体をずらしながら重ねると、ちょうど良い具合に積み重ねできるようになっています。

片付けるときや持ち運ぶときに、左右をきれいに重ねられるのは地味にうれしい点です。正式版では、ここに磁石を追加して左右をカチッとくっつけられるようにする構想もあり、開発者の投稿では磁力で重ねて固定している様子も紹介されています。
磁石で合体する機能が実装されました
#SeaGlass_kbd pic.twitter.com/qYXuZ2ec6P— はま/ Seaside Works (@hama_key) January 21, 2026
SeaGlassを実際に使ってみて感じたこと
これまでロジクールのM575を愛用してきたこともあり、トラックボールといえば親指で操作するタイプしか使ってきませんでした。そのため、人差し指で扱う小ぶりなトラックボールには正直かなり心理的な抵抗があり、使い始めた直後は思った方向へポインタを動かせず「これは厳しいかも」と感じたほどです。

ただ、これは完全に慣れの問題でした。毎日仕事で触っているうちに、5日目あたりから急に手がなじみ、狙った位置に自然とカーソルを合わせられるようになります。今では人差し指トラックボールならではの細かな操作も難なくこなせるようになり、「小さいボールだから操作しづらい」という印象はほとんどなくなりました。
親指トラックボールを載せた分割キーボードはいくつか見かけますが、人差し指操作に振り切った製品は多くありません。その中でSeaGlassは、自然な手の置き方のままトラックボールと独立したクリックボタンにアクセスでき、手が窮屈になったり誤操作したりする場面が非常に少ないと感じます。
本体がコンパクトなこともあり、「キーボードにトラックボールが付いている」というより「マウスに小さなキーボードが付いている」感覚に近く、写真の通りホームポジションがそのまま人差し指トラックボールへ吸い付くような手の収まり方がとても心地よいです。

左手側には、水平に2つ並んだロータリーエンコーダがあります。筆者の環境では、左側をスクロール操作、右側を音量調整に割り当てて使っていますが、トラックボールと組み合わせることで、マウスのホイールやメディア操作キーにかなり近い操作感を実現できています。触り始めた直後はエンコーダの回転に引っかかりを感じる場面があり、少しストレスになることもありました。しかし、2週間ほど使っているうちに当たりが付いてきたのか、今ではほとんど違和感なく、なめらかに回せる状態になっています。初めて触った人は「少し重いかも」と戸惑う可能性はありますが、使い込むうちに落ち着いてくると思いました。
欲を言えば、このエンコーダに押し込みのクリック動作があれば、ショートカットの割り当てなど、さらに設定の幅が広がりそうだとも感じています。ただ、現時点でもスクロールと音量調整の役割だけでかなり出番が多く、左手側の操作を支える重要な部品になっています。

LED関連も地味に便利な点です。電源オンやリセットのタイミングではLEDが二段階で点灯し、最初の点灯はバッテリー残量を教えてくれます。初期ファームウェアでは、40%以上で緑、20%までは黄、それ以下では赤という三段階になっており、おおよその残量が一目で分かります。
二回目の点灯はBluetoothの接続状況を表しており、青が接続成功、黄がペアリング中、赤が接続失敗という扱いです。
細かい部分では、ケース側に用意されたMCUランプ用の穴も印象に残りました。最初から光を通す部品が入っているのかもしれませんが、MCUからの光が内部でほどよく拡散されていて、外から見たときにとてもきれいです。単に光るだけでなく、視認性の面でもとても見やすく仕上がっていると感じました。

また、SeaGlassは最大5台までBluetooth機器を登録し、接続先を切り替えて使うことができます。切り替え操作はキーマップで設定でき、テスト用ファームウェアではレイヤー6のZ〜Bキーに割り当てられています。ノートパソコンやタブレットなど、複数の機器を切り替えながら使いたい人にとってはうれしい仕様です。
現状、操作関連やファームウェアの設定はほぼ初期状態のまま使っていますが、それでも不満はほとんどありません。クリックボタンが独立しているおかげで、Auto Mouse Layer(AML)を有効にしなくても、トラックボール操作とクリックを直感的に扱えています。余計なレイヤー切り替えを意識しなくて良いぶん、ストレスの少ない操作感になっていると感じました。
全体の品質もかなり高いです。以前レビューしたCornixの完成度にも驚かされましたが、SeaGlassも負けていません。ケースもキーキャップも、触れる部分の触り心地がとても良く、3Dプリンタで出力された部品にありがちな層の段差がほとんど気にならない仕上がりです。筆者自身は3Dプリンタを持っていませんが、この滑らかさまで持っていくのは相当大変なのではないかと想像しました。

SeaGlassは、単に「よくできた自作キーボード」というだけでなく、「Seaside Works」という名義で展開されているプロジェクト全体の世界観が、そのまま形になったような一台だと筆者は感じました。開発者のXの投稿を眺めていると、海辺を思わせる色使いや題材が一貫して登場しますが、そのイメージが筐体の輪郭や表面処理、配置の細部にまできれいにつながっています。「机の上に小さな海辺の情景を置く」という発想でまとめられた道具、という印象に近いです。
キーキャップも、市販のセットを流用したものではなく、「SeaCap」と名付けられた専用のデザインが採用されています。自作キーボード界隈ではキーキャップを自分で作る人も多いものの、表面の仕上げや触り心地で苦労している例をよく見かけます。その中でSeaCapは、指先で触れた瞬間に「これはかなり手間をかけて作られているな」と分かる仕上がりでした。ガラス片が波にもまれて角が取れたような、少しだけざらつきのある質感で、SeaGlassという名前や「Seaside Works」のテーマとぴったり重なっています。

ここまで書いてきたのは、筆者の中でも特に印象が強かった部分だけです。実際には、ケースの光の抜け方や端の処理、ロゴの入れ方など、細部まで見ていくと「こうしてくれているのがうれしい」と感じるところがまだまだたくさんあります。触るたびに小さな発見が増えていくタイプのキーボードで、これからも長く付き合っていきたい道具だと筆者は思います。
総評

SeaGlassは、人差し指トラックボールという少し敷居の高そうな仕組みを、世界観と品質で一気に身近な存在にしてくれるキーボードだと筆者は感じました。慣れるまでは戸惑うものの、一度手がなじんでしまうと「マウスに小さなキーボードがくっついている」ような独特の操作感がやみつきになります。分割キーボードとしての自由な配置と、トラックボールによるポインタ操作をまとめて試してみたい人にとって、とてもおもしろい選択肢になりそうです。
執筆時点では、発売時期や販売価格はまだ最終決定されていません。開発者によると、現在はBOOTH上に仮の商品ページが公開されており、キーケット2026での販売を目標に準備が進められているとのことです。
https://seasideworks.booth.pm/items/76206644
商品ページにもある通り、現状は仮ページという扱いのため、販売の種類や価格設定は今後変更になる可能性があります。興味がある人は、商品ページを確認しつつ続報を待つのが良さそうです。




















