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基礎知識をおさらい:なぜ「SIMロック」?「SIMフリー」で何が変わる?

 この記事では、よく聞く「SIMフリー」「SIMロック」「SIMロック解除」について解説します。

SIMカードとは?

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 まず大前提として、携帯電話・スマートフォン・タブレット端末は、「SIMカード(Subscriber Identity Module Card)というICカードを挿すことで、初めて通話/通信を行うことが可能となります。※1

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 SIMカードには、電話番号などの識別情報が記録されています。通信サービスを提供する会社(=移動体通信事業者、いわゆる『キャリア』)は、契約者情報とSIMカードをヒモ付けし、通信サービスを提供します。

※1 SIMカードのない『ROM機』という例外も一部にはあります。

 

SIMフリーとは?

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 「SIMフリー」とは、携帯電話・スマートフォン・タブレット端末の利用にあたって、好きな携帯キャリアのSIMカードを、自由に差し替えて使える状態のことを指します。

 利用している通信サービスに不満が出たり、他に魅力的な通信サービスが出てきたら、新しく通信サービスを契約して、そのサービスのSIMカードを端末に挿入すれば、端末を変えることなく、新しい通信サービスを利用できます。使い慣れた端末をそのまま使い続けることができるので、消費者としても乗り換えやすくなるので、便利です。

 端末と通信サービスが分離していることで、顧客が流動化し、競争が激しくなるので、安価な料金のサービスが登場しやすくなります。

 SIMフリーは海外では普通です。しかし日本ではそうはいきませんでした。通常、「SIMロック」というものが掛けられてきたからです。

 

SIMロックとは?

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 キャリアから販売された端末には、そのキャリアの契約のSIMカードしか受け付けないというプロテクト(鍵)が掛かっています。これをSIMロックと呼んでいます。

 SIMロックのせいで、他社のSIMカードを挿しても、利用できません。例えば、SoftBankで買ったiPhoneに、NTT docomoのSIMカードを挿しても、通話も通信もできません。

 これは前述したSIMフリーという状態を妨げるもので、競争の阻害要因になるとともに、消費者の利便性も害しています。(総務省の見解も同様

 

海外の例

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 香港、台湾などのアジア各国は、SIMフリーが基本です。フランスでは半年以上利用した携帯端末は、SIMロック解除(『鍵』を外して、SIMフリーの状態にすること)をできることが法律で定められています。

 韓国の携帯電話は日本とよく似ていて、いわゆる「ガラパゴス市場」でしたが、SIMロック解除サービスも6年以上前から提供されていますし、韓国メーカーのSamsungとLGは国際競争力があります。

 アメリカでは日本同様、キャリアの主導権は強いですが、SIMフリー機も多く利用されています。キャリアはSIMロック解除サービスを提供していますし、個人・中古業者がハックや改造によってSIMロックを解除する行為も、大統領・議会のお墨付きで合法です。

 

なぜSIMロックがあるのか?

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 日本では、携帯端末はキャリア(=通信を提供する携帯電話会社)のサービスを展開するための従属物(=オマケ)とみなされてきました。端末はキャリアのサービスと密接な関係にあり、端末の開発にもキャリアに大きな発言権がありました。(垂直統合)

 さらにキャリアは代理店を通じて全国にキャリアショップを展開し、端末の販売も支配してきました。海外では、キャリア以外の正規の販路でも端末を購入することができますが、日本では、端末を買うなら、キャリアを通じて購入しなければなりませんでした。

 キャリアは、既存顧客の支払う高額な通信料を原資に、販売奨励金(インセンティブ)を代理店に支払い、携帯端末を格安でばらまいてきました。

 キャリアが携帯端末をバラまくことで、多くの消費者が携帯電話を手に入れ、キャリアと契約することになります。この消費者たちに、高額な料金プランを契約させ、通話をさせ、インターネットをさせ、サービスやコンテンツを買わせることで、キャリアは毎月儲かります。いくら販売奨励金で端末代を安くしようが、結果的にキャリアにはお釣りが来るということです。

 逆に言えば、せっかくキャリアが身銭を切って端末代を安くしても、自社のネットワークとサービスのもとで端末を使ってもらえなければ、キャリアは損をします。だから、SIMロックが掛かっているのです。

 このようなキャリア主導の商慣習が構築されているので、SIMロックを掛けてキャリアが端末の開発・販売を牛耳り、儲けてきたのです。

 

異常な商慣習: 総務省が、SIMロック解除を義務化するまでの経緯

 この項目はやや長くなるので、次の見出しに飛んでもらっても大丈夫です。

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 2007年、総務省はこの販売奨励金制度を問題視しました。販売奨励金の原資は、間違いなく既存ユーザーの高額な通信料金です。さらにキャリア主導で端末開発をしているせいで、日本の端末製造メーカーの競争力が低下していたのもあって、総務省は2008年から対策を講じます。端末代と通信料金を分離するよう、販売方式の変更をキャリアに求めることになったのです。

 この頃、MNP制度※2が開始されていたこともあり、キャリアは販売方式を改めます。「割賦(分割払い)制度」「通信料からの2年間の割引」「『更新月』以外は解約に解除料金が掛かる」など、2年間顧客を縛る、現在の販売方式の原型が導入され始めたのはこの頃です。販売方式は、複雑怪奇になりました。この時、通信料金は下がり、端末代は上がりました。

※2 MNPは電話番号をそのまま他社に乗り換えられる制度。詳しくはこちらの記事を。

 ただし販売方式は変わっても、SIMロックは相変わらず維持されてきました。キャリアが端末を販売する構図は変わりませんでした。2010年、総務省がSIMロックを解除するよう、ガイドラインを策定しましたが、キャリアは殆ど従わずに無視してきました。

 さらにMNP制度の弊害として、他社から顧客を奪うため、機種を「一括0円+高額キャシュバック」で叩き売るような光景が恒常化。さらにNTT docomoがiPhoneの取り扱いを開始して間もない2014年の2月、3月頃には、「MNPでiPhoneを複数台契約したら、端末代は全部タダ、通信料も割引、数十万円の現金をキャッシュバック」という常軌を逸した売り方が各社で当たり前に。こうした割引施策の原資は、もちろん既存顧客の通信料金です。

 「既存顧客の料金を、新規顧客にバラまくのを止めろ」「端末代と通信費を分離しろ」と総務省が注意して、2008年に新たに導入されたはずの販売方式が、6年の紆余曲折を経て、元の木阿弥どころか、以前よりもひどい状況になる、皮肉な結果を生みました。

 そこで総務省は、SIMフリーはキャッシュバック競争を抑制するなどの理由を挙げて、ガイドライン改正案を発表。SIMロック解除の義務化が決定されます。より詳しく知りたい人はこちらの記事を。

 

SIMロック解除は2015年販売の端末から

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 総務省の改正ガイドラインは、2015年5月1日以降に発売するモデルは、SIMロック解除が可能でなければならないとしています。なので、それより以前に発売された端末は対象外。(docomoは、Android端末は自主的にSIMロック解除サービス提供中)

 KDDIはこれまでSIMロック解除に応じない理由として、3Gに他社とは異なるCDMA2000という規格を採用していることを挙げていましたが、今冬モデルから3Gを廃してLTEのみのモデルをリリースしており、SIMロック解除の障害とはならないでしょう。

 キャリアがSIMロック解除に応じない場合、総務省が業務改善命令を発動することになるので、実質強制です。ただし解除手数料がどうなるかなど、細かい部分は記事執筆時点では未定です。2015年、ついに日本にSIMフリーの時代が来るのです。

 

SIMロック解除のメリットは?

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 従来は解約してしまったら、端末はただのゴミになるか、Wi-Fiで細々と使うことしかできませんでしたが、これからは違います。自分でお金を払って買った端末は、キャリアを解約後も、自分の所有物として、好きな通信サービスで使い続けることができます。

 例えばSoftBankで購入したiPhone(おそらく6s以降)の、ネットワークや料金プランが気に入らなければ解約して、KDDIのSIMカードを端末に挿してKDDIのネットワークで利用したり、NTT docomoの回線を利用したMVNOの安価なサービスに乗り換えることもできます。MVNOはより盛り上がるでしょうね。

 また、海外渡航時、現地でSIMカードを契約し、電話代・通信料を安く済ませる、といったことができるようになります。消費者の利便性は向上し、選択肢も増えます。安く、そして自由になります。

 そもそも最初からSIMロックの掛かっていないSIMフリーモデルも、AppleのiPhone / iPadやGoogleのNexusを筆頭に増えてきており、消費者の選択肢はこれからどんどん充実していくことになりそうです。

 

デメリットは?

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 キャリアの料金は高額です。SIMロック解除が義務化されると、端末はキャリアの従属物という前提が崩れてしまうので、キャリアの料金プランや端末代が高くなる可能性があります。既に予期してか、大手キャリア3社は、基本料金とデータ通信量の単価を値上げした新料金プランを発表済み

 ただ注意したいのは、キャリアの料金の高さは「安心料」も込みということです。ネットワークもサービスも端末の補償も、全部キャリアがパッケージングして提供してくれるので、何も考えなくていいのです。

 端末をSIMロック解除して、他社で利用するという場合、キャリアは助けてくれません。自分で調べ、考え、行動する必要があります。キャリアの端末が高いなら、SIMフリーモデルをオンラインショップや家電量販店で、自分で選ぶ必要が出てきます。安さと自由を手に入れるかわりに、自己責任が求められるということですね。何も考えたくない人は、今までどおりキャリアショップで言われるがままに、高い金額で機種変更していた方がいいということです。 

 

安心を取るか、安さと自由を取るか

 総務省はSIMロックが競争と利便性を損ねていると断じており、MVNOを推して、通信料金の引き下げやSIMフリーを推進したい考えです。

 一方、キャリアもそれを先読みし、元々高かった料金をさらに高くする動きがあり、特にNTT docomoは新料金プランしか選べなくなりました。高くてもいいから安心を買うという人や、変化を恐れる人は、たくさんいると読んでいるのでしょう。

 2015年以降、皆さんはどうしますか?改めて考え直す時期がきていると言えそうです。

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