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超小型PC過剰摂取!3台のUMPCで沼に浸かるも干上がっていた話

左上から時計回りに、GPD Pocket3、AYANEO AIR、GPD WIN4。ついでに借りたBlackberry Key2

 弊誌編集長から変態端末を使ってみろという、半ば押し付けられるような形で渡された3台の超小型なPC、これを触って出た感想をまとめろとのお達しが。筆者は1台もUMPCに触れたことのない状態から、一気に性格がそれぞれ異なる3台の端末に触れ、沼に浸かってみました。

 もはやUMPC成分の過剰摂取ですが、結局はどれもnot for me、どのデバイスも自分にそこまで響くものではありませんでした。UMPCを触っているうちに感じた点、こうなれば自分にとっても魅力が出るよな、というポイントについて語りたいと思います。

3台簡易レビュー。どれも空振り。

 今回弊誌編集長から届いたのは、ディスプレイがスライドしてキーボードが使えるゲーム機の「GPD WIN4」、同じく携帯ゲーム機ながら400gを切る軽量さが魅力な「AYANEO AIR」、そして普通のノートパソコンを小さくしたような見た目の「GPD Pocket3」の3種類、そしておまけのBlackberry Key2でした。

 それぞれの特徴、そして感じた苦手意識などについて言語化してみます。

GPD WIN4:ゲームしないし動作不安定だった

 最も周囲からの反応が良かったのが、このGPD WIN4です。クラスメートからは「Vitaだ」「それVita?」のような反応が結構多くありましたが、筆者は携帯ゲーム機を禁じられていた家庭で育ったので、一瞬ピンと来ませんでした。かなしいね。

 このGPD WIN4の魅力は何と言ってもキーボードを内蔵している点。いくらゲーム機の形をしているからと言って、Windowsをまともに操作するにはカーソル操作とキーボードが必須です。

 GPD WIN4はディスプレイをスライドするとキーボードが現れ、またゲームパッドを使ってマウス操作が行えるのが特徴。ここまで小さなボディにキーボードを詰め込んだので普通のキーボードと同じようなタイピング方法は不可能に等しく、常用できるものではまるでありませんが、それでもソフトウェアキーボードよりかはずいぶんマシ。

 製品のハードウェア自体にはほとんど不安な点を感じませんでしたが、一点だけこれは?と感じた点がありました。それがディスプレイを最大までスライドさせた際のガタつき。最大まで引き出した際に明らかに斜めに見えてしまいます。

 これはあくまで編集長からのお下がりのようなものなので、これだけでビルドクオリティを評価することはできませんが、スリープからどうやっても復帰しなかったりゲームしようと立ち上げても画面が映らなかったりといったソフトにも起因するような不具合も生じたことがあり、ソフト面でもヒヤッとさせられました。

 キャンプに持っていったら起動しても画面が一切表示されない事態に陥り、ベソかいて編集長に詫びのDM送ったら翌日シレっと治っていたのは許せません。

AYANEO AIR:友人がノベルゲー専用機として利用

 そもそも論、私は最近あまりゲームをプレイしません。クリアしていないゲームもやってみたいゲームもあったはずなのですが、特に腰を据えてプレイしなければならないPCや専用機のゲームはてっきりやらなくなってしまいました。

 そのため、GPD WIN4やAYANEO AIRといった、いわゆるWindows搭載でゲームパッドを使って気軽にPCゲームができるというコンセプトの2機種はさほど響かなかったのです。ずっと棚の奥で腐らせておくのも良くないと思い、編集長に負い目を感じつつも友人に又貸ししてみたところ、割と有効活用してくれいていたようです。

 軽く触れた通り、AYANEO AIRの大きな魅力はその軽さ。398gと、Nintendo Switchの420gよりも軽量なので、持ち運びに全く苦労しません。多くのWindows搭載ゲーム機の重量は700g前後のものが多く、この軽さは圧倒的に強力なアドバンテージを持ちます。

 その性質を利用して、友人は文章主体で進んでいくノベルゲームをメインにプレイしていました。ノベルゲームであれば電力消費も少なく長くプレイできますし、意外とアリな使い道です。

 とはいえ、いたく贅沢な使いかたではあります。ゲーミングUMPCは大抵安くても10万円前後。AYANEO AIRの後継機種であるAYANEO AIR 1Sは13万8000円と、これだけの大金をノベルゲームをプレイするためだけに出せる人はどれだけいるのでしょうか。

 話を戻しますが、友人によれば管理ソフトのAYASpaceに関して、細かい点の作りこみが不足しているのか使いづらい点が多くあるとのこと。要するにソフトの完成度不足ということです。友人の感じた不満・微妙な点を一部抜粋して掲載します。

  • スリープ(休止状態?)からの復帰時、スティック操作が効かない。ボタンを押すとデバイス接続音とともに使えるようになる
  • 明るさを変更時、画面側の明るさが変わるのがワンテンポ遅れるので調整しづらい
  • XInput(ゲームコントローラーのPC用規格)に中途半端に対応しているゲームだと、ジョイスティックをマウスとして使うことが一切できなくなる。GPD WIN4のように、マウスモードとゲームパッドモードを切り替えられるようにしてほしい

 先ほどのGPD WIN 4と同じく、やはりソフト面のクオリティなどで不満が多い印象です。しかし裏を返せば、「ゲーム機サイズのPC」というイロモノに対する期待値などたかが知れているがゆえに、ソフト面以外では大きな不満を抱きようがない、という説はあるかもしれません。

GPD Pocket3 : 頻繁に使っているけど、「これを買うか?」と言われれば買わない

 この中で最も触っている時間が長かったのがGPD Pocket3ですが、現在も定期的に利用しているもののUMPCの旨みを全く生かし切れていないと感じています。

 GPD Pocket3は原義のUMPCに近いデバイスで、その外観はそのままノートパソコンを小さくしたようなもの。もちろんキーボードの配列は詰め詰めでタイピングには慣れが必要ですし、ディスプレイは小さく見づらい。

 筆者はJIS配列かつCtrlが左にあるキーボード以外を使うとストレスにより憤死する呪いを受けているため、英字配列のGPD Pocket3はそのままでは使えません。結局ただのデスクトップPC代わりになってしまいました。持ち運ぶことはほとんどなく研究室に置きっぱなしで、モニター・マウスに日本語キーボードを接続して使っています。

 小さくて持ち運びやすいのが魅力なのに、全く動かさない。端末の魅力を完全に封じている状態なわけですが、1点だけこいつが筆者のユースケースで光り輝くときがありました。

 それがプリンターとの接続。有線LANで接続されておらず、USBポートでPCとつなぐことによってしか利用できないプリンターで印刷する際に、GPD Pocket3はその真価を発揮します。デスクトップPCでは(移動ができないため)まず印刷できないシチュエーションであるのと同時に、ノートPCと比較してもその可搬性は魅力的。印刷を待っている間PCを持っていても全く苦ではありません。友人の印刷物を印刷するPCとして重宝しました。

 また、一般的なノートPCではなくこいつをデスクトップPC代わりに使う場合、そのサイズはしっかり恩恵と成り得ます。ノートPCを卓上に置いて外付けのキーボードで操作する場合、ノートPCが案外スペースを取りがちですが、GPD Pocket3ではこれもありません。8インチの小さな画面にはSpotifyでも表示させておけば便利です。

卒論締切ギリギリMidnightのときに撮影。ノートPCだったら机をここまで広々は使えないし机を汚せない

 結局、筆者の使いかたはGPD Pocket3の魅力を十分に引き出すには至っていませんが、なんだかんだ「こいつがあってよかった」と思えた場面も存在しました。とはいえキーボードは打ちづらく画面も見づらいうえに高価。おいそれと手を出せるものではありません。

携帯型ゲーミングPC、こうなれば活路はあるかも

 さてここまで「UMPCが自分に刺さらなかった理由」をお伝えしてきたわけですが、携帯型ゲーミングPCにおいては「こうなれば良くなる、自分も欲しくなる」という点があるので述べさせていただきます。

 ハンドヘルドゲーミングUMPC市場には、Valve、Lenovo、ASUSといった大手企業が相次いで参入しており、数年前には予想だにしなかった盛り上がりを見せています。しかしやはり、実際に使っているユーザーというのはなかなか見かけません。

 ライトゲーマーはスマホ。プレステ、ガチゲーマーはゲーミングPCがあれば事足りるのです。以前に比べてスマホの表現力が増し、従来であればゲーム機やPCでしか遊べなかったであろう重量級のゲームがクロスプラットフォームによってスマホでも遊べるようになったのも大きく、外出先でPCゲームをプレイするためにわざわざ高価なUMPCを購入する層は、まだ限られているように感じます。

 しかし、筆者の予想に反してASUSのROG Ally Xはそこそこ売れているようですし、携帯型ゲーミングPCとしては異例のIntel Core Ultraを搭載したMSI Clawも値下げによって販売数を伸ばしているようです。この状況を見ると、携帯型ゲーミングPCには一定のニーズがあるのかもしれません。

 もしこの市場の潜在需要がまだある場合、それを引き出すには比較的容易であると考えます。利便性を高めればよいのです。筆者は主に、「Windowsとの相性の悪さによる操作感、体験の悪さ」「重たさ・バッテリー持ちの悪さ」あたりに大きな不満を抱いていました。

 そのうち前者については、Steamを運営するValveが開発しているSteamOSが解決のカギになるかもしれません。SteamOSは画面の小さい携帯ゲーム機や、逆に画面の大きいテレビ向けに最適化されたArch LinuxベースのOSであり、Steam上のゲームを快適にプレイすることに重きを置いています。

 SteamOSは当初Steam Deckにしか搭載されておらず、サードパーティ製デバイスには搭載されていませんでしたが、Lenovoはラスベガスで行われた家電見本市のCES 2025において、SteamOS搭載モデルを用意した「Legion Go S」を発表しています。

 Windowsは本来携帯型ゲーミングPCというイロモノのことを考慮していないわけであり、現時点では各メーカーが個別にゲームプレイ用のダッシュボードや管理アプリを作っている状況ですが、最初からゲーム機への搭載を念頭に置いたSteamOSであれば、高い安定性や操作のしやすさ、各UMPCメーカーの負担軽減が期待できます。SteamOSなどゲーム用独自OSが普及すれば、携帯型ゲーミングPCは「ゲームパッドの形をしたPC」ではなく、3DOのように「いろんなメーカーが出してるゲーム機」みたいに市場全体がシフトする可能性もありそうですし、そのほうがいいと思っています。

 そしてもう一点。これは後でお伝えする携帯型ゲーミングPC以外のデバイスでも同様ですが、低消費電力化や低発熱化が技術の進歩によって大きく進めば、市場としての可能性が開かれると考えています。

 今のWindows搭載携帯型ゲーミングPCは、製品としてかなりのムチャを強いられているように思います。デスクトップやノートで動くゲームを専用の最適化なしに描画設定を落とすだけである程度快適に動かせるスペックを、手に持てる程度のサイズに詰め込まなければいけません。もちろん軽ければ軽いほど、そしてバッテリーが持てば持つほど良いです。

 ……明らかに無理がありますね。Nintendo SwitchやPS Vitaといった純粋な携帯ゲーム機が「携帯ゲーム機を作りたい」という目的が先にあり、そこから性能やゲームが要求するスペックが定まっていく流れであるとするならば、携帯型ゲーミングPCではゲームが先でハードが後。流れが逆なわけです。

 そういうわけで、例えばじわじわノートPCに侵略しつつあるSnapdragon Xシリーズでゲームが完璧に動作するようになれば……。と思うところではあります。

まとめ:やっぱり自分には合わなかった

 3台のUMPCを実際に使ってみて、やっぱり改めて「自分には必要ないな」という思いを強くしました。ここ数年では大手PCメーカーが参入するなど、特にハンドヘルド型ゲーイングPCが盛り上がりを見せていますが、結局のところ、UMPC全体がまだまだマイナーでニッチな存在だと感じざるを得ません。

 特にUMPCを使う中で筆者が最もストレスを感じたのは、小型なデバイスに仕上げるためにメーカーが努力して詰め込んだ操作体系。英字キーボードはおろか、Fnが左・Ctrlが右にあるキーボード、およびBIOSによってそれらを入れ替えているノートPCですら筆者は強烈な拒絶反応を起こすのに、独自配列や狭いキーピッチのキーボードを備えるUMPCに適応できるわけはなかったのです。これはもはやUMPC側からお断わりされても致し方がない、それほどまでに筆者がUMPCと相性が悪かったという話です。

 また、ゲームパッドでの操作もWindows環境では最適化されているとは言い難く、思ったようにカーソルが動いてくれない場面も多々ありました。

 そしてクラムシェルタイプが刺さらなかったもう一つの大きな理由として、田舎に住まう筆者のライフスタイルが挙げられます。移動はもっぱら自動車、カフェでノートPC広げてカタカタ優雅に作業するぐらいなら自室のPCのほうが圧倒的に効率も良くて集中も削がれません。UMPCの利点であるはずの可搬性が、ことごとく活きていないのです。

 これを弊誌編集長に話したところ「田舎暮らしだからでは?せせこましい東京だと、たとえば電車でもノートPC広げるには若干かさばる」と至極当たり前の回答が。特に喫茶店は都民にとって人気らしいです。

 筆者はこれが本当かどうか確かめるすべをまだ持ち得ていませんが、東京に住む編集長の最近の装備は身軽なUMPCとは真逆、MacBook Proに自作キーボードという重装備なので、少なくとも「小さいPCじゃないとやっていけない!」は成り立たないようです。

 そんなこんなで、結局自分はUMPCの沼に浸かることはありませんでしたが、借りている日々の間に「これ人によってはめっちゃ刺さるだろうな」と感じたポイントが山ほどあるのも事実でした。いまだ発展途上であり改善の余地はありますが、誰とも違うデバイスという意味で一度体験しておくのも悪くないかもしれません。あ、ただし1台目のPCでUMPCを選ぼうとは思わないでくださいね、これはマジで。 

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