
メモリ、2030年まで足りません。
Nikkei Asiaが伝えたところによると、サムスン・SKハイニックス・Micronの大手3社が増産を進めても、2027年までの需要に対して供給計画は約60%にとどまる見込みです。
背景にあるのは、AIデータセンター向けのHBM(広帯域メモリ)への生産シフトです。HBMは通常のDRAMと比べて1GBあたり約3倍のウェハー容量を消費するため、メーカーがAI向けに工場のラインを振り向けるほど、スマホやPC向けの一般DRAMが割を食う構造になっています。SKハイニックスは世界のHBM市場で57%のシェアを握っており、DRAM全体でも32%とされています。稼げるHBMに注力するのは経営判断としては当然ですが、そのしわ寄せがじわじわ来ているわけです。
実際、SKハイニックスは2026年分のHBM供給について主要顧客との協議を終え、DRAMとNANDについても翌年分の需要をすでに確保したと説明。同社のHBM・DRAM・NANDの生産枠が「実質完売」状態だとも伝えられています。Micronに至っては消費者向けメモリ事業から撤退し、30年近く続いた自社ブランド「Crucial」の消費者向け製品出荷を2026年2月末までに終了しました。サムスンも現在のDRAM受注の約70%しかさばけていない状況だと伝えられています。
なお、HBMというのは、AIアクセラレータの近くに積層メモリとして実装し、超高速にデータをやり取りするための特殊なメモリです。NVIDIAのB200のようなBlackwell世代GPUでは1基あたり192GBのHBM3eを搭載するものもあり、従来のDRAMとは桁違いにウェハーを食います。メーカーからすれば利益率も高いので優先したくなりますが、その分だけ普通のDRAMの生産余力が削られてしまうということです。
では新しい工場を建てればいいではないか、という話ですが、これがまた時間がかかります。SKハイニックスは韓国・清州に130億ドル規模のHBMパッケージング・テスト施設を整備する計画で、完成目標は2027年末です。サムスンの平澤P5ファブは2028年稼働とされています。Micronが広島に建設を予定している96億ドル規模のHBM関連施設も、2028年ごろに初出荷の見通しです。つまり、新規能力が本格的に寄与するのは早くて2027年後半から2028年以降です。それまでの間、供給が需要に追いつく見込みは限られています。
さらに、SKグループの崔泰源会長はNVIDIAのGTCカンファレンスで踏み込んだ見方を示しています。現在の不足は2030年まで続く可能性があるとし、業界全体でウェハー供給が需要を20%以上下回っていると指摘しました。十分な追加能力を確保するには4〜5年かかるとの認識です。
消費者への影響はすでに出始めています。Gartnerは2026年末までにDRAMとSSDの価格が合わせて130%上昇すると予測しています。PC価格は前年比で約17%、スマホ価格は約13%上がる計算です。一方、32GB DDR5モジュールは149ドルから239ドルへと60%跳ね上がり、低価格スマホではメモリ関連コストが製造原価の20%から40%程度まで膨らむ可能性があるとも伝えられています。
ちなみにゲーム機も他人事ではなく、ソニーが次世代PlayStationの発売を2028〜2029年へ遅らせる可能性を検討していると伝えていますからね……。
TrendForceの試算では、2026年のメモリ供給は23%増える一方、需要は35%増える見通しです。差が開く一方です。しかもメーカー側も「供給過剰のリスクを最小化する」方針を明言しており、意図的に蛇口を絞っている面もあります。儲かるAI向けを優先しつつ、値崩れを防ぐ。メーカーにとっては合理的でも、エンドユーザーからすると「勘弁してくれ」としか言いようがない構図です。
メモリ不足の解消は早くて2028年、長引けば2030年までずれ込む可能性があります。スマホもPCもゲーム機も、ここから数年は「メモリが高い時代」を覚悟しておいたほうがよさそうです。今のうちに必要なメモリは確保しておくか、それとも嵐が過ぎるのを待つか。悩ましい数年になりそうです。


















